※※本シナリオはMC参加ポイント「200ポイント」のプライベートスペシャルシナリオです。※※
漆黒の精霊メラノが言いました。
「影となって寄り添い、すべての災厄を影の中より守ろう」
純白の精霊レウカが言いました。
「昏い月に光を与え、進みたる道を照らし、見守りましょう」
光の時間にレウカが宿り、闇の時間をメラノが支配しいました。
そうして隔たりたる区切りに朝と夕を造り、ふたりは別れたのでした。
こうしてメラノの約束を受けてレウカが宿る時間
光明は闇の色をした影を恐れて災厄という災厄は世界から逃げ出し、楽園となりました。
レウカの願いによって、メラノが支配する時間
暗影では月の出ている間は害成す
化者(ばけもの)達がその浄化の光を恐れ、身を潜めたが為、つかの間の安息をもたらしました。
こうしてふたりの精霊の恩恵を受けて住人は世界の時間を回し歴史を綴っています。
しかし。
そんな釣合いに保たれていた小さな世界は、ワールドホライゾンに偶然にも発見されたことによって、その秩序を失ったのでした。
…※…※…※…
「振り返らずに走るのです!」
ドネは友人の
スキアーと
ディッルと
ツェルの四人で花咲く丘を逃げるように駆け下りていきます。
いえ、逃げるようにではなく、逃げる為に走っていました。
乙女達に迫りくるのは人の形をした黒い存在です。
それは滑るように大地を移動し距離を詰めて、ツェルの背後にベタつきました。
「きゃー」と劈く悲鳴にドネは我慢できずに振り返ります。
「助けて下さいませ。慈悲の方純白のレウカ様、どうかお助けああーッ!」
「ツェル!!」
ツェルの祈り虚しく、黒い人形(ひとかた)に喰われた友人にドネは絶句しました。
どす黒くも恐ろしい害成す存在――化者。それは伝承のみの存在のはずでした。戦う手段の無いドネは、絶望感にただただ打ちひしがれてしまいます。
楽園とも謳われた光明は今や溢れ出てくる化者達によって蹂躙され平穏は面影だけを残し、阿鼻叫喚の絵図と化していました。
「とにかく今は逃げましょう」
抗う手段も身を守る術も無いドネは友人達を励まし、どこよりも安全な場所を求めて、ただ逃げ惑うばかりだったのです。
…※…
「ダーレ!!」
注意しろと怒鳴られて
ダーレは振り向き様に辛うじてその一撃を剣で防ぐことができました。
緩やかな曲線を描く丘に争いの音が響きます。
目の前には多くの化者が居ました。囲まれていると言っても過言ではないでしょう。
月の光が陰り、暗影は今や化者達の楽園へと成り果ててしまっています。こうなると一体二体と倒しても焼け石に水でしかありませんでした。
短気に舌打ちした
ゲレルは、先陣を切った
ルスが三体目を倒した時、それを目撃し驚愕に目を見開きます。
「″ドッペルゲンガー″だ!」
オールも同じ者を見て悲鳴を上げました。
「逃げろ! 見るな!!」
忠告も虚しく、自分のドッペルゲンガーと相対したルスの足は既に石化が始まり、ピシピシとひび割れの音を立て首元まで侵食されています。
「頼む、逃げてく、れ――」
瞬きも許されず石化した友人に反応したのは化者達でした。
我先にと奪い合われ食い散らかされ、呑まれてしまい、跡形も無く害成す者に吸収されてしまいました。
するとどうでしょう。黒い人形(ひとかた)は二倍に膨れ上がり、そのシルエットもおぞましい獣のそれへと変貌したではないですか。
「
化獣(ばけもの)……」という、ゲレルの呟きに、同音異語のそれは伝承上の存在だろとオールが「あんなの! 力ある方漆黒のメラノの力をもってしても無理だよぉ!」と喚きます。
化者よりも上の存在へと変態した捕食者に、状況が変わったことを認めて、ダーレは「とにかく今は逃げましょう」と友人達を励まし、生きて帰る為に剣を構えたのでした。