シナリオガイド
村に忍び寄る“獣”の咆哮
シナリオ名:【薔薇の庭】目覚めの夜(前編) / 担当マスター:有沢 楓花
セフィロトの小世界、<薔薇の庭(ローズ・ガーデン)>。
“魔女”キーラと共に、枯れ花の便りに導かれた特異者たちは、青い薔薇を作出した<青薔薇>オンディーヌ女伯爵と会いました。
そして、この国の大貴族、広大な領地を持つ薔薇の貴族と呼ばれる面々と言葉を交わします。
貴族たちが屋敷を去ってから、オンディーヌの屋敷にふたつの報せが届き、届こうとしていました。
ひとつは夕方に届いた教会からの報せ――悪魔崇拝者が教会の者をたぶらかそうとしたこと。
そしてもうひとつは夜遅くに……。
*
村唯一の宿屋兼酒場に、ベンという血まみれの男がやってきました。
宿の主人であり酒場のバーテンダーも兼ねる主人が手当てしたものの、傷は深く間に合いそうもありません。馬車を出して領主の館へ運ぼう、と彼が居合わせた客と決めた時、ベンはかすれた声でこう言いました。
「出るな……獣……が……すぐ、そこまで……」
主人たちの耳に、遠く獣の唸り声が聞こえた気がしました。
「薪割りの斧を取ってくる」
主人は裏口から薪割り小屋にいって取って返すと、一本の斧を持って来て、客に渡しました。そしてもう一降り、剣を腰に下げています。
「武器は二本か。一本はお前たちに渡す、ベンを運んでやれ。俺は……この剣でお前らを守る。腕は鈍っても元傭兵だ、一匹や二匹なら……」
そして松明に火を灯しました。
「この火も役に立つかもしれん。……他に誰か手伝う奴はいないか?」
*
オンディーヌの屋敷でもまた異変が起きていました。
夜、一人書斎で本を読んでいたオンディーヌの元に、家政婦(ハウスキーパー)がやって来たのです。
「落ち着いて聞いて頂きたいのです。ハウスメイドの一人が夜自室におりませんでしたので、周りを問い詰めましたら、使用人同士で逢引きなどしておりました。そのような不始末をしでかして申し訳――」
「落ち着いて、順番に話してください。そこに座って」
家政婦の顔が青くなっているのを見て取って、オンディーヌは本を閉じると椅子を勧めました。
「いえ、いえ、大丈夫です。……二人が発見されたのは、地下のワイナリーの奥で、そこには扉があったのです。私はそんな部屋があることなど存じませんでした」
オンディーヌは顔色を変えると、執事を呼び、家政婦を伴って地下のワイナリーの扉を開けました。
「申し訳ありません。本日はお客様が大勢いらしていましたので、その時他の者にワインを取りに行かせ……」
執事はワイナリーの鍵が開いていたことを詫びましたが、オンディーヌは無言で扉を開けました。ワイナリーの奥に倒れている男女の様子を診ます。
メイドは何かを丸いものを手に握り、男性使用人の右手指には自身のものらしき血が付着していました。
「何か邪悪なものの影響を受けたようです」
そしてその奥、棚に隠されていた扉を開けました。
扉の奥には狭い通路が続き、奥に小部屋がありました。小部屋には小さな石造りの、奇妙な祭壇のようなものがあります。
「古い教会にも似ていますね。この部屋のことは……?」
執事は躊躇いがちに口を開きました。
「オンディーヌ様はこのお屋敷を建てられる時、全て女王陛下にお任せしたと伺っております」
「ええ、貴族の館に馴染みがありませんでしたので、小さなもので簡素に、とご要望は少しお伝えしましたが……」
「……オンディーヌ様を補佐するようにと陛下から承り執事を務めて参りましたが……その際、宰相ジュリアス様にこの場所のことは内密に、と伺いました。しかし私もこの部屋については、それ以上のことは存じておりません」
家政婦が目を丸くします。
「何故です? このお屋敷に主人が知らぬ場所があっていいはずなど……」
「違うのです。この場所が先にあり、その後にお屋敷が建てられ――オンディーヌ様、危険です!」
「私とて青薔薇の加護を頂いた身ですから」
オンディーヌは一人部屋に足を踏み入れました。
部屋には薔薇が敷き詰められていましたが、長い年月で枯れてしまっています。
換気が悪いせいか淀んだ空気の中を歩むと、部屋の中央に小さな棺桶と十字架の彫り物があり、その四隅に何かが嵌っていたような丸いくぼみがありました。
そして棺桶は僅かに開き、中に敷き詰められた枯れた黒薔薇の上に、割れたガラス瓶が転がっていました。
担当マスターより
こんにちは、有沢です。
セフィロトの小世界、薔薇が咲き乱れることから<薔薇の庭(ローズ・ガーデン)>と呼ばれる世界のお話、第二話です。
特殊な世界観・ルール、シナリオ傾向がありますので、お手数ですが前回のリアクションや、マスターページご覧の上、ご参加を判断していただければと思います。
今回のシナリオは前・後編の2回になり、体内の薔薇の枚数も後編終了でリセットされます。
●今回のシナリオ
・村に獣が忍び寄っているようです。
今まで森に行った村人が、襲われて死人も出ていましたが、一人で村に入らない・自警団を作ろう……というところで止まっていました。
村長が領主に兵を借りる相談に行く矢先の出来事が今回です。
領主のオンディーヌはこのことを知らないため、彼女と兵士たちがその後のアクションができるか、いつになるかは今回の「宿からの報せ」次第です。
最低限参加するのは宿の主人と常連客の村人二人です。
何も対策を取らない場合は、翌朝宿の主人が大怪我をしたの状態で村のどこかで発見され、運んでいた村人とベンは死亡します。
時間がかかりすぎた場合も、ベンは体力がもたず死んでしまいます。
主人たちが領主の館に運ぼうとするのは、村医者の手には負えず、オンディーヌが回復魔法にあたる技能を使用できるためです。なお、別の場所に運んだりしたい場合などは、宿の主人を説得する必要があるでしょう。
また、どのような“獣”なのかは判明していません。
※前回は世界紹介シナリオでしたので、前回領主の館を訪れた方たち(LC・フェロー含め)の場合も、何らかの理由で宿に戻って来たこととします。
これは逆に村にいた方が館にいる場合、後から合流した……とします。
・オンディーヌの屋敷
敷地の殆どは広い庭、そして温室です。
屋敷は調度品の質こそ良いものの主人の好みを反映してか実用重視で、最低限貴族の屋敷にあるような部屋の他は、書庫、書斎、植物関係の実験室などが並びます。
オンディーヌの専門は植物関係ですが、ごく専門的でないかぎり一通りの蔵書は揃っています。
屋敷にも獣は迫っており、対策が取れるかは村からの報せが届き次第、となります。
倒れていた男女は気を失っていますが、手当てをされて程なく気が付きます。使用人は、特に屋敷の中では恋愛禁止のためこっそり会っていました。
周囲に聞けば近々駆け落ちをしようとしていたらしいことが判明します。
なお、執事が二人が入り込んだ時間にワイナリーの鍵を閉められなかったのは、本当に彼のミスです(というより常連の使用人側が上手くやっていました)。
・村での行動
前回村で宿泊された方など、村での行動をすることもできます。
但し宿泊施設は一か所(上記の宿屋兼酒場)のみなので、その他の場合は概ね野宿になってしまいます。
教会は前回で一度閉っていますが、修道士は領主の館に行き、事件発生前には戻ってきています。現在は夜間のため基本的には扉を開けません。
その他村の施設は夜間のため閉っています。
・立地について
村で薬草が採れる・獣が出ると言われる森は村や領主の館の西にあります。
また、村全体を囲うような柵、防衛に特別有利に使えるような立地はありません(なだらかな丘陵があるくらいです)。
開けていますので見通しが割と良いのですが、夜間だということには注意してください。
村には武器はあまりなく、薪割り斧やきこりが斧、狩人が弓矢をもっているくらい、それに農具です。自警団準備中のため村長の家に若干集まっています。
それでは、アクションをお待ちしています。
・ベンを屋敷に届ける 【現在のMC参加人数:13】
宿の主人と協力して、ベンを屋敷に届ける。
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・屋敷で調べものをする 【現在のMC参加人数:13】
領主の館で、気になっていることについて蔵書で調べる。
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・その他の行動 【現在のMC参加人数:4】
その他、自由行動をされる場合はこちらをお選びください。
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