シナリオガイド
「あなたの為にお祈りしてたんだから」
シナリオ名:籠の中の鳥:後編 / 担当マスター:三田村 薫
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常陸の御魂闘士、渚は、殺王闘士・プロクと戦った後、すっかり気落ちした様子でした。
故郷の村が乗っ取られたと聞き、甲斐千雪らと共に救出に向かったのですが、なんと、妹のように可愛がっていたおみよと言う女児がプロクに協力していたのでした。
おみよも最初は抵抗していましたが、故郷を出て御魂闘士として戦っている渚がなかなか帰ってこない寂しさをプロクに利用されていたのです。
駆けつけた千雪たちが見たものは、感情を失った村人も戦闘に投入する卑劣なやり口なのでした。
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村から脱出し、ひとまず自分たちの拠点に落ち着くと、渚には改めてショックの波が押し寄せてきているようです。
渚は、故郷の村を、愛してはいました。でも、若い彼女にとっては少し息苦しいと感じる場所でもあり、御魂闘士になってから、全然帰っていないようでした。
少しの後ろめたさ。積極的に帰りたいわけでもなかったけれど、おみよや家族たちを嫌いになったわけでもない。
「どうしたらよかったんだろう」
「悪いのは帰らなかった渚さんではなくて、あの村を乗っ取ったプロクなので気にしなくて良いですよ」
そう言ったのは、綾取はしごでした。
「そうだけど……」
「自分を大事にできるのは自分だけで、それは時として他人の利益と相反するというのはよくある話です。それでも、あなたは村の危機を聞きつけて戻った。それで十分じゃないですか。郷土愛だと自分は思います。こういうことには、すぐ出る結果と、そうでない結果がある。ひとまずは、すぐに出せる結果、村の奪還に注力しましょう」
「そう……だね」
渚は頷きました。多少気は晴れたようですが、すぐに自責の念はなくならないでしょう。
それでも、プロクから村を奪還することへのモチベーションは高まったようでした。
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一方、プロクたち殺王闘士のチーム。
この村を乗っ取り、感情を奪うために、プロクは「月蝕の珠」と言う、感情を奪う特殊なアイテムを、村長宅の厩に隠していました。
「次は私たちを撃破するつもりでいるでしょう。でも月蝕の珠があれば、そう簡単にこの村は取り戻せないわ。警戒を見せることで逆に気付かれるかもしれないけど……素通りされて何かの拍子に見つかるよりはマシよね」
どちらが戦略としてよいのかどうかは判断に悩むところです。時と場合にもよるでしょう。プロクは後者を選びました。
彼女は、おみよの元へ向かいます。
「どう? おみよちゃん。魔天神様にお祈りは済んだかしら?」
魔天神像の前で一生懸命祈りを捧げるおみよ。「渚おねえちゃんも帰ってきて、また皆で楽しく暮らせますように」。
プロクは言葉巧みにおみよから常陸の信仰を取り上げ、魔天神像を拝ませています。感情を奪われて無理に信仰させられた他の人々と違い、おみよに自分から信仰するように仕向けているのです。
「おねえちゃんが来たら、一生懸命お祈りしたって、伝えてあげましょうね。あなたのためなのよって……」
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御魂闘士たちは、再び渚の村を訪れました。
「また懲りずに来たな、御魂闘士ども!」
「また村人投入してる! 綾取、渚ちゃん! ここは私たちに任せてプロクの所へ!」
「ふ……その小娘をプロクの所へやるか。そうかそうか。面白い話が聞けそうだ」
殺王闘士は不敵に笑います。
どうやら、敵はまた何か企んでいるらしく、渚とプロク……そしておみよを対面させたいようです。
しかし、それはこちらにとってもチャンス。もしかしたら、村内に人々の感情を奪うような装置があるかもしれない、と言う予想が立っており、その探索チームもここから離脱できるからです。
探索チームは、少し進むと、渚たちから離れて探索に向かいました。渚たちは、プロクの元に辿り着きます。
「おねえちゃん!」
「おみよちゃん!」
その背後にはプロクが立っています。
「おみよちゃん、あなたが帰ってくるように、毎日お祈りしてたのよ。ねえ、おみよちゃん」
「うん! 魔天神様にお祈りしてた! おねえちゃん本当に帰ってきた!」
「え……」
渚は絶句しました。
「なんてことを……」
綾取にとっても想定外で、呻きます。
「騙して信仰をねじ曲げるなど……!」
「騙してなんかないわ。私は魔天神様を信仰する身。おみよちゃんはそれに賛同してくれただけ」
「詭弁ですね。家族ですら感情を奪われて、頼ることのできないおみよちゃんが話せるのはあなたたちしかいない。選択肢を奪っておきながら何が自発ですか」
綾取は糾弾しますが、これくらいでプロクが非を認めるとも思っていません。これくらいで翻意するくらいなら、殺王闘士なんてやっていないのですから。
戦って、倒し、村に平和を取り戻す。
御魂闘士たちは纏神し、相対したのでした。
担当マスターより
●解説
こんにちは三田村です。先にシナリオの解説を記載します。ご挨拶はその後で。
■招待と参加について
本シナリオは「籠の中の鳥:前編」の続編であり、前作の参加者さんには招待を出しております。
参加費は参加者さんのご負担となります。
人数に余裕がある仕様ですので、初めての方も歓迎します。
■シナリオの目的
本シナリオの目的は、
・おみよを含めた村人の救出
・プロクの撃破
・月蝕の珠の破壊
です。
ざっくり言うと「プロクを倒して村人の感情を取り戻す」と言うシンプルな目的になります。
■アクションパートについて
【1】妨害対応
【2】プロク対応
【3】「月蝕の珠」の破壊
■アクションパート詳細
【1】妨害対応
御魂闘士たちを分断するためにけしかけられた殺王闘士たちとの戦闘です。
向こうにとっても分断ですが、こちらとしても、プロク対応に余力を割かせるわけにも行かず、また月蝕の珠探索妨害に人数を増やされないためにも、ここで自分たちが相手にとって強敵になる必要があります。
殺王闘士たちは感情を失った村人たちを戦闘に参加させており、更に自分たちの能力で御魂闘士たちの攻撃を彼らに反射させようとしています。
よって求められるのは位置関係の把握や、村人を敵から離すなどの行動、あるいはいっそ防戦を徹底するなどの工夫です。
NPCは甲斐千雪が同行します。
【2】プロク対応
殺王闘士のリーダー・プロクとの戦闘です。
シナリオ的にはボス戦という形になります。
プロクの目的は渚であり、おみよを投入して渚を揺さぶろうとしています。
またおみよはルール上殺王闘士になるため、生きた盾として利用されています。
NPCは綾取はしご、渚が同好します。
綾取「マジックアイテムめちゃくちゃ見たいんですが、今回は渚さんを優先します(ハンカチを噛む)」
【3】「月蝕の珠」の破壊
村人の感情を奪っている「月蝕の珠」と言う水晶玉みたいなアイテムを破壊します。
本アイテムは本シナリオのみの限定的なものになります。
こちらのチームはどさくさに紛れて村内を探索するのが仕事です。
ガイド本文にもあるように、プロクの配下が探索チームを襲撃するため、「めちゃくちゃ隠密する」「囮と探索で別れる」「場所を特定したら建物ごと吹き飛ばす」などの工夫が必要です。
村内の地図は渚の情報提供により作成し、パート参加者に渡されているものとします。村人は全員戦線投入されているので、多少家屋を吹き飛ばしても問題ありません。
■敵情報
【1】【2】配下の殺王闘士
魔法使い系が多い。妨害スキルを駆使して攻撃自体は普通に魔法撃ってくるだけ、みたいな戦い方をしてきます。
特別なスキルとして、
ブロンズシールド:敵からのスキル攻撃を反射し別の対象にぶつけます。【1】の敵はこれを操られた村人に当てることともありますが、威力は軽減されているので当たっても一発で死ぬことはありません。レンジがそのまま対応するので射程の短い攻撃がベターです。
幻惑:命中を下げます。
ヒーリング:自分や他者のHPを回復します。
【2】プロク
渚が絶望する様に興味があり、みよを利用するために自由にさせていました。
また、渚を無力化して回収できれば、おみよ共々感情を奪って使役するつもりでいます。
前回を経て、強敵であるとみなした御魂闘士たちのメンタル面を揺さぶろうとし、おみよが魔天神を自ら信仰するように仕向けました。
結構……と言うかかなり嫌な奴と言うか、「こいつは軽んじても良い」と思った相手の尊厳が見えなくなるタイプの悪党です。
特別なスキルとして、
蝶の舞い:複数対象を取れる光属性の魔法攻撃。範囲ではなく数が対象となります。
水の柱:障害物を出現させます。移動や遠距離攻撃の邪魔になります。数ターンで消滅します。
ブロンズシールド:配下と同じ物です。
幻惑:配下と同じ物です。
【2】おみよ
騙されて魔天神を信仰するようになってしまった少女です。
よって、ルール上は「殺王闘士」に分類され、「常陸の信仰を持つ者にはダメージを与えない」タイプの攻撃が当たるようになってしまっています(十言結界、雷霆聖音など)。
特に武装などはしていません。行動としてはひたすら渚に「こっちに来てくれ」と訴えかけるだけですが、渚の冷静さを奪うには有効な手段となっています。
【3】襲撃殺王闘士
アクションパート【3】で月蝕の珠を探すPCたちを不意打ちで襲撃してくる殺王闘士たちです。
物陰に隠れたり、幻惑の目くらましでこちらに居場所を気取られないようにしながら襲ってきます。
能力は配下の殺王闘士たちと同じです。
■「殺王闘士が苦手とするもの」のプロクへの効果
錫の金剛鈴など、殺王闘士が苦手とすると明記されているものについて、プロクに対して使用した場合、「ないよりマシ」程度の効果になります。
ただ他のモブ殺王闘士には有効な場合もありますので持ち込みが無意味と言う訳ではありません。
また、プロクに対しても、拮抗状態の時に使用すれば若干こちらの有利になる可能性はあります。
どうしようもないピンチをひっくり返すような効果はありませんが、お守りくらいの効果、もうちょっとで届くのに! と言うときの最後の一押しにはなるかもしれません。
他にも、プロクは「強い相手には効かない場合がある」とされているものが効かないことがあります。
■NPC
甲斐千雪(鎖座の和魂)
近接戦闘一辺倒の特異者。
流石に一般人を殴れないので防戦気味。
綾取はしご(宝箱座の荒魂)
射撃を得手とする特異者。
その世界の文明や文化などに興味を持っている。
今回はシリアスモードで渚を気に掛けている。
渚(砂浜座の荒魂)
投擲で戦う現地の御魂闘士。
故郷は若干の閉塞性を感じていて息苦しく感じており、御魂闘士になってからしばらく帰っていなかった。
みよが自分に会いたいが為にプロクに協力したと知って、狼狽えている。
■おまけ:敵キャラクターへのアクションについて
敵キャラクターは皆さんの敵です。
なので皆さんの話はこれっぽっちも受け入れる気がありません。悪ですね~。
なので、皆さんがその悪行や思想の誤謬を指摘しようものなら全力で逆張りしてきます。何故なら、彼女たちにも思想や矜持があるからです。ある程度の正当性があると思ってなければこんなことはやっていません。悪ですね~。
と言うことで、敵NPCに何か言うなら「わかってもらえない」「聞き入れてもらえない」ことは想定しておいてください。
突っぱねられたら嫌だな……と思うなら「言わないけど内心ではこう思う」と言うことにしておきましょう。
敵NPCは皆さんを描写するための触媒です。ガイドなどを読んでいただき、上手く使ってください。
■マスターより
こんにちは三田村です。
前回ご参加頂いた皆さんにおかれましては誠にありがとうございました。よろしければ後半もよろしくお願いします。
やはりPCさんの行動によってシナリオ、と言うかお話に厚みが出る、と言うことは今回ガイドを書きながら実感しているところなので、またこういう前後編ないしはシリーズのシナリオはやりたいな~と思っているところです。
状況的にはまあまあ厄介なところですが、毎回こちらの想定を越えてくれる皆さんのことだから今回もやってくれますよねっ! ねっ!
ご参加お待ちしています。
・妨害対応 【現在のMC参加人数:2】
・目的
ここを持ちこたえるのも大事なお仕事! やるよ!
・動機
プロクに腹が立ったのできました。
・手段
とりあえず村人から遠い奴の胸ぐらを掴んで殴る。今回で蹴りを付けるよ!
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・プロク対応 【現在のMC参加人数:2】
・目的
おみよちゃんを助けます
・動機
もう怒って良いですよね???
・手段
プロク殴りてぇ~~~~んですがとりあえず配下からなんとかしましょう。おみよちゃんの位置には気をつけないと行けませんね。
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・月蝕の珠破壊 【現在のMC参加人数:3】
・目的
感情を奪う何らかの装置を発見して壊す。
・動機
村の奪還。
・手段
そんな装置を放っておく筈ないから、敵襲は想定するべきだ。僕は戦闘対応に注力しようかな。
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