シナリオガイド
AAAS-014 Cygne
シナリオ名:「相手をつぶしなさい!」 / 担当マスター:鳥海きりう
自由都市連盟次期主力ASコンペテイション最終選考会場。
と書かれた横断幕が掲げられた会場入口を、大勢の人波が潜っていきます。「はい、こちら現場の近藤です。今回の次期主力ASコンペは広く一般にも公開され、多くの人々がこの会場に訪れています」天候は晴天。雲一つ無い青空です。
「ふーん……あれが新型? ダルテフィスですか?」
VIP席に座るアリス・エイヴァリーの問いに、ええ、とコンペの実行委員長は頷きました。アリスの視線の先には一機のASが佇み、最終選考の開始を待っています。「ASらしく、遠距離戦用の機体とのことです。肩にQHAC《四連装高周波徹甲弾砲》、手には2SGC《切替式ショックガン・カノン》を装備し遠間から敵を撃墜する。あとは近接戦用に高周波ブレードが一振り」
「ふーん……よさそうですね。資料は?」
「こちらに」
「どーも」
資料を受け取り、アリスは眼鏡をかけて目を通します。――すぐに目を上げ、眼鏡を外して会場を見やりました。
「来ました?」
「はい。あちらが最終選考に残った今一機、AAAS-014、シィニです」
「シィニ――」
呟き、アリスは歩いてきたそのASを見つめました。「って? どういう意味です?」「白鳥、という意味だそうです」「へえ」――少し変わったフォルムでした。カラーリングは白銀。人型なのは間違いなさそうですが、肩から踝にかけては何枚かの装甲版が垂れ下がり、まるでマントか裃を羽織っているようにも見えました。確かにそのずんぐりとしたシルエットと白銀のカラーリングは、翼を畳んだ鶴か白鳥に通じるものがあるかも知れません。
「資料は」
「ええと――ああ申し訳ありません。あれと一緒に来たチームが持っていましょう。すぐ受け取って参ります」
「よろしくー」
委員長がVIP席を出ていきます。アリスは正面に向き直り、対峙した二機のASを見据えました。
「えーそれでは、両者準備も整ったようですので、只今より最終選考を始めたいと思います。――両者、構え! 始め!」
アナウンスが響き渡ると同時、シィニはそのフォルムには似つかわしくないほどの速さで敵に接近しました。ダルテフィスは四門の砲をシィニに向け、発射。シィニはほんの少し横に滑り回避。二発は命中しましたが、垂れ下がった装甲板に止められ損傷は無いようでした。
直後、シィニを覆う装甲板が拡がり、変形して翼の形を成します。アフターバーナー・オン。凄まじい加速でシィニはダルテフィスの傍らを通り過ぎ、揚力を得て飛翔します。後進翼形態。尾翼展開。空中でシィニの翼がさらに変形し、速度を上げます。
「なんと……! 飛びますか!?」
VIP席で見ていたアリスは思わず声を上げました。「お待たせしました、シィニの資料です」
「ん!」
委員長から資料を引っ掴むように受け取り、目を通します。「驚きました。どうやらあの装甲は可動翼も兼ねているようです。しかもダルテフィスの砲火をものともしない剛性と、翼として成立する軽量化を両立しているとは。地上では撃っても効かず、空中では当たるわけがない。これでは――」
「いやいやまだです。武器は」
ダルテフィスが空中のシィニに向けてショックガンを撃ちます。回避。シィニは速度を上げながら旋回し、光条はその後ろを流れていきます。地上のダルテフィスを捕捉。トリガー。EHMM《脳波ホーミング・マイクロミサイル》が連続発射され、ダルテフィスに降り注ぎます。ダルテフィスは後退して数発を回避。そこへシィニが急降下。可動翼バインダーから二振りのビームサーベルを抜き放ち、ダルテフィスに斬りつけます。ダルテフィスは思わず体勢を崩し、シィニはその傍らを通り過ぎてまた空中へ。
「……」
「――勝負ありですな。まだご覧になりますか? これは最終選考ですから、我々が十分と判断したら終了させることもできます」
委員長の言葉にも答えず、アリスはただシィニを見つめていました。
「――やるな。あれほどのASを仕上げてくるとは」
最終選考空域後方、CI《セントラル・インダストリー》所属輸送フライングカーゴ・ガンケージ。ダルテフィスを送り出したCIチームの母艦です。その艦長席でミーア・サザンはそう呟きました。
「だが、今回のコンペで負ける予定は私には無い。――パイロットは可哀想だが、就職先を誤ったな」
言って、ミーアは艦長席のコンソールに向き直り、キーボードに指を躍らせました。
「――うお!?」
シィニのパイロットは思わず叫び――直後、シィニが墜落しました。何の前触れもなく。ダルテフィスの攻撃が当たったわけでも、燃料が切れたわけでもありません。
「どうしました!?」
「動かねえ――まずいぜ技師長! 急に死にやがった! 再起動」
パイロットが言う間に、シィニの計器に再び光が灯りました。思わず安堵のため息を吐き――その口元が、凍り付きます。再起動したシィニは墜落した状態から立ち上がり、バーニアを噴かして加速しました。パイロットの操縦を待たず。しかもダルテフィスではなく――最終選考会場、その観客席に向かって。
「う、嘘だろ――やっべえ!」
サーベル起動。シィニの抜き放った光の剣が、満員の観客席に振り下ろされました。
「あー……マジで?」
反対側の観客席にいたネリア・オニモトは、ソフトクリームを舐める手を止めて呟きました。「ざーんねーん……これは失格かなあ」最終選考の観客席は安全のため、強力なAKDF《対運動エネルギー拡散フィールド》によって守られています。シィニの剣は障壁で弾かれ、被害はありませんでした。しかし無論、会場は大混乱です。係員によって避難誘導が始められ、シィニはダルテフィスに背後から羽交い絞めにされ、それをシィニが今振り解きました。
「えらいもん見ちゃったなー……お姉ちゃんこういとこならいるかなと思ったけど全然いないし。絶対皇国には行かないだろうから国外なら連盟で決まりだと思ったんだけどなー」
最終選考は候補同士の一騎打ちによって行われますが、実際に評価されるのはその勝敗だけではありません。「最後まで問題なく稼働してたか」「パイロットは無傷か」「前後の整備は簡単かつ迅速か」「仕様書及び見積書に不備は無いか」等が、あるいは勝敗以上に評価を左右します。突如暴走して観客席を攻撃となると、大幅減点もしくは失格も当然あり得ます。
その時、ガンケージから四機のダルテフィスが降下し、最終選考会場に着地します。
「実行委員会席へ打電。シィニは暴走状態に陥っていると思われる。観客の安全のため、予備機を投入して事態の鎮圧を試みる。ご諒解されたし」
ガンケージの艦橋でミーアがそう言い、唇を歪めました。
担当マスターより
皆様こんにちは。鳥海きりうです。よろしくお願いします。
自由都市連盟次期主力ASコンペ会場での戦闘シナリオです。手段を問わず、戦闘を鎮圧すれば終了となります。
敵及びサブキャラクターのご紹介です。
・AAAS-014 シィニ
暴走状態にある試作AS。周囲を無作為に攻撃する。
・CAS-08 ダルテフィス ×5
CI《セントラル・インダストリー》製の試作砲撃型AS。
・CI所属フライングカーゴ ガンケージ
CIチームの母艦。民間の輸送艦なので武装は貧弱だが、耐久力は高い。
・アリス・エイヴァリー
ご存じ自由都市連盟のアリスさん。普段は昼行燈らしいが、趣味に合うのか今回の仕事ははわりと乗り気。
・ネリア・オニモト
やらかして逃亡した姉を探しているルミナスのテストパイロット。今回はただの観客……?
・ミーア・サザン
CI社長。自分が立てた予定は絶対崩されたくないタイプのご様子。
今回は選択肢ごとにご説明しようと思います。
【機動兵器で武力介入する】
機動兵器で武力介入する場合、「シィニの暴走を止めて事態を収拾する」「ダルテフィス及びガンケージを撃沈して事態を収拾する」「両方叩き潰して喧嘩両成敗にする」など様々な方法があるかと思います。何とどのように戦うかは皆様の判断にお任せします。
また、最終選考空域は充分な広さがあり、艦船を含む機動兵器の使用には制限は無いものとします。
【機動兵器を用いずに介入する】
機動兵器を使わず介入する場合は、NPCに働きかけるなど別方向から事態の収拾に動くことになります。また、必要であれば、機動兵器を用いない範囲で戦闘を行っても構いません。
また、こちらの選択肢を選ぶ以上は機動兵器での戦闘行為はご遠慮頂きたいですが、それ以外の用途もしくはフレーバーとして、機動兵器を所持しておくのは問題ありません。
また、今回の舞台はあくまでコンペ会場であり戦闘空域ではありませんので、フィールド内の移動および初期配置は基本フリーとします。最低限の理由付けや移動手段の記載があれば作劇上はありがたいですが、極端な話「何の説明もなくいきなりガンケージの艦橋にいる」「何の説明も無くいきなりVIP席にいる」等でもまあ問題はありません。多分。
簡単ですが、説明は以上です。
皆様のご参加をお待ちしております。
・機動兵器で武力介入する 【現在のMC参加人数:10】
【動機】この状況を止めないと……!
【目的】戦闘を止めて、平和的解決を呼びかけます。
【行動】ダルテフィスの部隊に、仲間がシィニを止めるために動いている旨を伝えて、攻撃を止めるよう通信します。
聞き入れて貰えない場合は攻撃します。その場合は手足や武装のみを狙い、戦闘力のみを奪います。
(これは例文です。また、ここに書いてあることが正解とは限りません。実際にどうするかは皆様でお考え下さい。より多く、より細かいアクションを頂ければ、より大きな戦果が期待できるでしょう)
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・機動兵器を用いずに介入する 【現在のMC参加人数:5】
シィニの製作者チームと話して、止める方法が無いか聞いてみよう。有効な手段が見つかれば、通信で味方に共有する。
もし無ければ、弱点か何かを聞いて……少し危険だが、生身でそこを狙ってみるか。
(これは例文です。また、ここに書いてあることが正解とは限りません。実際にどうするかは皆様でお考え下さい。より多く、より細かいアクションを頂ければ、より大きな戦果が期待できるでしょう)
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