突然の壁により仮初めの平和と情報を探り合う戦いとなった世界「バイナリア」
エージェントたちは
ガブリエラ・アンダーソンの指揮の下、
東トリスの境目にある危険地区及びその地下にあった研究施設の調査と敵の対処にあたっていました。
被験者や囚われていたエージェントの救出には成功したものの、
回収した資料から白衣の男の企みは完全に潰しきれていないと感じていました。
地下から脱出したガブリエラはすぐにA機関にいる分析班に資料を転送しました。
「データは届いたか? なるべく早く分析して対処方法を教えて欲しい。
もしかしたらズメイが発生したときと同じようなことが起きるかもしれない」
ガブリエラの不安や焦りからか声が震えていました。
現在、東トリスは先の大戦により復興の真っ最中で人々が協力して建物を直し日常を取り戻そうとしてました。
しかし、彼女の悪い予感は的中してしまいます。
突然、地響きがしたと思えば、地下施設があった危険地区の建物が崩れていきました。
そして、煙とともに現れたのは
建物よりも大きな狼男のライカンスロープでした。
頭は鋼鉄のヘルメットに覆われ、腕はマシンガンと大砲が撃てるように改造されていました。
「ライカンスロープとサイボーグのハイブリッドだと・・・・・・」
ガブリエラが目をこらすと
右肩に1人分のコックピットのような箱がついていました。
そして、その中には
白衣の男が乗っていました。
「どうだい? 東と西の技術を合わせた最強の
生物兵器『デュラン』は素晴らしいだろ。
これで街を壊滅させ壁に穴でも開ければ、この力を証明することができる!」
白衣の男は高笑いをし、『デュラン』を街へと進めました。
重量のある武器を腕につけているにも関わらず、
素早く軽やかに跳んでいきます。
その一瞬、『デュラン』の
義腕と肩の間が一瞬軋んだような音がしました。
「応援を要請したい。東トリスに巨大なライカンスロープが向かっている。
両腕が改造されで巨大な銃火器になっている。銀の弾だけでは倒せない可能性が高い」
ガブリエラはA機関や他のエージェントに連絡していきました。
* * *
時は少し遡り、地下研究施設から救出された
ヘンリー・ルイスは医療班に引き渡されていました。
エージェントたちにより応急処置を受けていた彼でしたが、
白衣の男らに取りつけられた機械により動けなくなっていました。
その機械を調べてみると、中には
大量のミサイルや爆弾が装填されています。
疑問を抱きながらも医療班は治療する傍ら、その機械類も外すことを試みました。
しかし、一般的な工具などでは外れず機械そのものも鋼鉄の素材でできているようでした。
医療班が手をこまねいていると、突然ヘンリーが苦しそうに唸り始めました。
「・・・・・・うっ、いたい。くるしい、たすけて」
息は荒くなり、ヘンリーは痛みから顔は歪ませていました。
すると、徐々に身体が黒く染まっていき、その身体は大きく広がっていきました。
やがて、黒く染まった場所は羽毛で覆われていき、足は鋭い鉤爪に変化しました。
広がっていた部分は翼の形になり、身体の何倍もの大きさになりました。
形がはっきりしてくると、そこには巨大なカラスがいました。
ヘンリーは囚われた際の実験と魔素汚染の影響で、
ライカンスロープの因子を強制的に覚醒させられました。
そして、
巨大なオオガラス型のライカンスロープへと変貌することとなったのです。
医療班がやむを得ず{red銀の弾を使用しますが、大きくなっていく身体に対して量が足りません}でした。
変わり果ててしまったヘンリーは銃撃をものともせず、耳を塞ぎたくなるような鳴き声を上げました。
それと同時に
身体に取り付けられていた機械が辺りを攻撃し始めました。
医療班が一時退避している間にヘンリーは翼を広げ、その場から飛び立ちました。
周囲を見境なく攻撃しながら飛ぶヘンリーは不安定ながらも東トリスへと向かっていきました。