シナリオガイド
お祭りはトラブルだらけ?! 屋台を守り、街の秘密に迫れ!
シナリオ名:ハーンデルの祭日 / 担当マスター:常葉ゆら
「ボスはねぇ、とってもお怒りだよぉ」
どこか舌っ足らずな雰囲気の残る口調で、少女――少年にも見えます――が言いました。
「せっかく、うまく行ってたのにねぇ」
「……す、すみません……」
少年――あるいは少女――の言葉に、年かさの男がぺこぺこと頭を下げます。
「次の手、考えてあるよねぇ?」
「はいッ、はい、もちろんでございます! 今年もそろそろアレの季節ですから……」
――薄暗い部屋の中、二人は何やら悪巧み――
――――――――――――――――――
交易都市、ハーンデル。タシガン空峡に面した、港を持つ、交易で栄えている街です。
この街では先日まで空賊の被害を受けていましたが、契約者達の活躍により、空賊たちはお縄に付くこととなりました。――しかし、その空賊団は、契約者たちによって教導団に引き渡されるまでは、捕まってもすぐに釈放されてしまっていたのです。それは、空賊を引き渡されたこの街の憲兵隊の、彼らなりの妥当な判断の結果だったようですが、しかしその裏には「何か」が蠢いている気配があったのでした――
とはいえ表面的には平和になったハーンデルの街では、毎年恒例のお祭りが開催されていました。
元々は、この時期に近隣の森で採れる果実の収穫を祝い、木工細工職人達の仕事の本格化に備えて、英気を養うためのイベントだったようで、一応、祭りの主役は、ヴァイツェンの実という果物ということになっています。皮の黒っぽい林檎の様な果実で、ハーンデルの人々は、そのまま食べたり、ジュースにしたりして楽しみます。
が、この果実は、材木用として植えられた木の副産物であり、それほど大量に収穫されるわけではありません。本来なら、地元の人達が内輪で楽しんで、翌日からの仕事に備えるだけの、ささやかな収穫祭だったのでしょう。
それが、流石は貿易で栄えている街といったところか、いつの頃からか本来の意図は形骸化し、「ヴァイツェン祭り」などと旗は掲げているものの、ヴァイツェンを扱う屋台はごく一部。後は、地元の家庭料理やら、はやりのスナック菓子や揚げ菓子やらを並べる屋台に、お酒を出すスタンド、ゲームのテントに土産物屋にと、商売ができるなら何でもありの、商業イベントの色合いの強いお祭りとなって、近隣地域からも見物人のやってくる、年に一度の大イベントとなっているのでした。
そんな、ヴァイツェン祭りまっただ中のハーンデルに、鈴木 円真(すずき・えんま)の姿がありました。薔薇の学舎に通う契約者です。隣には、円真のパートナーのミケーレ、それから、円真の友人たち数人の姿もあります。
先日の空賊騒ぎの際、ハーンデル貿易商会から依頼を受けた縁があり、その際に知り合った貿易商・シェスティンから「お祭りに遊びにいらっしゃらない?」というお誘いを受けて、やってきた、はずでした。
「はーい、いらっしゃいいらっしゃーい」
が、なぜか、円真とその友人達は、シェスティンが出しているヴァイツェン・ジュースの屋台の内側で、売り子をしていたのでした。
「……なあ、俺、祭りに遊びに行こうぜ、って誘われたと思うんだけど、お前に」
「俺も、みんなでお祭りに遊びにおいで、って誘われたんだよ、シェスティンさんに」
円真の友人のひとり――高沢 直流(たかざわ・すぐる)が円真に耳打ちすると、円真は困ったように答えました。
「仕方ないじゃん、話の流れで……ま、後で旨いもの食べさせてくれるっていうし、この人混みの中右往左往するのも面倒だし、屋台の店番も楽しいんじゃない?」
「ちぇっ、後でうまく逃げた連中戻って来たら交代してもらお……」
直流は舌打ちをしますが、円真の言うことにも一理あります。彼らの目の前には、商店街の道路にひしめく、人人人。
人混みでもみくちゃにされるのを楽しめるタイプの人は楽しいかもしれませんが、そうではない――円真のような――タイプの人間にとっては、屋台の内側でお祭り気分を楽しむ方が幾分かマシに感じられるでしょう。
「みなさん、お疲れ様。交代でお昼ご飯にしてくださいね」
と、そこへ、買い物に出ていたシェスティンが、両手いっぱいに屋台の食べ物を抱えて戻って来ました。待ってました、と直流が飛びつきます。
「留守の間、大丈夫でしたか?」
「ええ、順調に売れてますよ。夜までヴァイツェンが持つか心配で」
シェスティンの問いかけに円真が答えると、シェスティンは「よかった」とほっとした表情を浮かべます。
「何か心配事でもありましたか、シェスティン嬢」
その表情が気に掛かったのか、ミケーレがシェスティンに問いかけます。するとシェスティンは、困ったように眉を下げ、片手を頬に当てて首を傾げました。
「それが、今年はなんだかトラブルが多いみたいで。もちろん、これだけの規模のお祭りですから、毎年何かしらいざこざはありますけれど……それでも、屋台が潰されるような酷いトラブルはなかったのですけれど……」
「えっ、そんなことが起きてたんですか? 全然気付かなかった」
「……そりゃ、俺らからじゃ、3メートル向こうで何が起きてるかも解らないくらいだもんな……」
円真の言葉に、直流が付け加えます。
「なんだか、仲裁に入ってくれる人もいるらしいんですけど、それもなんだか怪しいらしくて――」
「と、仰いますと?」
「お店で、柄の悪い方が何か、いざこざを起こしますでしょう、そうすると、どこからか誰かが現れて、仲裁に入ってくれるそうなんです。そうすると、柄の悪い方達は、なんだかんだ言いながらも素直に引き下がるんですが、今度は、仲裁に入った方が金銭を要求してくるそうで……」
「……ははあ、なるほど。よくやるパターンですねぇ」
シェスティンの説明を聞いたミケーレが、なにやら訳知り顔で頷きます。
「もちろん助けて頂いた訳ですから、自発的にお礼を差し上げる方も多くて、そうすればその話はそれでおしまいなのですが、お礼を出し渋るような方が居ると――」
「屋台を潰すぞと脅したり、実際に暴力沙汰を起こしたり……という訳ですか」
ミケーレがシェスティンの言葉を引き取ると、シェスティンは「ええ」と頷いた。
「実際に襲われた屋台もあるそうで……アッ!」
言葉の途中で、シェスティンが悲鳴を上げました。その視線の先を追って一同が振り向くと――
男がしれっとした顔で手を伸ばして、屋台の売り上げを入れてある金庫を、ぱっと取り上げて、スタコラ逃げていくところでした。
「ドロボーッ!」
円真が叫びながら飛び出します。他にも何人かが続き、売り上げ泥棒を追いかけ始めました――
担当マスターより
こんにちは、常葉です。
前回シナリオ「ハーンデルの空賊団」に続く、ハーンデルの街を舞台にしたシナリオの二回目となります。
事件は独立していますので、前作に参加されていない方でも、お気軽にご参加ください。
さて、今回のシナリオの舞台はお祭り。お祭りを楽しんだり、トラブルを解決したりしながら、ハーンデルの街の秘密に迫る内容となります。
主な目標は、シェスティンの屋台の売り上げを取り戻し、街で暴れ回っているごろつきや、トラブルに乗じて出てくる謎の男をとっ捕まえ、平和なお祭りを守る事ですが、のんびりお祭りを楽しむことも可能です。
さらに、その謎の男の背後に居る黒幕の正体に迫ることができれば、ハーンデルの街に蠢く闇の解明に一歩近づくことができるでしょう。
★参加パートについて
主な行動指針は下記の通りです。
全てのパートにおいて、前回シナリオへの参加の有無に関係なくご参加頂けます。
描写はお祭り当日のみに絞られますので、事前準備などのアクションが中心の場合、描写が軽くなりますのでご了承ください。
●シェスティンの屋台を手伝う
円真たちが飛び出して行ってしまった後のシェスティンの屋台を手伝います。ジュースを作ったり、接客をしたり。
こちらにはミケーレとシェスティンがいますので、話を聞くことも可能です。
円真の友人として手伝いに来た、という形での参加となります。
●自分で屋台を出す
前回シナリオで契約者たちと貿易商会の間にコネクションができましたので、契約者であれば貿易商会の公認を貰って屋台が出せることになりました。
屋台の骨子や調理道具など、必要な道具は貿易商会が貸してくれます。他にも出店に必要なものは、現実的な範囲のもの(イメージとしては、高校の文化祭で、高校生が自力で手配できる程度の物品)はどこかから調達してこれるものとして構いません。
ただし、貿易商会が契約者に好意的な一方、ハーンデルの街の職人達は地球人に対して閉鎖的です。また、屋台に因縁を付けて回るごろつき達や、そのごろつきを追い払うことを口実に金銭を要求する男が目撃されていますので、注意が必要です。
●お祭りを楽しむ
屋台で買い物をしたり、テントでゲームを楽しんだり、お客さんとして自由にお祭りを楽しむことができます。
上記のようなトラブルに遭遇することがあるかもしれませんが、トラブルを避けて行動することも可能です。
●売り上げを取り戻す
円真、直流と共に売り上げ泥棒を追いかけます。相手の戦力は不明です。
こちらのパートは、「円真たちと屋台を手伝っていたが、泥棒に気付いて追いかけている」という場面からスタートとなります。
※パートまたぎでのGAについて
今回は、
・友達が出している屋台に遊びに行く
・シェスティンの屋台を手伝っている友人の所へ顔を出す
・屋台を出したりお祭りを回ったりする中で得た情報を、他のパートに参加している友人に伝える
以上の3パターンに限り、パートまたぎでのGAが可能です。
GAタグの設定が無い場合、採用できない可能性もありますので、パートまたぎでの協力アクションを使用する場合は必ずGAタグの設定をお願いします。
★ハーンデルの街について
西部:港があり、商店街があります。シェスティンの屋台は商店街に出ています。
東部:職人街と呼ばれ、職人達の工房が並んでいます。地球人に対しては閉鎖的ですが、今日はお祭りなので少しおおらかです。
北部:役場街です。町役場、職人組合、貿易商会、憲兵隊詰め所、町長の家などがあります。屋台がちょこちょこある程度で、比較的空いています。
中央:広場があり、お祭りの本部などが置かれて賑わっています。
(南部:住宅街ですが、今回の舞台にはなりません)
詳細は、前回シナリオ「ハーンデルの空賊団」を参照してください。
★NPCについて
・鈴木円真(すずき・えんま)
薔薇の学舎に通う高校2年生。蒼空Re世界の地球出身。明るい茶色の髪に端正な顔立ち。頭は悪くないが、頑固で言い出したら聞かないところがある。契約者としての実力は、弱くはないが平々凡々というところ。
・ミケーレ
円真のパートナーである魔女(男)。円真のことを「ご主人様」と呼ぶが、どこか子供扱いしている節もある。実年齢は不明だが、見た目は20代くらい。頭が切れる。
・高沢直流(たかざわ・すぐる)
円真の友人の蒼空学園生。蒼空Re世界の地球出身の、未契約者。戦闘の経験はあんまりない。
※円真・ミケーレ・直流については、「友人である」「顔見知りである」として接していただいて構いません。
・シェスティン・ユーハンソン
ハーンデル貿易商会に所属する貿易商人。シャンバラ人。今回はヴァイツェン・ジュースの屋台を出店中。
・ごろつき
お祭りで暴れ回っているならず者達です。複数人で徒党を組んで、複数組が暴れているようです。怪しい男に仲裁に入られると、すごすごと立ち去る様子が目撃されています。売り上げ泥棒もこの一味のようです。
・「怪しい男」
ごろつきがトラブルを起こしていると現れて、ごろつきを追い払う代わりに金銭を要求しているらしい男です。正体は不明ですが、売り上げ泥棒の一件にも絡んでくる可能性があります。
・憲兵隊
ハーンデルの街の治安維持組織です。街の総力を挙げてのお祭りですから、見回りに出ています。なお、この街には教導団の影響が及ばず、街の中で起きた事件には憲兵隊が対応します。
★さいごに
今回は割合自由度の高いシナリオとなりますが、その分、街の闇の核心に迫るための情報収集の難易度は少し高めになっています。
うまく連携して、掴んだ情報を仲間達、そして円真と共有できるかが鍵となるでしょう。
行動指針で示されていないアクション(例えば住宅街の調査をするなど)は高確率で空振りとなりますのでご注意ください。
皆様のご参加をお待ちしております。
・シェスティンの屋台を手伝う 【現在のMC参加人数:3】
目的:お祭り気分を楽しみたい
動機:シェスティンの屋台を放っておけない
手段:円真たちが売り上げを取り戻してきてくれることを信じて、残された屋台を盛り上げます。
ジュースを沢山売って、円真達が帰ってくるまでに完売させてやろう!
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・自分で屋台を出す 【現在のMC参加人数:3】
目的:ごろつきたちに付いて情報収集をしたい
動機:屋台が出せると聞いたので、お祭りに参加してみた
手段:円真から、祭りで屋台が出せると聞いたので、地球式たこ焼きの屋台を出してみる。目新しいから商人達にウケるかもしれない。ごろつきどもなんて一ひねりにできると思うが、警戒は怠らないようにしよう。
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・お祭りを楽しむ 【現在のMC参加人数:7】
※トラブルを回避するようにすれば難易度1相当です※
目的:街について情報収集を兼ねて、お祭りを楽しむ
動機:ハーンデルの街について詳しく調べたい
手段:お祭りに紛れて、街の様子を見て回ろう。特に憲兵隊の動向が気になる。ごろつきたちが事件を起こしている現場に出くわしたら、憲兵隊がどう出るかよく見張っておこう。
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・売り上げを取り戻す 【現在のMC参加人数:4】
目的:バトルで暴れたい
動機:売り上げ泥棒は許せない!
手段:円真たちと屋台を手伝っていたが、泥棒に気付いて飛び出して来た。
とにかく人が多い。声を張り上げて道を空けて貰うようにしよう。
仲間がいないとも限らないから、周囲への警戒もしっかりしておこう。
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