“ヴィラン(悪)”が人々を裏で支配するロディニア。
それはここカディヤックヒルでも変わらない。
悪事を働くヴィランの中心である“異邦人(エトランジェ)”に成す術を持たなかった人々だが、
勇気を力に変換する
“ブレイブコンバーター”の開発によってヴィランに太刀打ちできる力を手に入れた!
“セイヴァー(救世主)”が勇気を力に変えてヴィランを打ち破る想像(イマジン)の世界となったのである!
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――カディヤックヒル、コロシアム、球場
セイントドリーマーズ VS ダーティドッグス 開幕戦
球場は満員、35000人の観客がこの一戦を見に来ています。
セイントドリーマーズのドラフト1位の期待のルーキーがプロ初登板で開幕戦の投手を務めることになったからです。ルーキーが開幕投手を務めるのは非常に珍しいことで話題になりファンが大勢集まりました。
ベンチでセイントドリーマーズの監督とコーチが話をしています。
「監督、良いんですか? ルーキーが開幕投手を務めるなんてプレッシャーになりませんか?」
「ふむ、私もそう思うのだが、オーナーがこの試合はどうしても彼に投げさせてほしいと言うんだ」
試合は0:0のまま、4回へ。
すると、ここで異変が起こります。
『ダーティデックス選手交代をお知らせします。打者変わりましてアシモフ、背番号13。』
顔まで隠れるシールドの付いたヘルメットを被った選手がバッターボックスに入りました。
「君、そのヘルメットはなんだね? すぐに外して規定のものをつけなさい」
審判が選手を注意します。そこへ、ヘルメットの選手のチーム、ダーティドッグスの監督が歩いてきました。
「審判殿。このヘルメットは野球協会の許可を得ています。これが証書です」
証書には新型ヘルメット許可と野球協会の名前でサインと今日の日付が記されていました。
「そんなバカな」
「とにかく、このヘルメットは規定内のものです。試合を続けてください」
審判は仕方なくプレイ再開の合図をしました。
ヘルメットの選手は対戦チーム、セイントドリーマーズの投手の第一球を力強いスイングで捉え、スタンドに放り込みました。すさまじいまでのホームランです。選手は淡々とダイヤモンドを一周します。
さて、ダーティドッグスの守りになると異様な光景が現れます。
ダーティドッグスの全選手が顔をシールドで覆う帽子を被って守備につきました。
それも9人全員がこの回新しく守備につきます。
しかもベンチメンバーはまだまだいる様子。既定の人数を超えています。
その後、一方的な展開が続きダーティドッグスが大量点を入れました。
そしてダーティドックスの四番バッターが鋭い打球を放つと、セイントドリーマーズの一塁手の肩を直撃、選手は悲鳴を上げ地面をのたうち回ります。
続く五番バッター、六番バッターもセイントドリーマーズの選手を負傷退場させていきます。観客は悲鳴を上げたり、あるいは興奮して叫ぶ者もいました。
――カディヤックヒル、アンダープレート、イマジンレガリア本拠地
「ああ! 今テレビで見ている。彼らは間違いなくヴィランだ。恐らくサイボーグだろう!今すぐセイヴァーズを向かわせる!」
電話を片手にイマジナリィセイヴァーズの長官である
光牙 影路郎が声を荒げます。
通話の相手はセイントドリーマーズVSダーティドッグスの試合のプロモーションを主催者から依頼されたプロモーターです。
「くれぐれも観客に被害を出さないようにお願いします。……この試合は何かおかしいです。あの選手たちを動員するためか去年のシーズン終了後にプロ野球の規定が大幅に変更されました」
「エジソンか、あるいはその部下か、いずれにせよ去年の段階で計画していたことは間違いない!話題を作り、広告を打ち、球場を超満員にしたのも観客を人質にするためだろう!実に小賢しい!」
「これだけの人数だと避難させるのは現実的ではないわね」
プロフェッサーソルフォードが現状をそう分析します。
ブレイブコンバーターの無線機能を使い、すぐに駆け付けられるセイヴァーズに連絡を取ります。
「くそ、セイヴァーズが駆けつけるまで持ちこたえてくれ」
「観客たちも保護しないと。皆、試合に熱狂して異常事態に気づいてない。危ないわ」
選手が1人また1人と倒れていきます。
――カディヤックヒル、コロシアム、球場
現場に到着したセイヴァーズの一人が影路郎に無線を送ります。
「ダメです。試合中だからと球場に通してくれません。無理矢理押し入ってもいいんですが、どうしても観客に危険が及びます。どうしますか?」
球場では、セイントドリーマーズの守備が投手を除いて全員倒れました。それでも試合は続き、一人で粘る投手も、もはや限界を迎えています。異常な光景です。
「うむ! プロモーターくんから提案があった! 相手が野球で選手を痛めつけるなら、こちらも野球で選手を守ればよい! 既にセイントドリーマーズの監督には話が付いている。試合終了まで君たちが選手として試合に出場し、選手たちを守るのだ!」
試合は20-0、圧倒的な差が付いています。
それでも投手は投球を試みましたが力尽き倒れました!
「見たか! あの投手の姿を! この試合サイボーグの勝利のまま終わらせるわけにもいくまい! 諸君、ヒーローたるもの! この程度の逆境なんてことはない! ひっくり返して見せたまえ!」