シナリオガイド
待ち人襲う黒い影。曰く付きの筆墨を確保せよ!
シナリオ名:紅葉の宴に招かれざるモノ / 担当マスター:茸
ソレが現れ始めたのは、楓が赤く色付き紅葉(もみじ)と名を変える秋のことでした――。
夕暮れ時。
赤い陽に照らされる紅葉の木の下で、
一人の若い女が恋人の到着を今か今かと待ちわびていました。
ふと、人の影が此方に伸びてきたことで漸く来てくれたのだと思い、彼女は弾かれるように顔を上げます。
「ふふ、遅いですよ。もうすぐ日が暮れて……」
恋人を想い、赤みを差していたはずの彼女の顔が瞬時に恐怖へと歪みました。
「な、なに……っ? 何なのっ!?
こ……こっちに来ないでっ……きゃああああああ!!!!」
前方に佇んでいた人の形をした黒い何かが突然襲いかかって来たのです。
恐怖のあまり両手で顔を覆って蹲った彼女は、直後、冷たい水を浴びせられたかのような衝撃を身体に受けました。
顔を覆っていた手で濡れた髪を掻き上げ、震える指先を見た瞬間、ヒュッと息を呑みました。
指先だけでなく、全身が黒い液体でずぶ濡れになっていたのです。
その液体がなんなのか、ニオイで直ぐに分かりました。
「……ぼく……じゅう?」
呟いてからハッと顔を上げた彼女の前には、誰の姿もなく。
あの黒い人型も消えていて、墨塗れの彼女だけがその場に取り残されたのでした……――。
*****
帝都の場末にある、小さいながらも紅葉で彩りを魅せる美しい町。
ある依頼を受けて赴いた修祓隊隊士の海崎 虎里は、依頼主の家の前で立ち止まりました。
そこで目にしたのは“紅葉の宴”と書かれた一枚の張り紙――。
開催日が明後日に迫っていることを確認したところで玄関の引き戸が音を立て、一人の男が顔を出しました。
「――本日はご足労頂きありがとうございます」
客間にて。
男は白い無精髭で覆った口元を引き締めながら、目の前に座る虎里を見据えます。
双方共に口数が少なく、挨拶が済んだところで自然と本題に入りました――。
「黒く、人間の形をした化け物、ですか」
この町の長である男の依頼内容に、虎里は思案顔で呟きます。
男も眉間に皺を寄せ、頷きながら重い口を再び開きました。
「襲われた者は若い女子(おなご)ばかりで、心配した家族が相談に来るのですが、
実体が掴めずなんとも煮え切らない話でして……それも被害に遭ったのはたったの数名。
悪戯かもしれないそんな話を鵜呑みにして多くの者が楽しみにしている紅葉の宴を取り止めることも憚られ、困っている次第です」
暫しの沈黙の後、虎里は居住まいを正し、真っ直ぐ町長の男と目を合わせます。
「紅葉の宴は予定通り開催して頂いて構いません」
「では……!」
「今回のご依頼、私がお預かり致します――」
担当マスターより
こんにちは、または初めまして。
GMを務めております、茸です。
今回のシナリオは【神州扶桑国】が舞台となります。
季節に合わせ、それらしいシナリオを考案いたしました。
詳細をお読み頂き、どなた様も是非奮ってご参加くださいませ。
*パート詳細*
【1】曰く付きの筆墨の確保
曰く付きの“筆墨(ひつぼく)”は、
手にした者を操り墨で人型を描かせソレに人を襲わせる器物です。
筆墨が使われ続けるとマガカミ化する恐れがあるので直ちに探し出し確保する必要があります。
今はまだ人型自体に自我はありませんが、マガカミ化すると描いた者の意思とは関係なく勝手に行動するようになります。
当日は紅葉の宴が開催されます。被害が広がらないよう尽力願います。
黒い人型が出るのは常に夕暮れ時の紅葉の近くで、必ずそこには若い女が恋人を待っている状況だそうです。
襲われた彼女たちの話によると、墨で書かれた手紙が届き呼び出されたと口を揃えて証言しています。
その手紙はそれぞれの恋人からで、何の疑いもなく待ち合わせ場所に行ったそうです。
しかし、恋人である男たちは「そんな手紙は書いた覚えが無い」とのこと――。
現在、
その筆墨はとある屋敷に住む若い男の手に渡っているとの情報が入っています。
彼氏に成りすまして手紙を出したり、その彼女を標的にするのには何らかの理由があると見られます。
男が持つ筆墨の確保に加え、
紅葉の宴の日に指定された手紙が一通届いたという女性の保護兼、そこに現れるとされる墨の人型――墨人間の退治に当たって頂きます。
※呼び出された女性の方は墨人間1体なので退治は難しくないと思われますが、筆墨確保とダブルアクションにならないようご注意ください。
(待ち合わせ場所は宴の会場に程近く、人通りの少ない紅葉の木付近のようです。)
墨人間は基本的にそれを操る男の思念により動いています。
浄化するのが最も効果的ですが、男が此方の動きに気付き、墨人間を使って攻撃してくる可能性も考え行動しましょう。
筆墨を奪取することで使用者を正気に戻ることが可能です。
ただし、墨人間の墨に触れると霊力を奪われるので注意が必要です。
ここでは海崎 虎里が登場します。
【2】紅葉の宴に参加
こちらは“紅葉の宴”参加パートになります。
紅葉の宴は町民総出で行われる秋のお祭りです。
桜並木ならぬ紅葉並木を目で楽しみ、夜はライトアップもされて町では人気のイベントとなっています。
屋台も並び、紅葉の押し花作りや秋の季語を入れた俳句(五・七・五)を詠んで秋を堪能することもできます。
『あなたの渾身の俳句募集中!』とのことなので、そこに応募してみるのも良いでしょう!
それぞれ思うままに紅葉の宴をお楽しみください。
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*主なNPC*
・海崎 虎里(かいざき こざと)24歳
流派:一織流
152cmという小柄で少年のような外見から子供扱いされることもしばしば。
愛刀は太刀で普段は背中に携え持ち歩いている。
(初登場は『大蔵屋敷の怪』です。ご参考までに。)
余談――
紅葉(モミジ)とは、楓の葉が紅葉(こうよう)して呼ばれる別名です。
葉の分かれ方でも呼び名は変化しますが、
紅葉している様々な草木の中でも楓が美しいことから、楓がモミジと呼ばれるようになったとされています。
色が変わって呼ばれ方まで変わるなんてなんだかロマンチックですね。
本シナリオにあります宴は『“もみじ”の宴』と読みます。
・曰く付きの筆墨の確保 【現在のMC参加人数:9】
・手紙を受け取ったという女性の方は他の隊士に任せ、
私は虎里と共に筆墨を所持している男の元に向かいます。
浄化は苦手なので、隙を作ることに専念し援護に努めます。
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・紅葉の宴に参加 【現在のMC参加人数:3】
・もみじ饅頭を食べながら紅葉を眺めるのも一興ですね。
それと押し花の栞を作って愛用しましょう!
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