シナリオガイド
ふふん。この私に隠し事なんて、出来やしないんですからね!
シナリオ名:絡みつく闇の残響【前編】 / 担当マスター:砂糖しろくろ
パダーニャ王国、某所。
仄暗い樹林の中――僅かな陽光に反射する鈍色の甲冑が、山林を駆けていました。
追うように、獰猛な牙が喰らいつきます。
躱されても樹々を喰らい迫る魔物。その身体には、生々しい傷を宿しています。
「……喰らえ……」
樹木を喰らった魔物目掛け、女の声と同時に一閃が走ります。
何が起こったか分からぬまま、魔物は鮮血を噴き上げ一歩身を引きました。
対峙するのは、先の甲冑を纏う女です。彼女は鋭く、瞳へと魔物を映します。
追撃をしても良い間をおいて、ふと、女の視線が側方へと移りました。
何かに誘われるように向かった視線の先。樹々の隙間から覗いた――小さな集落。
それはこの国では忘れ去られた異人達の集落でした。
女の心臓が、僅かばかり跳ねます。
戦いの渦中に呆けた代償、それは強靭なかぎ爪となって女へと迫ります。
「――煩い」
しかし一瞬の惑いなど、女にとって枷でも何でもありませんでした。
一撃。
三日月の黒い何かが魔物へと迸り、女の甲冑は赤黒い返り血を帯びていました。
静かになった森の中で、女は枯れ葉を踏み鳴らし、集落へと瞳を向けます。
その夜色の瞳が濃さを増していった刹那――女は我に返ります。
「……な、何故……《教会》騎士団が!?」
女の瞳に映った光景。それは集落へと疾走する《教会》騎士の群れでした。
遠方からでも彼女の知る《教会》騎士団の姿ではありません。
黒く染まりつつあった女の瞳に、一筋の光条が宿ったようでした。
「そうだ。私は《教会》騎士……ジョルジア。――見逃しはしない!」
その身体は虚空を駆り、崖を蹴って集落へと向かっていきました。
■□■□■
「予想より敵の到達が早かったですわ、お兄様!」
「皆には極秘にしてたはず、情報が漏れたとは考えづらいが!」
集落へと殺到する、《教会》の皮を破った戦士達を追う二つの影。
それは進撃する《教会》騎士らと同じ甲冑を纏う、若き《教会》騎士アルノとベルナールです。
「向こうには仲間達が待機してる。ここは定石通り、挟撃といこう――アルノ!」
ベルナールが璃々しく言葉を放った途端、側方に延々と広がる崖から何者かが跳び下りました。――ジョルジアです。
進撃する二人を一瞥し、疾走するジョルジア。その速度たるや尋常ならざる俊敏さです。
「あれは……?」
「見ない顔ですわ……ですが今は、突撃する奴は全員止める、ですのよ!」
予期せぬ遭遇に戸惑う二人でしたが、思慮にふける時間はありません。懸命に砂埃をまき散らす敵軍の背を追います。
その背が近づいてきた頃、ベルナールは突如上方を見やり叫ぶのでした。
「アルノッ!」
声に合わせてアルノは天を仰ぎ、丸い瞳を広げました。
彼女の澄んだ瞳に映ったモノ――それは魔物でした。傷つき、狂暴化した魔物。
反射的に握る斧型のギアへと力を込め、薙ぎ払う彼女でしたが、間髪入れず新たな魔物達が二人目掛けて跳びかかってきます。
「逃げろ!!」
ベルナールがアルノを庇うように飛び出しますが、それより早く彼の脇を駆ったのは、ふわりと優しく波打つ灰色の髪でした。
「ふふん。この私に隠し事なんて、出来やしないんですからね!」
柔らかい言葉が二人を包んだ直後、流星の如く迸る斬撃が、立ちどころに魔物達を払います。
「……だ、団長」
ベルナールが呟いたと同時、花を彷彿させる一人の少女が笑っていました。
パダーニャの《教会》騎士団を束ねる――フィオーレが。
「フィ、フィオーレ様も今回の件をお気づきだったのです!?」
「私は……うーん、別件です」
言い終えたフィオーレは、進撃する敵軍の殿へと斬り込むジョルジアを目します。
その瞳はどこか鋭く、そして哀しみが帯びているようでした。
「ともかく、今は魔物達を撃退するのが先決です! 行きますよ、ベルナール、アルノ!」
快活な声に次いで、再び飛来する魔物の集団へと瞳を向ける一行。
最中ベルナールは、魔物の隙間から覗く一つの影に気が付きました。
「……――あれは」
確かに彼は、崖の上に佇む人影を捉えたのです。
鈍く光る《教会》の甲冑を纏う、何者かの姿を。
“魔女狩り”の再演から始まる新たなる《教会》の物語が、幕を開けるのでした。
担当マスターより
まず初めにシナリオガイドをご覧いただきまして誠にありがとうございます。
砂糖しろくろです。
●概要
事の発端は、アルノが偶然耳にした《教会》騎士による“魔女狩り”計画でした。
復権しつつある《教会》の権威を、一日でも早く取り戻す名目であるそうですが、負の歴史を繰り返そうとしていることは明白です。
誰が賛同しているかも分からない状況であったため、アルノは兄であり、同じ《教会》の騎士であるベルナールと共に単独で挑む形を取りました。
その延長線上で、信頼を寄せている特異者達に増援の依頼を出したのでした。
そして森の中で一人魔物と戦っていたジョルジア。
彼女の目的は不明であり、《教会》騎士の格好をしていますが、アルノからは見知らぬ顔と評されています。
そして時を同じくして現れた《教会》騎士団長フィオーレ。彼女も別のまた目的があるようですが。
かつてのロンバルディア襲撃事件を皮切りに凱旋を果たした《教会》の今後と、“負の遺志”が交じり合う物語となっています。
■アクションパートについて
パート【1】敵の首領隊を撃破する・【2】“魔女狩り”を食い止める
こちらは双方ともに異人達の集落へと迫る《教会》騎士団と思しき集団の、“魔女狩り”を防ぐことが目的です。
事前に依頼を受けていた経緯もあり、正面からの迎撃となります。
敵の中には正規の《教会》騎士団員でない者も確認されており、パート2については戦術もあまり洗練されたものではありません。
パート【1】は自ら敵陣の中へ斬り込むこと、パート【2】は迫り来る敵陣を止めることが重要となります。
【1】敵の首領隊を撃破する 難易度:7
異人達の集落へと迫る《教会》騎士団と思しき集団を止めることが目的です。
こちらのパートでは敵の首領隊を撃破することがメインとなります。
敵の首領である《教会》騎士アンシアと十人の従士達を撃破することがメインとなるパートです。
彼女は古くから騎士として《教会》へ従属した強者です。
また従士も皆、歴戦の正規《教会》騎士団員であり、その実力には警戒が必要でしょう。
特異者達が葬り去ったオーディオの率いる隊へ所属していた経験もあり、個としてだけでなく統率能力に秀でた銃器の使い手です。
その指揮について、彼女が率いれば“賊でも魔物討伐が出来る”と評されるほどです。
指先に仕込んだギアによる、一点突破の銃撃には注意が必要です。
【2】“魔女狩り”を食い止める 難易度:5
異人達の集落へと迫る《教会》騎士団と思しき集団を止めることが目的です。
こちらのパートでは進撃する敵部隊を鎮圧することがメインとなります。
上記の通り敵の中には正規の《教会》騎士団でない者も混じっており、個々の脅威は低いです。
しかしながら前へ突破しようとする姿勢を崩していない以上、止めるための策がなければ集落に被害が及ぶでしょう。
また、パート2の成功度が著しく低い場合は、パート1にて敵陣へ斬り込むことができず、双方失敗する可能性もあります。
こちらのパートではNPCとして、クロエとその仲間達が招致されています。
状況に応じて協力してくれるでしょう。
また、謎の騎士ジョルジアも攻撃には参加しますが、友好的ではない様子です。
【3】飛来する魔物達の迎撃を行う 難易度:6
そびえる崖の上より飛来する魔物達の迎撃を行うことが目的のパートです。
敵は非常に大きなかぎ爪を持った、二足歩行の魔物です。
一体一体の脅威は低いですが、何者かによって傷つけられており、空から飛来する加速度も相まって油断ならない状況です。
元は群れを成す種族であったことが運悪く、百体にも及ぶ襲撃となってしまっています。
目の前が崖であること以外、周囲は平地であり制約もなく戦い易い状況です。
しかしそれ故に回避に徹した場合は、魔物達が集落の方向へと散っていく可能性もあり、パート1・2が不利になる、もしくは被害が及んでしまうでしょう。
そして崖の頂上で謎の人影も目撃されています。
接近を考えれば予期せぬ攻撃があることも予想されますので、防御手段を用意しておく必要があるかもしれません。
魔物の強さに対して難易度は高めに設定していますが、しっかりと手段さえ練っていれば記載の難易度以上に十分戦うことが可能でしょう。
こちらのパートでは味方NPCとして、《教会》騎士団長フィオーレ、そして騎士であるアルノとベルナールが参戦します。
フィオーレは教皇へ使用許可を求めていないため、アスカロンの所持はしていません。
【4】《教会》の調査 難易度:1
何故今になって“魔女狩り”が起こってしまったのか、現状を調査することが目的のパートです。
ロンバルディア旧街区にある《教会》騎士団本部にて、またロンバルディア全域にて調査を行うことが可能です。
かつて特異者が《教会》の復興に大きく関わった過去があるため、関連性のある人物であれば騎士団上層部の人間と接触することも難しくはありません。
■登場NPC
過去シリーズとリンクする登場人物もいますので、関わる場合は参考程度にお読みください。
●アルノ
《教会》騎士団の新米騎士だった少女。
関連シリーズ『花と騎士』及び『烈火の戦士と聖華の騎士(前編)』では訓練兵を率いて戦った。『烈火の戦士と聖華の騎士(後編)』以降は正式な騎士として従事する。
先代騎士団長と今の《教会》騎士団を愛し、《教会》復興のために死力を尽くす。
●ベルナール
《教会》騎士団の新米騎士だった男。
関連シリーズ『機械の心に燻る炎(後編)』の後、再起した《教会》より輩出された騎士。
本来善行を積み人々の心を支える《教会》騎士団の戒律を重んじ、それを誇りとしている。
『烈火の戦士と聖華の騎士(前編)』ではベヒーモス討伐に尽力。その後も《教会》騎士団を支える人物として戦う。
●フィオーレ
《教会》騎士団を纏める騎士団長。
かつて歴史の影に隠れつつあった《教会》の再興を行った先代騎士団長の娘。
かつては父親が殉教した経緯から、誰かを傷つけることを忌避していた。
しかし関連シリーズ『機械の心に燻る炎(後編)』にてトラウマを乗り越え、亡き父と同じく世界へ力を尽くすことを誓った。
★以下特異者
●クロエ
パダーニャ王国で巻き起こった事件にて、多くの特異者と共闘した。
現在は護るための戦いに身を投じ続ける。
●その他の特異者NPC
ヴァイス、ノワール、クリス、金髪の男。
過去特異者達と交流を持ち、彼らの背を追い協力者となった者達。
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・敵の首領隊を撃破する 【現在のMC参加人数:14】
・目的
負の歴史を繰り返させない。
・動機
“魔女狩り”が再び現実のものになったら、今までの苦労は台無しになる。
全力で食い止めなければ。
・手段
オーディオ隊にもいたと言うシンシア、か。
従士を一体ずつ倒してシンシアを孤立させることを中心に動くとしよう。
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・“魔女狩り”を食い止める 【現在のMC参加人数:17】
・目的
異人達を護りたい
・動機
背に無辜の民がいるっていうなら、俺は退けない。
・手段
肝心なのは前に突撃する敵陣をどうやって止めるか、だな。
広範囲で面状に攻めるもの悪くはないが、取り囲まれたりする展開には気を付けたいな。
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・飛来する魔物達の迎撃を行う 【現在のMC参加人数:10】
・目的
集落に魔物を寄せ付けない、ですわ!
・動機
とっとと魔女狩りを何とかしたいですけど、魔物で被害が及んだら本末転倒ですの。
・手段
魔物の雨状態って感じですわ。
大切なのは取りこぼさないこと。自分の守備範囲をしっかり見定めて、叩き潰すことに専念しますわ。
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・《教会》の調査 【現在のMC参加人数:8】
・目的
あれから《教会》に何があったのか……現状を聞いてみようかしら。
・動機
話に聞いたジョルジアって子のことも気になるわね。
・手段
ロンバルディア旧街区にある《教会》新本部に向かいましょうか。
それなりに活気も戻って来たでしょうから、噂程度なら誰でも収集できるはずよ。
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