人間の姿を模した兵器たちが人々を守るために戦う世界「アーモリー」
アクシスパワーズの本拠地からだいぶ離れた
入り江のような場所にその姫令部はありました。
先日の
姫令部防衛戦及び偵察部隊妨害戦により、教導官である
コウタ・シンプウとユニオンジャスティシアの艦姫だった
キャリーのわだかまりはなくなっていました。
「調子はどうだ、ここの姫令部には慣れてきたか? キャリー・・・・・・さん」
「キャリーでいいよ、教導官。だいぶ慣れてきたよ、話せる友達もいるし」
キャリーの様子にコウタが安堵の溜息をついたそのとき、姫令部の周囲を監視していた武姫から連絡が入りました。
「
正面からユニオンジャスティシアの艦姫が向かってきています。以前よりも数が多いです」
コウタが正面を確認すると、入り江にはたくさんの艦姫と飛姫が侵攻していました。
さらに回線がジャックされ、モニター1人の飛姫が映りました。
「キャリーちゃん、お久しぶり~♪」
「あんたは・・・・・・
B-26 JM マローダー」
「もうー。『マーロ』って呼んで、っていつも言ってるでしょ」
苦虫を噛み潰したような顔になるキャリーに対し、コウタは目を丸くします。
それもそのはず。マーロは男性の飛姫にも関わらずレオタード、おまぇに奇抜な髪型をしていました。
「キャリーと会ったときも思ったけど、ユニオンジャスティシアは妙な格好が流行っているのか」
「ちょっと一緒にしないで!」
「そうよ、何事にも囚われないだけ♪ その話は置いといて・・・・・・アタシたちはこの付近のマトリクス鉱山がどこにあるのか、正確に位置を把握したわ。キャリーちゃんのおかげでね♪」
マーロの一言に姫令部の武姫たちがキャリーを見ました。疑いの目を向けられ、キャリーの顔が曇りました。
「実はそっちに鹵獲される前に小型カメラを仕掛けさせて貰ったの。こっちはいつでも姫令部を破壊してマトリクスを奪うことが出来るんだけど。もし、ユニオンジャスティシアに定期的にマトリクスを輸送してくれるのであれば姫令部は破壊しないであげる♪」
「そんなことするわけないし、この姫令部はあんたたちなんかに負けない!」
マーロの申し出にキャリーは反発しました。しかし、マーロの隣に映った教導官を見て表情が変わります。
「だ、
ダニエル教導官」
「キャリーですか? こ、こんな形で再会するなんて」
ダニエルは手錠をはめられ、武姫たちに銃を向けられている状態でした。
「敵になったとはいえ、キャリーちゃんも大切な人を失いたくないでしょ?」
人質となったダニエルを見てキャリーの顔が歪みました。その顔を見て、コウタは返答しました。
「分かった。マトリクスは輸送しよう」
「ホントに? さすが教導官さんは理解が早くて助かるわ♪ まず手付けとして、いくらかマトリクスをいただこうかしら」
マーロが指示を出すように手を上げると、他の武姫たちは銃を下ろしダニエルの手錠を外し始めました。
その間に姫令部の方も準備し始めます。
「なんでマトリクスを渡すの? 私たちなら勝てるのに」
「勝てるかもしれない。だが、
ユニオンジャスティシアは今教導官よりも武姫たちの力が強い。このまま戦えばダニエル教導官の命が危ない」
コウタが言うとキャリーは指令室を飛び出しました。そして、キャリーは自らマトリクスを持ち、マーロの前に向かいました。
「アナタが持ってきてくれたの?」
「
別の場所で受け渡す。姫令部には攻撃させない」
「なるほど、そう考えているのね。いいわ、行きましょ♪」
マーロは納得すると、キャリーと共にユニオンジャスティシアの軍隊から離れていきました。
指揮していたマーロがいなくなり、姫令部に向かってきていたユニオンジャスティシアの軍隊は機能しないとコウタは考えていました。
ところが・・・・・・。
「・・・・・・攻撃、用意。放て!」
突然ユニオンジャスティシアの艦姫が姫令部を攻撃してきました。しかも、それを
指示するのは人質となっていた教導官のダニエルでした。
「そんなことをしてキャリーを裏切る気か?」
「何のことでしょうか? 彼女に優しく声をかけただけに過ぎません。それに、彼女以外にも声をかけてますし、犠牲になるのも彼女たちも意思ですから」
そう言ってダニエルはほくそ笑みました。
* * *
一方、マーロも背を向けるキャリーに対し、魚雷を放ちました。
「・・・・・・バイバイ、キャリーちゃん♪」