ダウンタウン郊外―――
「キャー!! 助けてーーー!!」
「避難だ! 落ち着いて一列になって逃げるんだ!
押さない、走らない、しゃべらない。“おはし”の約束を守るんだぞー!!」
「五月蠅いどけ! 俺が一番に行く!!」
ガラス張りのビルや奇妙な形をした建物が立ち並ぶ、落ち着いた雰囲気のオフィス街では、
まるで普段の静寂を取り返すかのような大騒ぎが巻き起こっていました。
「くそっ! この炎、水をかけても全く収まる気配がない……!」
「ヒーロー達はまだなの!? 私の子供がまだ中に残っているの!」
慌てふためく市民たちの前では、巨大なビルが轟々とした炎に包まれて燃えています。
近くの取水口を利用し、懸命な消火活動を行っていますが、炎の勢いは収まる気配がありません。
さらに、炎上しているビルは上層階に託児所を兼ねた施設があり、
そこには託児所に努める職員や子供を含む若干名が取り残されてしまっているようです。
「早く! 早く来てヒーロー!」
■ □ ■
それと時を同じくしてダウンタウン 別の場所
オフィス街の中央付近、正方形に開けた広場では、一人のヒーローとevilが相対していました。
「火っ火っ火ィ! いい感じに俺の火炎は燃え盛っているみたいだなぁ!」
「くっ……! 変な笑い方しちゃって! 罪のない市民を巻き込むとは卑怯よ!」
「んなことぁ知らねぇ。お前は悪者に正しさを求めるのか?」
ヒーロー“リトルムーン”は果敢にも攻め込みますが、ブレイムと名乗るevilは、両手から火炎を出すことでリトルムーンを近づけさせようとしません。
「熱いっ! でも私は平和の為、みんなの為、あきらめるわけにはいかないのよ!」
リトルムーンの再度の突進にブレイムは炎の壁を出すことで対処します。
しかし、リトルムーンはその壁が出来上がったことなど無視し、壁の中へと突入、
ヒーロースーツに所々焼け跡を残しながらも、ブレイムの眼前へと迫るのでした。
「喰らえッ! 必殺『ヘルメスカッター』!!!!!」
焼けこげながらもしっかりと握りこまれた拳がブレイムに届く寸前。
炎に覆われたevilの顔が醜く笑みを浮かべました。
「まだ甘いんだよォ!!」
その言葉と共にブレイムの口から放たれたのは、強烈な冷気を纏った氷塊。
リトルムーンの拳はその正義を貫くことなく、弾き飛ばされてしまいました。
「ああっ! 炎だけじゃなくて冷気も扱うなんて……
倒せなかったことは悔しいけど、ヒーローは私だけじゃないのよ。
きっともうじき仲間たちが来てくれるはず!」
「何人来ようと同じだ!
俺様の炎と氷で全員薙ぎ払う!
そしてこの町を俺の炎で包み込んでやる!」