―――ラディア軍 作戦本部
作戦本部の中、伝令と思わしきトルーパーが本部長である男性に向かって報告書を読み上げています。
「報告いたします! サクスン東、森林地帯での戦いにおいて苦しい状況が続いています!
すでにサイフォス先行型は半数以上が破損、もしくは全損してしまい動かない状況です。
さらに前線近くにヘビークルーザー級のエアロシップを確認、それに伴い敵兵力が増大、現在ラディア軍は防戦一方となり徐々に前線を上げられている状況です」
「エーストルーパー、もしくはセンチュリオンの存在は?」
「いえ、強力な機体と言えばヘビークルーザー級のエアロシップぐらいで、他は通常のファントムやデストロイヤー級のエアロシップしか確認されておりません。
ただ、一点気がかりなのが……急速に敵の戦術が高度化しており、まるで一時の“戦争屋”のようだと……」
「“戦争屋”フォルティス……奴はノルトマルクにいるはず……なぜ奴の戦術が……?」
「先日のエルベ砂漠での戦闘の際、ほとんどの隊員は捕獲しましたが、一部逃げた隊員がいると。もしかしたらそれらがこちらに逃げ延びてきているのかもしれません」
本部長の男の頬を、一筋の汗が流れました。
「フォルティス隊の残党ということか……よかろうここで迎え撃つ!
なんにせよ、まずはヘビークルーザー級エアロシップの破壊を行う。エアロシップがなくなれば、仮に“戦争屋”仕込みの戦術があったとしても補給が持たなくなり、一時撤退させることが可能だろう。
その為にも、戦力が欲しい。例のトクイシャへ連絡を取ってくれないか?」
「はっ! 承知しました。すぐに連絡を取ってみます」
トルーパーは敬礼をすると、特異者とつながりのある高杉大介の元へと走っていきました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
―――サクスン西 占有地域境界線付近 森林地帯
「A隊はそのまま前進、B隊は南東へまわれ。C隊はその場で待機、敵軍が現れたら奇襲をかける」
森の中で、男がぶつぶつとつぶやいていました。
男は“ロンデル”と呼ばれる黒いメタルキャヴァルリィに乗り、森の中に隠れるようにして伏せています。
その肩には長距離砲撃用のロングレンジキャノン。コックピット越しに覗くスコープの先には、最前線で戦うグランディレクタ軍とラディア軍の姿がありました。
ラディア軍のメタルキャヴァルリィ達は、影に溶け込むように伏せているメタルキャヴァルリィはおろか、
自分たちが知らず知らずのうちに囲まれていることにも気付く素振りがありません。
男の持つ砲門が、ラディア軍のメタルキャヴァルリィであるサイフォスへとその銃口を向けました。
「俺が一発撃ったら作戦スタートだ。隊長仕込みの戦術、魅せてやるぜ……」
男は前方を経過しながら進んでいるサイフォス小隊、その先頭を進んでいる機体に向けて、トリガーを引きました。
高速で飛んだ弾は、狙い通り機体を破壊します。
「A隊、C隊攻撃開始! B隊は増援に備えながら援護だ。
絶えず敵よりも多い数で立ち回れ
これは戦争じゃない“狩り”だ。俺たちはハンター、哀れなサイフォスたちを狩ってやれ……
俺たちがここで結果を出せば隊長の名誉は回復するはず……俺たちが汚してしまった名誉を取り返すためなら何でもやってやるさ……!」