怪人・ドルックメンツの事件から2週間後――。
復讐鬼《ティーガーヘルシャー》こと虎峰・クラウディウスは、身体に受けた深刻なダメージの影響か、<炎>はおろか<変身>もできない状況でした。
そんな虎峰は、事件の3日後に目を覚ました時から、ずっと虚ろな瞳で窓の外を眺めているのでした。
ベッドの脇にはヒーロー協会か送られたれてきた書類が置かれています。
そこには『2ヵ月の治療後、貴方をヒーロー協会から除名します』という内容が書かれていました。
突きつけられた現実に、虎峰の心にはポッカリと穴が開いてしまったようでした。
そんな彼の病室に、1人のお客様が舞い込んできます。
彼女はまだ年端も行かない少女でした。
「えっへへー、また来ちゃった♪」
「・・・・・・またお前か。ここに来るのは禁じられているはずだが?」
虎峰は重症の患者とはいえ、事件を起こした危険人物の1人です。
故に病室の入り口には警備員が立っているのですが、彼女に気がつく様子もありません。
「おじさんとお話したかったから、また使っちゃった♪」
「ネオジェネレーションか。残念だが、お前に話すことは何も無い」
「えー! 私は聞きたいことたくさんあるよぉ!」
「はぁ、勝手にしろ」
虎峰は、勝手に押しかけてくる少女の願いを無碍にすることはありませんでした。
それは死んだ息子と同じくらいの歳のせいなのか、それとも妻と似た性格のせいなのかは、虎峰本人にも分からないことでした。
「おじさんはヒーローなんだよね?」
「あぁ。だが、もうすぐヒーローじゃなくなる」
「それは・・・・・・怪我のせい?」
「ハッ、馬鹿にするなよ。この程度1ヶ月もあれば治る!」
「すごぉい! やっぱりヒーローってすごいんだね!」
「・・・・・・なぜお前は、俺なんかの話が聞きたいんだ?」
虎峰のなんとなくした問いに、少女は表情を暗くします。
「私、将来はヒーローになりたいんだ」
「なればいいではないか」
「なりたいよ? でも、私もうすぐ死んじゃうかもしれないんだ・・・・・・」
「お前は難病に、いや、難しい病気なのか、それとも怪我か?」
「よく分からない。でもこれは怪人が作り出した病気なんだって」
病気を作り出す怪人。
その怪人に、虎峰は心当たりがありました。
怪人・ギフテリア
最近デルタシティの[オリエントタウン]に出没する怪人です。
「奴か」
「うん、だから私はヒーローになれないかもしれない」
「そんなことはない」
「え?」
虎峰は・・・・・・いえ、《ティガーヘルシャー》は不敵な笑みを浮かべていました。
虚ろだった瞳には小さいながらも、煌々とした輝きが灯っています。
◇◇◇◇◇
それから2週間後。
ジェノ・サリスはとある病院からの緊急要請に嫌な予感がしていました。
とある病院は、もちろん虎峰が入院している病院です。
到着したジェノ・サリスはけたたましいサイレンの中、虎峰の姿を捉えます。
「む、ジェノ・サリスか。・・・・・・ちょうどいい。少し協力してくれないか? もちろん無理にとは言わないが」
明らかに完治しきっていない姿の虎峰は、その姿とは裏腹な笑顔でジェノ・サリスに話しかけるのでした。
◇◇◇◇◇
同刻――。
アイン・ファイユーブと
アクセル・ハートビーツは、『助けを求める声』に呼応し、現場の病院へ急行していました。
『いつでも復讐しに来い』
けたたましいサイレンの中、忌々しいその声を聞いたような気がしたアインは振り返りました。
そこには病院とは反対方向に走り去る虎峰の姿をアインはその視界に捉えるのでした。
◇◇◇◇◇
一方その頃[オリエントタウン]の一角では、瘴気のような黒い靄が通りを染め上げていました。
その中心にいるのは、件の怪人・ギフテリア。
騒ぎを聞きつけたヒーローたちが次々と現れますが、すでに瘴気に当てられた街の人が道路に倒れています。
虎峰もすぐにその騒ぎを嗅ぎつけてやってくるでしょう。
力を失った復讐鬼。
怪人によって夢を諦めた少女。
彼らの運命はいかなるものになるのか?
それを決めるのはあなたたちのアクションです!