シナリオガイド
悪の組織の入社試験!?
シナリオ名:悪の組織「ダークサテライト」へようこそ / 担当マスター:フィア
デルタシティのとあるビルの地下――。
そこに秘密結社「ダークサテライト」のアジトがありました。街の破壊や施設を襲撃など、数々の悪行をなしてきたことで有名な悪の組織です。
そのアジトの薄暗い会議室で、二人のヴィランが机を挟んで相対していました。
片方は、機械の身体をもつサイボーグの中年女性。そしてもう片方は、悪魔のような恐ろしい容姿の青年。
サイボーグの女性、ルナティ・フランケンが、資料を手に取ってドサッと机の上に足を上げました。
「えーと、神明輝昭……。ずいぶん見た目と名前が合致しないんだねぇ。芸名?」
「いえ、本名です」
「まあ、んなことはどうでもいいや」
どうでもいいのか。ならなんで聞いたんだと面食らった思いをしながらも、神明は黙って相手の反応を待ちます。
資料に目を通していたフランケンが、紙の端から目を覗かせました。
銃のスコープのようなレンズが、神明を見極めるように映します。
「で? アンタ、ウチがどういう組織なのかわかって来たんだろうね?」
「はい。御社の組織概要や活動記録を拝見いたしました」
「じゃあまずなんでウチに入社希望なのか言ってみて」
「は、はい」
目の前のかかとに眉を寄せながら、あらかじめ用意してきた志望動機を述べ始めました。
「私が御社を志望した理由は、ヴィランの秘密結社でありながらデルタシティの平和維持に貢献していることです。御社が提供する新しいエンタテイメントは、典型的な悪役を『演じる』ことで新人ヒーローの活躍の場を増やしたり、反面教師として社会の必要悪を担ったりするなどの効果が期待されます。私はその斬新で素晴らしい取り組みを知り、非常に感銘を受けました。ミュータントや怪人の特徴を最大限に活かして平和活動を……」
「長ったらしい!」
フランケンがダンッと机を蹴り飛ばしたのを、反射的に避けました。机が壁をぶち破り、廊下を通りかかった男が悲鳴を上げて逃げていきます。
彼女が履歴書を丸めて神明の頭をポカポカと叩きました。
「そんなねぇ、小難しいこたぁ聞いてないんだよ。ウチでやる気があるの、ないの?!」
「それは、もちろんありますが……先ほど『なんで入社希望なのか』とおっしゃ――」
「あぁ!? アタシがいつ、何時何分何秒前にそんなこと言ったって!?」
――神明はこのとき悟りました。彼女が会社などによくいる、自分ルールが激しいお局様だと。
丸めた書類で勢いよく胸を叩かれ、そのまま突き返されました。この様子じゃ不合格だな、と履歴書に目を落とすと、何かの紙が挟まっているのに気づきました。
「あの、違う書類が混ざっておりました」と彼女に返そうとすると、
「アンタの目はお飾りか!」
右ストレートが顔面を直撃。
ふつふつと湧き上がる殺意と鼻をおさえながら、神明はその紙をめくってみました。
「……え?」
「なにアホ面してるんだい」
ドカッと座りなおした彼女が、足を持ち上げてわずかにバランスを崩しました。どうやら机がもうないことを忘れて足をかけようとしたようです。
その一部始終を見ていた神明を恐ろしい顔で睨みつけると、咳払いをしてアゴで紙を指しました。
「適性試験の内容だ。よく目を通しておきな。いまから三十分後、街に出てもらうから。銀行強盗しに」
――とんでもないところに来てしまった。
そのときの彼の表情は、さながら召喚先を間違えて絶望する悪魔のような顔だったそうです。
担当マスターより
本シナリオをご覧いただきありがとうございます。
新しく始まりました『悪の組織奮闘記(仮)』シリーズ第一弾です。(全て一話完結を予定しておりますので、お気軽にご参加ください。)
悪の組織「ダークサテライト」へ面接に来た神明は、いきなり試験として銀行強盗をする羽目になりました。
今回はそんな彼を補佐するヴィラン、あるいは悪を打ち倒す正義のヒーローとして、この大がかりなヒーローショーを成功させてください。
○「ダークサテライト」について
デルタシティで悪行の限りを尽くす秘密結社。しかしその実体は、ヒーローたちを成長させるため悪として勝手に活動しているエンタテイメント集団です。
あくまで「悪役のフリ」ですので本物のevilの秘密結社とは違い、人を傷つけたり無駄な破壊をしたりはしません。ただし「全力で悪役を演じきる」ことをモットーとしているため、必要とあらばビルの一つや二つは容赦なく吹っ飛ばします。
○適性試験について
ルナティ・フランケンから渡された資料には、以下の注意事項が書かれていました。
・悪の組織に対して嫌悪感を与えるため、悪役はできるだけ凶悪にふるまいなさい。
・実際にお金を奪ってくる必要はない。
・一般人に演出を超えた損害を与えてはならない。
・悪は必ず正義に倒されなければならないので、悪役側は最後に上手く退場しなければならない。
神明は「悪の組織の資金を集めるために銀行を襲う怪人」という設定で乗り込み、集まってきたヒーローたちに撃退されるのを待つ予定です。
また、資料には試験会場の銀行に本物のevilが強盗を計画していることが明記されていました。
試験を潤滑に進めるため、そして被害を出させないためにも始末しておく必要があります。
この強盗について資料によると、
・サイコキネシスを使うヴィランである。
・手に触れたものを数秒間意のままに操れる力を持ち、数々の悪事をはたらいてきた。
ということが分かっています。
悪役が派手に暴れ、正義がかっこよく活躍することが、試験の合格につながります。
○NPC紹介
神明輝昭:「ダークサテライト」に入社希望の青年。平和のために戦う真面目で善良なミュータントだが、「いかにも」な悪人面のせいでいままでgoodとして見られたことがない。今回の試験で落ちたら、本当に悪の道に進んでやろうかと考えているこじらせ寸前状態。
ルナティ・フランケン:「ダークサテライト」人事担当。周囲に被害を及ぼすタイプのゴーイングマイウェイ。勢いと決断力と破壊力だけで組織の幹部にまでのし上がった。
・適性試験を手伝う 【現在のMC参加人数:13】
・目的
ヒーロー側として悪役を倒す
・動機
悪が倒されなくては試験も終わらないから
・手段
悪役が出揃ったところを見計らってから、名乗りとともに登場します。
戦闘は接近攻撃重視で戦います。一般人には気づかれないように、攻撃はすべて峰打ちにしましょう。
けれど気迫だけは本気でやるつもりでいきます。
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・本物の怪人を倒す 【現在のMC参加人数:7】
・目的
被害を出さないようにする
・動機
適性試験の邪魔はさせない
・手段
銀行の外でヴィランが来るのを待ち伏せしよう。
戦うよりも先に拘束を試みて、銀行から遠ざけるようにする。
できるだけ騒がないように、試験の妨げにならないように気をつけないとね。
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