シナリオガイド
ペットスポーンの餌にされる!? 誘拐された娘たちを救え!
シナリオ名:連続誘拐犯と麗しきペットスポーン / 担当マスター:藤村 悠生
「ああ……美しい。なんて美しいの……」
鎖の音が響く、薄暗い地下室の中――身なりの良い女主人が、恍惚とした声を出しました。
女主人の視線の先には、彼女が溺愛しているペットが、ぐる、ぐるると低い呻きをあげいます。そしてしきりに、彼女に噛みつこうと大きく口を開けては、虚空を噛んで歯を激しく鳴らしていました。
ペットである彼の少々腐敗した首には、とても頑丈な枷がはめられています。首輪から伸びた太い鎖はぴんと張っているのですが、彼の歯はどうしても女主人に届きません。
しかし、それを理解できない彼は、何度も何度も歯を鳴らします。
「あぁ……いい子ね、いい子……、すぐに食べさせてあげるわ……」
女主人は甘い声で、彼に囁きかけました。
「だから、覚えなさい……あなたは私のモノ。私のモノなのよ――」
***
場所は、ヴィンランド西部の港町。現在、この街では、若い女性ばかりを狙った連続誘拐事件が起きていました。
被害者の中には、まだ年端もない少女も含まれており、住民たちは恐怖でろくに外出もできません。
そんな中、夜の闇を吸ったような黒い海――その湿った空気を吸いながら、一人のシスターが無防備に港を歩いています。
ですが、シスターは無防備に見せかけて、辺りに神経を張り巡らせつつ、周辺の闇に強い視線を送っています。
(さぁ、来なさい……真っ二つにしてやります)
彼女の手には、斧の形のフォトングリップが握られていました。それを長い後ろ髪に隠すようにして、シスターは夜の道を歩いていきます。
(絶対に絶対に、許しません!)
弱き者を狙った卑劣な事件。シスターは自らが囮となって誘拐犯を炙り出し、その手で直ちに制裁を下すつもりなのです。
そして程なく――彼女の背後に人の気配が近づきました。
シスターは振り向きざまに斧を高く跳ね上げます。――けれども、それを振り降ろすことはありませんでした。
シスターの前に現れた者。それは憎き連続誘拐犯などではなく、自力で逃げ出してきた、誘拐の被害者少女だったのです。
そして、この少女の証言により、恐るべき事件の真相が明らかとなりました。
連続誘拐事件の犯人は、この街で一番大きな屋敷に住む女主人――彼女は、屋敷の隠し地下室に、どこかから連れてきたスポーンを鎖で繋ぎ、ペットとして飼って溺愛しています。
スポーンは見目麗しい若い男ですが、性質はグールのようであり、正気は保っていないようです。
女主人は、このスポーンの餌にするため、執事たちに街の女性を誘拐させていました。
逃げ出してきた少女の証言によれば、誘拐された女性たちは、港町から少し離れた廃墟の中で檻に閉じ込められていて、一人か二人ずつ、順に屋敷へと運ばれていたようです。少女は、檻を見張るお喋りな執事に、女主人とペットのスポーンの話を聞きました。そして、自分が運ばれる順番になった際、なんとか隙を見て逃げ出したのです。
お喋りな執事曰く、女主人はとにかく美しい顔の男性が好きで、彼女は屋敷内にも彼女好みの顔をした執事たちを複数抱えています。誘拐の実行犯も彼らであり、今夜も、被害者物色のために数名の執事が街をうろついているということでした。
「そこで私! ある作戦を考えました!」
――少女に話を聞いたシスターは、被害者救出と誘拐犯討伐のために募った協力者たちに、力強く呼びかけます。
「執事たちの力を分散させたままにするためにも、私は引き続き囮として街を徘徊して、被害者物色中の執事を引きつけます。皆さんは、その隙に廃墟と屋敷へ、同時に突入して下さい。作戦がばれて集合されないよう、静かに、速やかに、確実に一人ずつ犯人を仕留めましょう!」
シスターの提案した作戦はつまり、囮班・廃墟班・屋敷班にわかれて同時に作戦を実行するというものです。
「各班の作戦詳細はお任せします! それでは皆さん、ご武運を!」
担当マスターより
誘拐犯を倒し、女性たちを救って、連続誘拐事件を解決するシナリオです。
誘拐犯の生死は問いませんが、攫われた女性たちは一人でも多く助け出してあげてください。
舞台はヴィンランド西部の普通の港町です。事件を解決しなければ、誘拐された女性たちがみんな餌にされてしまいますし、誘拐犯たちを逃がせば、またどこかの街で同じ悲劇が繰り返されることになってしまうでしょう。
以下に情報をまとめますので、各班での作戦を考える際の参考として頂ければ幸いです。
■囮班■
囮になる・囮に食いついた執事と戦う、などの作戦を行ってください。
執事たちが狙うのは若い女性や少女ですが、時刻が夜なこともあり、女性と見間違えれば男性や少年にも食いつく可能性があります。
敵となる執事は女主人の主に顔で選ばれたお気に入り執事たちで、廃墟の執事よりは戦闘力は多少低いようです。ですが、彼らは生粋の執事ではなく、元マフィアや荒くれ者のアウトローを女主人が囲い込み、執事の格好をさせているだけのようで、戦いに慣れていることには変わりがないと推測されます。何カ所かにわかれて一人歩きの女性を物色しているかもしれません。
場所は主に市街地です。一般市民は事件に怯えて基本的には外出していません。
なお、シスターは囮として港付近を徘徊します。余力がある場合は護衛をしてあげると喜びます。
大きな戦闘になると、屋敷・廃墟双方に音が伝わります。また、屋敷・廃墟どちらかで大きな戦闘が起きた場合は、執事たちがそちらの応援に移動しようとしてしまいますので、阻止する必要があります。
■廃墟班■
見張りの執事と戦う、被害者が閉じ込められている檻を破壊する、などの作戦を行ってください。
港町から少し離れたところに、全体が廃墟となっている街があります。見張りの執事たちは、そこを徘徊しているようです。
隠れる場所は多いですが、足音が鳴りやすく、建物も崩れやすくなっているので注意して下さい。大きな崩壊の可能性があります。被害者が閉じ込められている檻は廃墟街の奥のほうにありますが、そこには廃墟の執事たちの中で最も強い、お喋りな執事が常時はりついているとのことです。また、ひょっとすると、檻は一か所とは限りません。お喋りな執事から何か情報を引き出したい場合は、人を絶望させるのが気持ち良いという彼の性癖を上手く利用してみると良いでしょう。
市街地の執事たち同様、執事とは名ばかりの荒くれ者たちで、こちらは顔よりも腕っぷしを買われて女主人に雇われているようですので、充分に注意して下さい。また、彼らは女主人への忠誠心はあまり高くはないようなので、形成が不利になると逃げ出す可能性があります。仲間に知らされると厄介なので、確実に仕留めましょう。
例え大きな戦闘になったとしても、屋敷にまでは聞こえないと考えられます。
本日の餌となる少女が逃げたため、急がないと次の女性が運び出される可能性があります。
■屋敷班■
女主人&ペットスポーンと戦う、隠し地下を探す、執事たちと戦う、などの作戦を行ってください。
屋敷にも恐らく用心棒として、執事たちが残っていると推測されます。また、屋敷の庭には女主人の放った狂犬も数頭いますので、狂犬に吠えられたり、執事に騒がれたりしないよう行動する必要があります。執事や狂犬の数を減らすなどの対応をとると、屋敷内で行動しやすくなります。
屋敷の中の扉のどれかを開くと、隠し地下への階段が現れるようです。片端から扉を開けるも良し、捕まえた執事に尋問するも良し、方法は自由ですが、誰か一人は地下への道を探さないと、ペットスポーンは見つかりません。女主人は恐らく地下でペットを愛でているはずですが、場合によっては屋敷内を徘徊している場合もありますので、注意しましょう。
また、女主人はマギウスで、特に若い女性には憎しみを持って攻撃をしてきます。一方、好みの男性には捕獲や懐柔を目的とした働き方をしてくるかもしれません。
例え大きな戦闘になったとしても、廃墟街にまでは聞こえないと考えられます。
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以上、各班、極力音の出る戦闘は避けるようにしてください。こちらが静かに戦っても、執事たちはうるさいかもしれませんので、速やかに仕留めていきましょう。強力すぎる敵はいませんが、連携やバランスが大切になってくるシナリオです。
各班の作戦を成功させ、攫われた女性たちを救い出し、誘拐犯を倒すことで、この連続誘拐事件を解決まで導いてあげてください。
誘拐犯の生死は問いません。中には何らかの事情で女主人に逆らえないだけの執事もいるかもしれませんが、シスターは全員を屠る気のようです。
※難易度は各班が行う作戦、ご自身の受け持った役目などにより上下します。
・囮班として行動する 【現在のMC参加人数:6】
あたいはシスターと同じく囮になるよ。シスターが港なら、街の反対側辺りを歩いてみようかね。なるべく無防備なほうが執事を釣りやすいだろうから、あたいが気を抜けるように、近くで護衛してくれる奴がいると助かるんだが。
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・廃墟班として行動する 【現在のMC参加人数:6】
僕は、お喋りな執事さんを倒しに行きます。そこでわざとやられながら、他の場所にも檻があるかを聞きだそうと試みますね。その隙に、捕まった人たちを逃がしてくれる人がいたら嬉しいなぁ。
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・屋敷班として行動する 【現在のMC参加人数:8】
自分は屋敷内の執事たちを、一人ずつ背後から襲って仕留めていくつもりであります! 執事でなく女主人に出くわした場合は、懐柔されたふりをして地下への扉を聞きだすことも考えているであります!
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