クリエイティブRPG

　某日、ゼストにてとあるイベントが開かれました。
　その名も、海上演劇。
　大型船一つをまるまる劇場に仕立て上げ、ギミックやアクション満載のお芝居をしようというのです。

　劇の内容はオーソドックスな、姫と王子のラブストーリー。
　姫と王子、それぞれの国は敵同士。望んでもいない戦が続く中、二人は出会い、そして恋に落ちました。
　戦いが終わったら、ゆっくりと二人で、静かに生きていこう。そう決めたのに、残酷な運命は二人を引き裂こうとしてきます。

　知ってしまったお互いの身分。静かに忍び寄る暗殺者の魔の手。何かと理由をこじつけて戦争を起こそうとする家臣たち。
　戦争を止めるため、愛する人のため、次々と襲う試練を乗り越えて、二人はついに、ある行動に出ました。

　――婚儀を執り行う！

　なんと、大胆にも互いの国民全体に向けて結婚を宣言。
　ゼストならではの、大海原での結婚式を舞台に、物語は一気に佳境へ。
　果たして、王子と姫の運命や如何に！？

　キャスト
　姫役　：　エミ　（リンクデバイサー・非武装）
　王子役：　ルード（シークレットオフィサー・非武装）
　兵士、大臣役：その他大勢とエキストラのみなさん

　……みたいな内容です。
　役者も舞台もコンディションは万全、のはずでしたが、世の中そんなに甘くありません。

　本番で待っていたのは観客の拍手と、演劇スタッフ驚愕のアクシデントです。

「……そういえば、出港してすぐに船底のほうで音がしなかったか？　硬いもの同士がこすれるような」
「ん？　一瞬揺れたなーとは思ったけど、音なんかしたか？」

「なあ、知ってるか？　最近このへんで不審船を見たそうだぜ」
「ああ、聞いた聞いた。なんかドクロの旗を掲げてるとかなんとか。特に被害報告はないみたいだけど」

　スタッフたちもこんな話題が上がったりしています。
　なんか、嫌な予感がしますねえ？

　発生するアクシデントを持ち前のスキルや仲間との連携で乗り切り、物語のハッピーエンドを無事に迎えましょう！

　これぞＲＰＧのサブイベントみたいなシナリオを目指してみました。初めまして、佐久間豊です。
　大前提として、観客たちは舞台となっている船から離れた海上で、観覧用に用意された数隻の大船の上から双眼鏡で見たり、マストに上ってオペラグラスで見たりしています。
　発生するであろうアクシデントは全部で三つ。

　１、船底の傷による船内の浸水。
　　　舞台スタッフにより発覚します。水の侵入スピードは大して速くなく、積み荷も少ないため、発覚から沈没までには実質二時間以上あります。放っておくと次第に船が傾き、舞台がぶち壊しになります。注意しましょう。
　２、不審船（海賊）の侵入。
　　　駆け出し海賊たちがやってきます。およそ十五人ほどの海賊で、スキル、防具はなし。大して強くありません。舞台の大型船を本気で王族が乗っている船だと思い込んでいます。役者ではなくホンモノのため、剣、斧を持って攻撃してきますので、ぶちのめしてあげましょう。
　３、海賊たちの襲撃による役者及びスタッフの不足
　　　大して強くはないといえど、武装をしていない役者や裏方のスタッフに多少の怪我人が出ると予想されます。主役二人は無傷となるでしょうが、脇役、裏方で不足が出ると、舞台が尻すぼみになりかねませんので、機材及び演劇に自信のある方の有志を募るかもしれません。

　なお、いかなるアクシデントにおいても観客はすべて演出だと思っているため、意図的に気付かせない限りパニックは起こりません。気付いているのは演劇スタッフとプレイヤーの皆様だけです。

　立場は観客、スタッフ、海賊でも歓迎です！　舞台がぶち壊しにならないように、皆様の見事な立ち回りをお願いいたします！