文明が滅んでしまった世界『ブランク』。
残された子供たち“スーベニア”が命がけで日々を生きる世界。
しかし、この世界は滅びの運命から逃れられない段階まで来ていました。
それでも
タクミたちが選択した答えは、今を生き長らえることではなく
「皆が生きている別の未来を作り上げる」というものでした
それを阻むため、
マリスはこの世界と
死後の世界“ヨミ”を繋ぎ
過去の文明を一夜にして半壊させた
超巨大ギガンティック『ジャガナタ』を復活させ
邪魔者だけを排除して世界を支配し直すと宣言。
更には必要な限り別世界でも実験を繰り返すと言います。
滅びゆく世界で、一筋の希望を作り出すための物語が動き始めました。
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コロニーに向かう道中。
タクミたちは現状を整理していました。
「とりあえず、マリスとジャガナタはぶっ飛ばすとして……
過去にプラーナを送って未来を作るためには
ランファがもらうはずだったロケットペンダントが必要なんだよな」
「確証ハアリマセンガ……ランファノ両親ホドノ技術シャナラ
恐ラクデキナクハナイカト」
タクミの発言に
ピュータが相槌を打ちます。
「ピュータって、まだ文明があった頃作られたの?」
「ソウミタイデシタ!
マリスノ制御ヲ振リ切ル時ニ色々オモイダシマシタヨ!」
宮澤 理香子の問いにピュータは嬉しそうに答えます。
どうやらこれまではピュータも記憶は定かではなかったようでした。
話を聞いていた
ランファのファミリアが低い声で喋ります。
『君たちの予想通り、あのロケットペンダントは
大量のプラーナを保有でき、一気に解放することも可能。
プラーナを過去に送り届けるには最適だろう』
「……なんで知っているの?」
ランファの問いに、ランファのファミリアは答えず前を見据えます。
『まずいな……あれを見たまえ』
前を見れば、テュポーンと子供たちがいました。
ですが、
子供と子供が戦っている姿も見え理香子は疑問の表情を浮かべます。
「ど、どういうことなんだろ?」
「タクミの意見に反対している子、だろうね。
未来で、別の自分たち含めて皆が助かる可能性より
今の自分達が少しでも長く生きられる選択をするのも、不思議じゃないよ」
理香子の疑問に一時的に復活した
トーマスが答えます。
「そうか。……でも、俺はこの選択をわかってもらいたい
だから皆の説得が必要だ。それにテュポーンの対応もいるな」
タクミの言葉に続いてランファが神妙な表情で喋ります。
「あと……過去のマリスに接触したほうがいいかもしれないわ。
あのマリスが何の対策もしてないとは思えない。
そう囁くのよ、私のファミリアが」
『何も囁いていないが……確かにその可能性は高い。
ではロケットペンダントを入手するためと、マリスに接触するため
2つのスポットが必要になるな』
ランファのファミリアの言葉の後にタクミは天へと叫びます。
「おい指導者、いや
シヴァ!
俺たちがどうなるか、見届けたいんだろう!
なら少しは手伝って、スポットの一つや二つくらいよこせ!」
「タクミ!? それは無茶ってもんでしょ!」
タクミがシヴァを利用することにトーマスは慌てますが
一行の目の前にスポットが二つ現れました。
「好きに使え」
たった一言、空から聞こえたシヴァの声はそれ以降聞こえなくなります。
「あのスポットを一瞬で……? プラーナに働きかけて作ったのか……?」
「一瞬だけど指導者を感じた時、あれは人ならざる者……そんな風に感じた。
これくらい出来ても不思議じゃないわ」
トーマスの的外れな答えの横で、ランファは震えます。
「俺たちは俺たちの選択を実現させるために動くだけだ」
タクミたちは話し合い、ランファはロケットペンダントの確保
理香子は過去のマリスに接触、トーマスはジャガナタの対応、ピュータは子供達のフォロー
そしてタクミは現世のマリスを倒すために動くことになりました。
□□□
コロニー。
トーマスとピュータは一度コロニーに来ていました。
そんな二人の前に、死んだはずの
エリー、そして生き残っていた
一つ目が現れました。
「新世界は私を見捨てていなかったようね?」
「やっぱりだスーベニア。最後に残るのは、オレたちなのさ」
二人の話しを聞いていたトーマスは首を振りました。
「……違うよ。誰かの犠牲で誰かが残る世界なんて、最高とは程遠い。
誰もが生きている世界の方が誰だっていい。
新世界なんて得体の知れないものよりも、よっぽどいい世界だ」
それを聞いたエリーは面食らったような表情をしました。
「な、なによそれ……まるで私たちがバカみたいじゃない」
「惑わされるな。俺はあのピオとかいうのを援護する、ここは任すぞ」
一つ目はエリーを置いてそのまま去ります。
トーマスは俯いたままのエリーの隙をついて一つ目を追いました。
「……勝った方が正しいのよ。私が勝てば私が正しい! それでいいのよ!」
テュポーンを操り無差別に子供を攻撃し始めたエリー。
ですが子供達もただやられるだけでなく、反撃を行い必死に生き残ろうとしています。
「セントウハ得意ジャナイデスガ、ヤムヲエマセン!
イクデスゼ!」
子供達の力になるべく、ピュータはエリーに向かっていきました。。
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コロニー周辺。
一つ目を追うトーマスに、レーザーのような光による攻撃がされます。
「前はよくやってくれたねぇ、トーマス?」
ジャガナタに乗った
ピオが笑いながらトーマスを見下します。
レーザーはトーマスだけでなく広範囲の大地を焼き焦がしていきます。
「無駄なことはやめるんだ!!」
「関係ないね。新世界とか、もうどうでもいい。
どうせもう死んでるんだ、もう何も怖くないよ!」
ジャガナタの一撃が大地を削り、ピオはまったく止まりませんでした。
■■■
過去、ランファの家周辺。
「……懐かしい気が、しないでもないわね」
隠れながらも自分の家をランファが見つめます。
『君の母親、ファランは中で眠っているはずだ。
だが父親であるラオシュンは研究所にいる』
「詳しいのね。……まあいいけど。
ならついでに聞きたいのだけど、ペンダントはどちらが?」
『母親だろう。悪い言い方をすれば、母親さえ守れれば問題はない』
ランファは考え込み、家の中へとゆっくりと入りました。
「そうかもしれないわね。未来は変わらない、パパとママも帰ってこない。
それでも、見殺しなんてごめんよ」
『ランファ……』
「ママを助けたら、パパのところへ行くわ。例え間に合わないとしても」
決意を顕わにするランファをよそに、暗殺の時間がゆっくりと近づいていました。
■■■
過去、????。
スポットを出た理香子は家の中にいました。
あたりを調べ地下への道があるのを見つけた理香子は
ゆっくりと地下へと向かいます。徐々に近づくにつれ、声が聞こえてきます。
「この声は、笑い声と悲鳴!?」
理香子は駆け出し地下室に入り込みます。
そこには、
大人の姿のマリスと様々な生物の死体が転がっていました。
「誰かしら? 宅配便が来る予定もないはずだけど」
「こんな酷いことを昔から……許せないよ!」
「あら、やる気なの? でも丁度いいわ。
この試作のバリアを試すいい機会ね。メロディアもきなさい」
呼ばれたメロディアはうつろな目をしています。
とても普通とは思えない状態です。
「ちょっと無理に改造しすぎたかしら?」
「いい加減にしなさいよ!」
理香子がマリスに攻撃しますが、途端に発生したバリアに弾き飛ばされ
逆に自分がダメージを負ってしまいます。
「メロディアの調整も兼ねてせいぜい飛び回ってね、可愛いモルモットちゃん」
■■■
現世と繋がった死後の世界“ヨミ”。
今や現世とヨミは至るところで繋がっていました。
タクミはそのうちの一つを通じて、
マリスがいる方向へと進み、
宙に浮かぶマリスを発見しました。
「よく私の場所がわかったわね。研ぎ澄まされた野性の勘ってやつかしら」
「そんなものに頼る必要もない。くせぇお前の匂いがぷんぷんするからなぁ!」
有無を言わさずマリスに殴りかかるタクミですが
その攻撃は完全に弾かれてしまいます。
「無駄よ。メロディアの体だから発動させるのに時間がかかったけれど
私のバリアは全てを弾き返す。あなたの一撃でもね」
跳ね返され、地面に着地したタクミがマリスを睨みます。
「それに……私がここで死んでも、死ぬのはメロディアだけよ。
私の意識も記憶は、今の私が死んだ時“過去に飛ぶ”ようにしてある。
過去の私が健在であれば何も怖くはないわ」
マリスの勝ち誇った声に、今度はタクミが笑います。
「何が可笑しいの?」
「……もし、過去のお前の一人に何かあったらどうなるかなと思ってな。
そんな複雑なことしてるなら、
一人おかしくなるだけで全部ヤバくなるんじゃないか?」
「……まさか、過去の私に!?」
マリスの言葉を続けさせず、タクミが炎を纏います。
「ケリをつけようぜ。
“俺たち”の力で必ず別の未来を作り出す!」
別の未来を作り出すため、己の力と
これまで共に戦い、支えてくれた仲間 -特異者- の力を信じて
滅びゆく世界での最後の戦いが始まります。