神判の世界、セフィロト。
神の怒りによって苦難の時代を迎えている世界。
しかし、真実は違いました。
創造された神である
アダム・カドモンの死、
つまり
神の不在こそが神判の原因だったのです。
神無き世界で悪魔は蠢き、
流血帝国は世界そのものを蝕んでいました。
神判を終わらせるためには
新たなアダム・カドモンを復活させることが必要です。
復活に必要な
十二聖遺物の大半はセフィロト教会に集まりました。
にも関わらず、状況は絶望的だったのです。
■□■
イーストキャピタル第15区。
「チッ、ここにも出現していたか!」
安坂銃太郎は悪態をつきながらも部下に指示を出し、
敵に攻撃を加えていました。
巨大な
レッドドラゴン。サタンの現身です。
空から逆さになって出現している悪魔の城
パンデモニウムが物質界に出現し地上に激突して以降、
イーストキャピタルや世界各地でレッドドラゴンが出現しているのです。
危険な状態になったキャピタルでは市民の避難が始まりました。
「問題は敵がこいつらだけじゃないってことだ。
……本当に、アダム・カドモンは復活するのかよ」
そういいながらも銃太郎は
今は戦うしかないという事を
良く分かっていたのです。
■□■
パンデモニウム基部、サタンの間。
『いずれここに
聖者たちが来よう。
その時こそ、お前が神人として復活を果たす時。
――そして、我と共にこの世界を捨て去る時だ』
奥戸星斗の姿をした
サタンの声が響きます。
ミンナはサタンを見据えて。
「そうか、この世界から逃げれば、私の事だって……★」
『そうだ、お前の元となった魂はオッサン――』
「言わないで下さいっ!!
私は、皆と一緒にいたかったんです。
セト君やギルバート君にチヤホヤされて、
星良ちゃんと仲良くして……
それで、皆が暮らすこの世界の神様になっても良かったんです☆
でも私は
「女の子になりたい♪」40代男性(既婚)の
成れの果てなんです★
もう、皆の前に顔見せなんてできません」
アダム・カドモンは天界を司る御前天使に創造された合成人間です。
その素材には人の魂が使われており、
その“出自”をミンナは思い出したのです。
『この世界は神を創造しなければ存続できない、脆弱な世界だ。
――そうした世界をこれ以上生かす意味などない。
何よりも、お前が犠牲になることはない、アダム・カドモンよ』
そしてこの二人のやり取りは何故か、
イーストキャピタル上空に大音声で写っていました。
■□■
キャピタル大聖堂。
「そんな理由でサタンの元に……」
聖騎士
ギルバートはミンナがサタンも元に向かった理由を知り、
驚きつつも攻撃体勢を崩す事は出来ませんでした。
目の前には多数の悪魔の軍勢がいたのです。
悪魔たちはパンデモニウムの出現により実体化し、
憑依元である魔人たちをエネルギーとしている強力な存在です。
そしてその中心には。
『実体化して暴れられるとは……興奮するねぇ』
悪魔アザゼルの姿がありました。
その背後には半透明になった
椚狂介
――かつてアザゼルと呼ばれた男の姿がありました。
『俺はいくら傷つこうと、狂介の魂を削れば癒される。
これこそ二人の友情だとは思わんか?』
■□■
そして、イーストキャピタルに迫る脅威は悪魔だけではありませんでした。
全長2キロの巨大な
“手”がキャピタルに迫っていたのです。
(眷属を合成して作り上げたこの“手”。
……陛下の御業としかいいようがない)
その中心部にいたのは
吸血騎士ソール。
ソドムの戦いで特異者たちに遅れをとったソールでしたが、
直後この手に来るよう、流血帝国皇帝のドラキュラに命じられたのです。
ソールの脳裏に
ドラキュラの声が響きました。
(面白いことになった。
アダム・カドモンは
エドワード・バーレットの魂から創られたようだな。
特異者にならずして
――いや、特異者の領域を超えてアバターと三千界の秘密に迫り、
三千界管理委員会に滅ぼされた偉大なる種族の継承者)
(そのような者がむざむざと天使どもに捕まるものなのでしょうか?)
(奇行でも知られるようではないか。
――ソールよ。聖遺物の奪還ができなかった今、
アダム・カドモンの力をそのまま我が物とする。
“手”を使い、
パンデモニウムごと余に献上せよ。
仮に失敗した場合でも一部始終を見てくるのだ。
アダム・カドモンが復活しようと
セフィロトではお前は最強の存在だ。)
(仰せのままに)
“手”はイーストキャピタル領内に入りました。
それに対抗するため教会最強である聖堂騎士団団長
ジェルトルーデや、
レジスタンスに所属する異世界の英傑
関羽が向かいました。
そしてホライゾンは
特異合体の使用を決断しました。
■□■
こうして、イーストキャピタルを舞台に
アダム・カドモン復活を巡った最後の戦が始まろうとしていました。
「マリチカもメルカバーに乗って、セトの所に向かわないと!」
「分かった。今は、神人復活を優先させないと」
マリチカは
奥戸星良と共に
パンデモニウムに向かおうとしていました。
二人とも十二聖遺物の聖者だったのです。
そして聖者は二人だけではありません。
「僕も向かわないといけないようだね」
「教王様、その格好!」
「僅かな時間だが、この姿でいれば“全力”を出す事もできる。
――ホライゾンの聖者諸君も頼む、神人を復活させてくれ!」
全裸に葉を一枚だけまとった姿は
教王エマヌエル二世その人でした。
そして決戦に向かって高揚した中、
一人頭を抱えている女性がいました。
「どうも怪しいのよね。
お父様が生きているような……」
ゴダムからやってきたエドワードの娘、
エミリアはミンナに違和感を感じていました。