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ワールドホライゾン

ゲームマスター
  • 伊勢 朗
    (いせ あきら)
  • 最終更新日:2021年10月28日
  • 作品数:4
  • シナリオ一覧

プロフィール

プロフィールをご覧くださり、誠にありがとうございます。
伊勢 朗(いせ あきら)と申します。

こちらでは、執筆方針と今後の予定についてお知らせ致します。


■執筆方針について
・アドリブを入れることが多いので、不要の場合は一言いただけますと幸いです。

・他のMC様やLC様との会話、協力等が発生する場合がございます。
 お手数ですが、こちらも不要の際は一言いただけますと幸いです。

・登場シーンが分散する場合がございます。申し訳ありませんが、ご了承くださいませ。


■今後の執筆予定
・未定です。冬の間に1つか2つは出せれば、と思っています。


■『ひび割れた水面の声』後語り

ここではプライベートシナリオ『ひび割れた水面の声』の設定について記します。
まず最初に、シナリオに登場した遺産について。
次に、遺産の持ち主であった人物について。
最後に、各パートのテルリカについてです。
少し煩雑な文章となっており申し訳ございませんが、よろしければお付き合いくださいませ。


□遺産について

・遺産の概要
 東オデッサの保守派が発見した遺産。発見者がつけた名前は「テルリカ」。
 透き通った琥珀色をしていて、鉱物のような質感。外見はテントウムシに似ている。
 知的生命体へ接触すると、液状化してその体内へと入り、脳に住み着く。そして、その宿主とした者の情報を取得後、自らの複製を数体生み出す。複製体は、宿主とした生命体を完璧に――外見だけでなく人格も――模倣する。

 複製体同士および宿主は、情報を共有できる。これにより、テルリカを所持した者は、常人よりも多くの情報を収集・処理できるようになる。
 ただし、常に複数人分の情報を扱うことになるため脳への負荷は大きく、人格を喪失することも少なくない。酷い場合は、負荷に耐えきれず死亡する。
 宿主の生命活動が停止すると、テルリカ本体は再び液状化し体外へ出る。同時に、複製体も虫の姿へと戻り、本体へ合流後に吸収される。また、複製体は人に模倣した状態で死亡した際にも虫の姿へ戻り、本体の元へ帰る。


・遺産の目的
 宿主も含めた、知的生命体の情報収集。収集した後にどうする、ということはない。芸術品をコレクションするかのように、集め蓄えること。これこそがテルリカの機能であり、目的となる。
 複製体を生み出し宿主を模倣するのも、人として生活することで得られる経験や知識を求めてのことである。目的を果たすため、自ら宿主を求めて動き続ける自律型の遺産。


・遺産を手放す方法
 概要に記した通り、基本的には宿主の死亡が条件となるが、生きながらに手放すことも可能。その場合の条件は以下の二つ。
 1.宿主が全ての複製体を回収し「テルリカを手放す」明確な意思を示すこと。
 2.テルリカと一定の歳月を共にし、意思疎通を図れるようになった上で、宿主が遺産を手放すことに、遺産テルリカが同意すること。

 方法が意外にも簡単なのは、遺産テルリカの在り方が「寄生」ではなく「共生」であるため。ただ、共生できるのは、飽くまで適性を持つ者だけである。そうでない者は、テルリカが脳に住み着いて間もなく、複製体から絶えず流れ込む情報量に耐えきれず廃人となるか、死亡する。


・遺産の問題点
 1.言語や感情を有する知的生命体しか宿主になれない。
 2.宿主から取得する情報に、欠落や矛盾があるとエラーが発生し、正常に機能しなくなる。その場合、テルリカは情報の欠落や矛盾を解消するために大量の複製体を生み出し、周囲の知的生命体へ寄生して必要な情報を取得後、本体及び複製体同士で補完し合う。その際に何らかの矛盾が生じると、辻褄が合うよう互いの情報を修正、もしくは消去を試みる。結果、エラーを直そうとする程に欠落や矛盾が生まれ、最終的に破綻をきたす。
 3.共有する情報には感覚なども含まれる――つまり痛覚の共有なども起こるので、戦闘には不向き。複製体が重傷を負った場合、宿主がショック死することもざら。
 4.直に触れたものを、問答無用で宿主にする。なので取り扱うときは、手袋をつけたり布で包んだりして、間違っても肌に触れないよう細心の注意を払う必要がある。また、液状化して逃げ出す可能性もあるため、保管の際は気密性の高い容器に入れなければならない。

 以上からも分かる通り、割と厄介な遺産。与える人物と使うべき状況さえ見極めれば大きなアドバンテージを生み出すが、「いつ遣い手の精神が壊れるか分からない」という懸念がある。そして、負荷に耐えられる適性者を見つけ出すまでの手間と犠牲を考えると、実用的とは言い難い。


□テルリカと名乗っていた少年について
 本名、ボリス・チェーホフ。
 オデッサ連邦の時代に、代々軍人の家系であるチェーホフ家の、双子の長男として生まれた。
 幼少期に描いた絵を両親に褒められたことが原体験となり、画家を志すようになる。
 青年期には、美術学校への進学を希望していたが断念。というのも、父親が息子のどちらかを軍人にすることを望んだからだ。自分が拒否すれば、弟が軍人の道を歩むことになる。それを防ぐための選択だった。
 弟との仲は特別良かった訳ではない。むしろ疎ましく思ってさえいた。
 兄ボリスは、聞き分けは良いが内向的で寡黙。弟イヴァンは、聞き分けはないものの外向的で多弁。絵を描くのが好きなこと以外は、まるで正反対な二人だった。
 自然と人が集まってくるのは、弟イヴァンの方だった。きっと社会に出て成功するのは、ああいう人物なのだろうと、ボリスは思っていた。自分より弟の方が絵の才があるとも。口に出して伝えたことは一度もなかったが、彼はずっとそう考えていた。

 ボリスが父の意向に沿い軍学校へ入ることを決めると、弟イヴァンは「進路まで父の言いなりなんて、詰まらなくないのか」と言った。ボリスはこれに激怒し、弟を殴る。しかし軍学校へ入る理由については一切話さなかった。
 この時、弟イヴァンは兄に失望する。自分よりも才能のある人間が、親の言葉程度で絵を諦めるなんて、と。イヴァンは美術学校へ進学後、まもなくして家を出た。

 軍学校へ入ったボリスは、自由時間には友人の似顔絵を描くなどして過ごしていた。この頃、彼はとある青年と出会う。青年の父親は、当時の前衛芸術運動の一翼を担う人物だった。ボリスは彼の家を訪ねた際に、その父親から何度か指導を受けたという。
 彼は友人の父に絵を褒められた際、こう答えた。
 「画家の道へ進んだのは、弟の方です。今では僕よりも上手いと思いますよ。センスも、あいつの方がずっと良かったですから」
 その弟イヴァンはと言えば、美術学校卒業後は連絡もなく、行方が分からなくなっていた。

 ボリスは学校を卒業後、軍の情報部へ入る。能力はお世辞にも優秀とは言えず、昇進も遅く、父親には幾度も叱責を受けた。それでも彼は、懸命に努力した。それは軍に忠誠を誓っていたからでも、保守派の考えに賛同していたからでもない。ただ、認めてもらうためだった。父との仲は悪かったが、家族として大切には思っていた。

 だが、それも内戦が激化するまでである。内戦の激化後、ボリスは戦争兵器としてムーンチャイルドにされた。父親は「出来の悪い息子もこれで国に貢献できる」と喜んだらしい。母親は悲しみはしたが、息子が兵器にされるのを止めようとはしなかった。
 ムーンチャイルドとなって以後、ボリスは両親と口を利かなくなる。
 皮肉なことに、ボリスはムーンチャイルドとしては優秀で、魔素の扱いに長けており、能力行使による脳へかかる負荷への耐性も並外れていた。おかげで何度も最前線に投入されることとなる。そんな時だった。倒した革新派の兵の中に、自分の弟を見つけたのは。

 目の前に横たわる現実に打ちのめされた彼は、神経衰弱と診断され、軍病院へ入院。そして入院中、オデッサ連邦を東西に分断する壁が出現、停戦状態となった。
 退院後、ボリスは軍から除隊する。兵器であるにもかかわらず病院へ搬送されたこと、そして何の問題もなく除隊できたのは、父親が手を回したからである。しかしボリスはそのことを知らず、家にも戻らなかった。彼は各地を彷徨い職を転々とし、最後には教会で聖職者となる。

聖職者となった彼は、戦争で傷ついた人々の悩みに耳を傾け、孤児を保護し、教育も施す人格者だったと言う。
 当時を知る人物たちによれば、教会で働くボリスは、人が変わったように明るく多弁だったらしい。そして諭すことはあっても、怒ることは一度もなかった。彼は悩み苦しむ人々に、いつもこう語っていたという。
 「誰もが弱き心を持っています。そして多くの場合、その心を変えようとする。何にも動じず、揺らぐことのない、鋼のような心へと。
 ですが、それは戦うための強さです。争いに勝つための心です。私はそれが、良いことだとはどうしても思えない。だから、弱き心のまま世界と向き合う術を探すことに、一生を捧げると誓いました。震える足で一歩を踏み出せる人物になれるように。そうすれば、きっと少しは人々に手を差し伸べられるようになるのではないかと。まあ、理想論ではありますがね」

 しかし、ボリスが平和主義者の立場をとり人望を集めることは、東側にとっては不都合だった。彼の父親が病で亡くなり、母親もあとを追うようにこの世を去ると、彼は保安局に拘束される。そして東側の、遺産を研究する機関によって『テルリカ』の実験体となった。
 それは目障りな人物の排除と、発見したばかりの遺産の分析を兼ねたものだった。

 彼らの誤算は二つ。
 一つは、ボリスが遺産テルリカに適性があったこと。
 もう一つは、ボリスが記憶障害を引き起こしていたこと。職を転々している時には、既に彼は家族や自らに関する幾つかの記憶を失っていた。そして、それは遺産テルリカにも影響を及ぼすこととなる。

 前述した遺産の項にある通り、テルリカは選んだ宿主の情報に欠落や矛盾が合った場合、エラーが発生し、それを修復するために大量の複製体を生み出し、周囲の人間へ寄生させる。
 そしてこの時、周囲にいたのは東側の遺産研究者たちだった。その数、47人。
 結果、テルリカの複製体に寄生された研究者たちは、脳にかかる負荷に耐え切れず死亡。そして各複製体は、自らが寄生した人物から得た記憶で、宿主の欠けている情報を互いに補完しようとした。
 だが、各複製体のもたらした記憶の齟齬により再びエラーが発生。互いが互いの記憶の相違点をバグとして認識し、修正のために干渉し合う。もちろん、宿主であるボリスに対しても例外ではなかった。
 こうして記憶は混濁し、大半は自分が何者かすら分からなくなった。名前さえも不確かな彼らは、その場に落ちていた資料から、共通の名前を得る。『テルリカ』、そう名乗るようになった。

 実験室から出ると、テルリカたちは記憶を完全なものとするため各地に散らばった。それが遺産本来の目的である情報収集のためか、それともボリスの思い出したいと言う願いを受けてのものかはわからない。
 本来、ボリスの記憶障害は時と共に治るはずだった。しかしテルリカによって引き起こされた状況により、それも不可能となった。複製体が各地で手に入れてくる記憶と、自身が思い出した本当の記憶。それらが混じり合ったせいで、何が真実かわからなくなってしまったのだ。
 長い歳月を過ごす中で、ボリスは記憶をあきらめる。なんとなく、思い出さなくても良い気がしたから。思い出したところで、意味がない気がしたから。
 自分が何者か分からずとも、弟の記憶がなくとも、彼は自然と絵筆を握るようになった。手は日々、忙しくなくキャンバスの上を駆けていく。絵の中に、色の中に、誰かの影を探し求めるかのように。
 それは、まだ彼が何者でもなく、何者かだった時の残滓。
 もう思い出せない、在りし日の色彩だった。


□各パートのテルリカについて


・パート1、酔っ払いテルリカ
 このパートのテルリカは、最も記憶に混乱をきたしているテルリカでした。
 その代わりに、自分以外のテルリカの記憶を最も多く保持しています。
 囮役のエージェントが二人になったのを見て、保安局が執拗に追いかけたのは、遺産の宿主が変わった可能性を考慮してのものでした。


・パート2、聖職者のテルリカ
 このパートのテルリカは、自身が遺産であることを覚えているテルリカでした。
 東西を分断する壁は、複製体同士の情報共有をほぼ遮断しています。
 彼が西側にいる理由の一つは、これでした。記憶をなるべく正常なまま保持するために、他の複製体からの干渉を減らすこと。もう一つの理由は、他の複製体を回収することで、自分の記憶にない『遺産本来の姿へ戻り、宿主と別れる方法』を見つけ出すこと。


・パート3、少年のテルリカ
 このパートのテルリカは、遺産の宿主であるボリスその人です。
 遺産の項に記した通り、テルリカ本体は彼の頭の中にありました。
 自身に関する記憶を幾らか失っているボリスですが、テルリカ本体と意思疎通が図れることもあり、遺産の扱い方や能力については良く知っています。
 それと余談になりますが、最初の方に出てきた老婆は、ボリスと友人だった青年の妹です。
 つまり、ボリスの実年齢もそれくらいです。
 時折、妙に説教くさいのはそのせいかもしれません。


 以上になります。これにて『ひび割れた水面の声』はお終いです。
 当シナリオにお付き合いくださった皆様には、心より御礼申し上げます。