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ゲームマスター
  • 日下智
    (くさかさとし)
  • 最終更新日:2020年10月09日
  • 作品数:2
  • シナリオ一覧

プロフィール

<NEW! 10/9更新>

 おそらく、ほぼほぼ全ての方に初めまして。
 日下智(くさか さとし)と申します。
 クレギオン復活と聞いて、恥ずかしながらまた、この星々の世界に還って参りました。
 どうぞよろしゅうに。

『ニブノス人はフラードルへバカンスに行くとまず太陽を写真に撮る』
 あるいは、
『大戦の影響により、葬送の習慣さえ変更を余儀なくされた』
 小説版のこういうセンテンス回しにSFを感じる方、ぜひご来駕をお待ちしております!

 歴史と生活感あふれる宇宙で、センスオブワンダーの旅を分かち合いましょう! 

*****

 以下には、小輩のリアクションにかかるフレーバーテキストなどを逐次掲出していきたいと思います。
 なお、描出の諸々は<一面の真実>に過ぎず、視点によっては真逆の見解もあり得ます。
 クレギオン宇宙公式は無論のこと、今季作中の他マスターの描かれるところ、そして更には小輩の今後のリアクションにおいてすら<確定的事実>ではありませんので、そのあたり特にご注意ください。
(まあ、風味です。意図的にミスリードするようなことをする積りはありませんし、ましてアクションにここに書かれたことの知識を要求するなどはあり得ません。拾って頂けたら嬉しい部分はありますが、実際のリアクション作成に際しては全体の物語的流れや各PCの心情などのほうが優先されるでしょう。ぶっちゃけ、皆さんのアクションによってはここの記述が変わることさえありますw そして……小輩は単なる文系乱読家なので、見る方が見たら噴飯ものの記述も多々あると思います。大目に見て下されww)


<10/9更新分>

■ Toward The Star 第3章 <後継者>たち OPテーマ(ぇ

 いよいよ佳境(にしたい)ですので、ここで一つでっち上げてみました。
 某宇宙物アニメ(初代)の節回しでどうぞ。

*****

1 : 歴史の影に、誰知らず
  忘れ去られし、この邦は
  寄りて来たりし、人々の
  生きるさま見て、覚まされた

  我ら、君と

  寄りて集いし諸人は、
 <不明>の中に眩みつつ、
  行くべき路を迷いも啓く
  will love you tomorrow?
  瞑を払いつ伸び行く先に
  曙光の兆す日はいつか

  我ら、君と
  共に


2 : 無明の闇に、唯ひとり
  埋もれ眠りし、<遺言>は
  果てに群らなす、我々に
  後を頼むと、託された

  我ら、君と

  千古の刻と万光年
  彼方の星は待ち居ると
  かそけき声は告げつつ消える
  will love me tomorrow?
  今を生き行く、この地の我ら
  縁なき過去に、応えるか?

  我ら、君と
  共に

*****

 お粗末さまでした。



■ アーバイト級戦時標準船:

 ライアー帝国が87年戦役時に、拡大する戦線、続発する戦没に払底する船腹を補うため、とにかく生産性のみを最優先に設計、大量就役させたもの。性能的に一般商船よりかなり低いのは確かだが、それでも用に供しえる程度の水準ではある。この船級の最大の特徴は何よりもその量産性にあり、完全にラインに乗った場合、工期は同クラス通常商船の3割程度にまで圧縮できるとされた。ただ、その数字は様々な面で冗長度を極限まで犠牲にしてのものであり、基礎設計もさることながら、現場での品質管理においてもとにかく工数を省略することだけが最優先された結果、深甚な事故が多発した。
(兵站管理部門においては、重要物資はアーバイト級に積むな、という通達がなされたほどであった)
 特に初期型は肋材の構造に問題があり、衛星等の周回軌道に駐船するだけで潮汐力により折損・座屈する例が頻出し、『前線に出たほうがマシ』とか『まさか母港で、しかも攻撃も受けてないのに死ぬ羽目になるとは』等と散々に罵倒されもしたという。
(その中で言うなら、準恒星テュケーの静止軌道上にあり、かなりの潮汐力のかかるキャステロ・シティ近傍にあって10年以上も持っている<ファーターラント>はかなりのアタリであると言える。)
 ただ、それでも帝国兵站局の評価においては、該級船の喪失およびそれに伴う兵站上のロスを考慮しても、本級就役による受益のほうが上回るとされ、終戦まで(ある程度設計や工程の改善はされたものの)製造は継続された。
 そのような経緯により、とにかく膨大な量が生産されたが、戦後においては急速に退役させられ、戦没なり事故なりで喪失しなかったものでも船暦10年を越えたものは稀とされる(維持するよりスクラップにしたほうが経済的、とまで言われた。特に「敢えて運用を継続することによって、人にかかる費用の増大を考えれば」という観点において。いかに彼の帝国でも、平時においても人間の価値は、相対的にであれ建前であれ、ある程度は尊重されねばならないのだ)。
 故に、残存するものは製造量の割には少ない。その点でもかの船は、けっこう特例的な存在であると言えよう。

タイプシップ: いわずと知れたリバティ級だが、よりにもよってライアーでまさか「リバティ」でもあるまい、ということで「労働は自由にする」にちなみ<アーバイト>級である。実際、結構な確率で、人生から自由になれること請け合い。



<9/29更新分>


■ 深宇宙航路とナビゲイター

 この宇宙で一般的な超光速航法、ジャンプドライブとは、高次元空間への出入りにより里程をショートカットする技術である。しかし、この短縮は実に1回のジャンプあたり100天文単位程度。通常空間を移動することに比べれば大きいが、さりとて星間の膨大な空漠に比すれば微々たるものでしかない。
 そこで、1回ではなく、このジャンプを連続して行うことで距離を稼ぐ。現代では条件次第で1分に1回程度の割合で繰り返せるのでトータルすれば日速2~4光年ぐらいの巡航速度が出せるというわけだ。
 だが、問題は、この跳躍がどこでもできるわけではない、ということだ。
 まず、第一に大規模重力源より十分に離れていなければならない。これは大前提。おおむね、質量にもよるが恒星で10AUといったところか。そのため、恒星系内では通常空間を比較的のろのろと移動するしかない。
 その上でなお、たとえフラットな深宇宙であっても、高次空間へ出入りができる場所は極めて限られている。重力、磁力、その他様々な空間的環境条件に左右されるのだ。従って、ジャンプドライブを実用的に使うには、出発地と目的地の間でこのジャンプ可能空間の分布を調べ、一筆書きのようにジャンプ可能点をつないでいく必要がある。
 幸いに、この高次空間は恒星などの大質量と大質量、高エネルギー源をつなぐ線上に分布しやすい傾向があり、星と星の間を移動する人類にとってそれは都合のいいことではあったが、それもあくまで傾向に過ぎず、実用にはポイント・ルートレベルでの特定作業が必須となる。
 例えればこれは、ぼろぼろの網目の糸を一本一本たどって、切れていたら分岐点まで引き返して他のルートを探る、そんな感じの恐ろしく地道な作業を経て、ようやく確立されるチャートとなる。これが広義の「航路」だ。
 とはいえ、いちいちこんなポイント・トゥ・ポイントをやっていては捗らないし、この空間は割合に不安定なので、確認された「航路」をマーカーブイやデブリ除去装置、高次空間を安定させるフィールド発生器などの機能を持つ支援設備で固定・整形する。これが狭義の航路、1級とか2級とかグレードされている星図上の航路はこっちで、一般に言うところのものでもある。
 当然ながらそのようなインフラ整備と維持にはたいへんなコストがかかる。それに、整備しなければジャンプできないというわけでもない(効率は悪い。最大でも整備航路上の10分の1ぐらいの速度になる)。
 そこで、辺境においては設備のない(地図上にない)「航路」の使用が専らとなるのだが、先にも述べたようにこの「航路」は発見にも手間がかかるが、その後の環境変化で容易に切れたり繋がったりしてしまう。まあ、多くの船が利用するような航路は比較的安定したルートが選定されるし、どうも往来の重複による履歴効果的なものもあるらしく、主要拠点間のそれであれば、ちゃんと設備や技能を備えた船なら個船単位の探査能力でもそんなに心配ないレベルにはなるのだが。
 しかし、程度問題。往来の少ない航路、しかも、深宇宙の恒星無き宇宙の奥の細道はそうも行かない。多岐亡羊の中にかそけきも消えて行く航路を見定めるのは一々大変なことなのだ。もちろん、そんな状況下でも、軍艦等ならば作戦行動の必要性によって射出探査体(プローヴ)の往復で強引に「航路」をこじ開けて(探索・発見しつつ)進んでしまう。これをハイパーサーチというのだが、民間でそんな悠長で金のかかる(プローヴは極微量ながらテルモナイトを消費する)ことはやってられない。ではどうするかというと……土地勘(空間的環境)に通じ、効率的な「航路」発見に特技を持つ職能集団、ナビゲーターという存在が水先案内を行うのである。
 但し、一口にナビゲーターといっても、色々なタイプがあり、純粋に経験と知識、演算能力によってこれを行う例もあれば、何らかの異能的力でもって行うものなど、千差万別である。世情に知られる例では、前者の例は(パイロット作業の対象は航路ではないが)かつて存在した<ヴェイス機雷源>のナビゲーター、後者としては(これも、もはやそういう職能は果たしていないが、能力的な系統としては)ネトヘスの星読みの巫女などがあげられる。



■ 深宇宙・ライアールート

 NF58とアレイダの境付近にあるフォルク・レーテ要塞に端を発し、メネディアとアラコスの間を抜け、レバーナ、バールスラント、そしてグレイバールの脇を掠めて遠くメルトリーグの方向にまで伸びる軍事航路である。
 しかし、その実態は、航路と呼ぶにはいささかならず心許ない。

 連合条約世界における航路とは、第一義的には連続的なジャンプ移動を可能とする高次元空間の連なりのことを指す。
 この宇宙で一般的な超光速航法は、僅か100AU程度の短距離ジャンプを繰り返すことで行われるものであり、それをスムーズに実施するためにはあらかじめ、そうしやすい空間構造をもつひと連なりのルートを把握しておく必要がある。
 実は、短いスパンでいえば、このジャンプ可能な空間構造というものはそれほど稀というわけではない。
 しかし、それが出発地から目的地に至るまで、何光年にも連続して続いているというのはそうそうあることではない。
 まあ、実はこのジャンプルートは、恒星と恒星をつなぐラインや銀河系の重力・磁力のラインと無関係ではないため、さがすのにも一定の法則性があるし、ことに恒星間をつなぐ傾向は基本、太陽系に住まう我々にとって都合のいいことではある。
 しかしながら、それでも全ての恒星間をつないでいるわけもなく、また実用的な航路を確保するためには実際に膨大な観測調査を行ってそれを同定せねばならないのだ。
 これは例えて言うならぼろぼろの網の一方の端から、糸目の一つ一つを実際に指先でたどりつつ、切れ目に行きついたら前の分岐まで戻ってはやり直しを繰り返してもう一方の端まで一筆書きを完遂するような、そういう地道な作業である。
 こんなわけで、確立された航路は、恒星間文明の極めて重要なインフラとなる。いや、むしろ、航路あって文明ができる、とすらいえる。
 実際、この宇宙の植民はまず、航路の有無を調査して、しかる後に航路の確保できる星々に植民地を開く、という手順なのである。
 つまり、宙域図にあるのはそういった星々で、実は存在するが航路設定が困難なために放置されている太陽系も多いのだ。
(幸いなことに、そういったたどり着き難い星/亜光速航法は無論、フォールドならたどり着けないわけではない/の多くは低質量かつ不安定な赤色・褐色矮星などの開発価値の低い恒星で、地球型惑星を伴うようなG,K型の主系列星などはほぼ確実に航路設定できているが。)

 そんなわけで、貴重な航路にはその維持のために様々なインフラが施される。
 せっかく発見された航路ではあるが、そのままにしておくと恒星の固有運動や銀河地場の変動、その他諸々の理由により諸元が変化し、途切れてしまうことがある。
 なので、普通せっかく発見された航路には投資が為され、マーカーブイの設置は無論のこと、航路を保護し安定化するフィールドのジェネレーターなどが配置される。
 これにより航路の維持確保もできるし、ある程度は航路の線形を矯正することすらできてしまうのだ。
 連合条約世界における1~4級を付された航路はすべてこれで、その投資の程度により水準に差はあるが発見された天然の経路を、人の手によって維持確保している。
 これが狭義の、単純な現象としてのそれではなく、社会的意味における航路なのである。

 そして、その伝で言えば、ライアールートとは実は広義の航路、すなわち、発見された時のまま。
 自国領域外どころか、敵対国の軒先をかすめる軍事目的<航路>であってみれば当然のことで、そのような整備ができようはずもない。
 ゆえにこの<航路>は要は観測結果のデータベースに過ぎず、しかも何ら保全が行われていないので信頼性も今一つになる。
 無論、常時、情報更新の努力は続けられているが、逆に言うといつも変動しており安定しない。
(俯瞰して見ると一本の線ではなく、無数の枝毛が生えた、ほつれた縄のように見え、しかもそのほつれは現在進行形で変動している、そんな感じになる。ましてこれは通常の航路と異なり恒星間航路ではないため、なお安定性が低い)
 よって、浸透作戦程度には使用できるが、大規模な兵站確保などには限界があるのである。
(その程度だからこそ、57勢力の殲滅的攻撃対象にまではなって無いとも言える。)
 ただ、それだけでも友好勢力に乏しいライアーにとっては極めて有用であり、膨大な努力を費やしつつも維持されているのである。



■ グリルド・マン

 フラフープの維持作業者の別称

「幾ら熾火みたいなもんとは言え太陽の名残には違いない。上層大気すれすれを経由するスクープ採掘は無論のこと、輪の採鉱だって過酷な環境すぎて基本は<リング>任せの無人自動なんだが、それでも、最低限のメンテナンスは必要性なわけで……ワシらみたいなのが重環境スーツで降りてくんだが、そらもう、輻射線は言うに及ばず、磁場電場、ともかく酷いもんでな。オーブンだか電子レンジだか良く分からん中で炙られる俺らを、誰が言ったか<グリルド・マン>よ」

 太陽面近くで作業するので、弱火でじっくり炙られる、という例え。
 ちみちむちむにーちむちむにー。
 搬器や索道にこびりついたダストを掃除する。
 大体は、鉄である。対流で噴出した鉄が表層で冷え、ダストになる。
 テュケーは割りに安定してるからそうはないのだが、たまに弱いフレア的湧昇流で低軌道まで来るのもある。
 なお、鉄以外にもアルカリ金属類は大体何らかの塩で析出する。高圧や溶融、減圧、冷却の過程でなかなか面白い風合いの混合物ができるようだ。



■ 仮装?巡洋艦:


「仮装巡洋艦はロマン!」
「ルックナー伯が助走付けて殴りに来るレベル」
「何ィ! キサマ、押川春浪先生をバカにするかぁ!」

     → 要は、<ロマン>のアクシオムが違う。

  * * *

 大本はライアーの防護巡洋艦<イーベンチュアー>
 3880年頃、既に旧式化のため用廃船扱いであったが、87戦役中に不足する護衛艦艇の補填として再就役。ニブノスまで進出したが、そこで機関不良のため行動不能となり、ダレスシティ沖に繋留されたまま終戦を迎えた。
 その後、ニブノス軍により繋留練習艦として使用する計画もあったが、あまりに旧式すぎてそのままハルクに。
 98戦役後に遂にスクラップとして売却されたものの、回航中に事故により座礁。全損放棄となった。
 ※なお、1年ほどの後、事故箇所を通過した船舶に拠れば既に残骸もなく、デブリ状況等からして浮遊天体との衝突などにより何処かへ流出したものと思われる。

(竣工時の武装) 主砲 45cal/class6単装レーザー砲×8、076フラムガン×4 45型 単発式機動爆雷投射器×3

 防護巡洋艦: 限定的な防御力を持つ軽快艦艇。軽巡洋艦の前身とも言え、艦格、武装、防御などの点で類似するが、主力艦と軽快艦艇の速力差が今ほどには無かった時代の存在であり、運用はかなり違う。
 基本は単独もしくは小戦隊による護衛任務や海賊掃討、植民地警備や連絡任務などに使用され、後世の軽巡のような艦隊戦における補助戦力としての色彩は比較的薄い。
 これは大型艦との速力差が小さいため、襲撃行動を執ると射点までに漸減されてしまう可能性が高かったためであり、その種運用が一般化するには通常推進機関の改良により軽質量艦艇の機動力が飛躍的に向上するのを待つ必要があった。
 そして、船で最も金のかかる主機関を換装してまで旧式艦を使用する意味は薄く、PCはすべて用廃され、軽巡に置き換えられることとなった。

◇タイプシップ: 元ネタは名の通り。あと、運命的にはムルマンスク(スヴェルトロフ級)とか、オレゴンとか沖島とか。あと、戦前冒険小説版「畝傍」。 



■ 機動特火点:

 現地では<海賊駆逐艦(海賊を駆逐する艦)>等とも呼称されているが、有体に言って<艦>とは言い難い代物である。
 端的に表現するなら、こうなるだろう。<浮砲台>と。ただ、それなりに……いや、けっこう、動きはするのだが。

 元々、連合条約というのは惑星や軌道都市などの定住拠点、脆弱目標への経宙脅威を酷く怖れる体制である。
 これは、CDCO戦争期の経験によってほぼ人類のトラウマと言っていいほどに刷り込まれた概念であり、結果、その都市の殆どが重力井戸の奥底、可能なら惑星地表に固執して系外からの脅威に縦深を確保したがるのはその現れの一つであるが、もう一つの例として、防宙戦力への傾倒というものもある。
 まずもってこの宇宙の諸都市には、対宙戦力がほぼ必ず設置されている。それこそ、どんな田舎でも、機動戦力(戦闘艦など)をまったく持たないようなところでも、植民開始のごく早期から、である。
 ただし、これら基本的な対宙戦力の用途は、必ずしも戦闘ばかりではない。隕石やデブリ対策用でもあり、あと、割りによくあるのだが、都市などへアプローチ中の宇宙船が何らかの理由で減速不能になった場合など、これを速やかかつ確実に排除するためでもある。
 ただ、これらの用途においても、結局は大威力長射程、かつ即応性も要するため、対艦戦闘にも使えなくは無い。そういった位置づけのものである。
 あくまで拠点防衛用なので、航宙能力は必須ではないということと、その一方で探知・即応/照準能力および射程威力は高度なものが必要。
 特に後者、高い分解能を持つ探知システム、高出力高収束度の砲、高速照準可能な砲架システム、大出力のエネルギー源。全部、大型化する。また、固定化しておいた方が射撃データ等の点でも有利である。
 これらを満たす一番リーズナブルな解、それが大型の固定砲台であり、この宇宙の多くの場所でまず設置されている防御戦力とは、これのことなのである。

 とはいえ、限界はある。
 この方式で対応できる外敵は、せいぜいがテロ、もしくは海賊ぐらいまでだ。
 国家レベルの組織的侵攻や、飽和攻撃には対応できない(高威力長射程は、大抵の場合速射性とは背反する要素である)。多数配備すれば、と言うかもしれないが、そんなことをするぐらいなら艦隊戦力を整備して系外へ前進防御したほうがマシであるし、運用上の柔軟性も高い。そういう固定重畳防御を出来るのは何らかのチョークポイントか要塞地帯ぐらいだろうか。
(あと、言えば、都市レベルとしては、そういう組織的侵攻を行えるような相手なら、無防備宣言というオプションもある。)
 そういったわけで、植民初期に整備されたこれら防御戦力は、領域国家の形成と艦隊戦力の整備に伴い余剰化する場合も多く、型落ちのそれがだんだん辺境に転売されるというのもままあることなのである。

 ある、が……それら払い下げ砲台の中でも、特級の変り種が、この<機動特火点>になる。
 これらは、深宇宙、あるいはその文化の色濃いところにしか存在しない特殊艦艇だ。
 原型は確かに、これまで論述してきた砲台の内、都市などの据付でなく独立した砲郭を有するタイプのものであるが、通常これらは自航能力はなく、あってもせいぜいが姿勢もしくは位置変更能力くらいである。
 しかし、この<機動特火点>においては、むろん到底艦隊砲雷撃戦に耐え得るレベルではないが、一応系内作戦的に意味があるレベルでの移動能力がある(その分、設備による支援が低下するので射撃管制能力や継戦能力はがた落ちだが)。
 なんで、そんな改造をされているかというと……単純に予備戦力が無いからである。要は、虎の子の高出力砲を複数箇所で使い廻ししたい、という欲求(というか懐事情というか)から産まれたものなのだ。
 とはいえ、それだけでは意味が無い。動けようが鈍足なのだ。拠点間をのたのた動いている間に虻蜂取らずに終わるのが関の山。
 そこで、もう一捻り。なんと、これら機動特火点は、ジャンプドライブも装備しているのだ!
 深宇宙で、と、但しが付く所以である。拠点がそもそも重力井戸の底にない深宇宙であれば、拠点間をジャンプ移動することで貴重な火力を使い回せる、というアイデアである。
 ……まあ、船内容積は更に圧迫され、砲とドライブ以外何も入って無いような按配になるが。射撃管制は直視照準レベルだし、弾もカートリッジタイプの砲側配置分のみ。当然、防御力なんて0、である。
 でも、そこを砲射程と運用で何とかしてしまうのだ。彼ら深宇宙民は、地元宇宙の高次元空間状況を熟知しており、それは到底、既知航路頼りの外来勢力の及ぶところではない。そこを利用して、ポイント・トゥ・ポイントでジャンプしながら狙点を定め、時に隠匿ポイントで補給も済ませる。
 これが機動特火点であり、地の利と運用の宜しきを得たこれに晒されれば、先進星区の艦隊ですらそれなりの損害を覚悟せねばならないと言う(火力だけなら、戦艦にだって大損害を与えることは不可能ではない。良い所に当て、られれば、だが)。
 そういう、実にニッチで特殊な戦力なのである。

 参考例: <ミンダウガス>(在ヴィルニス)
       主砲: class15/35cal 爆縮カートリッジ・エクサイマー型レーザ砲 × 1(通称:ミンダウガスの腕(かいな)) 砲側携行弾頭×10発

◇ タイプシップ: ファ・ディ・ブルーノやアルフレッド・カッペリーニ。まあ、これらはどっちかってえと対地砲撃プラットフォームだが。対艦かつ近海防御と言う点でならレンデル式砲艦とかか。運用的には機動90式野砲とか? ターボ婆さん砲台w



<8/14更新分>

■ キャステロ・シティ

 レバーナ植民地連邦の首府。T型褐色矮星の静止軌道上に位置するステーション都市である。
 本体はロステクによる擬似オービタルリングシステム、<フォルトゥナの輪>の一点、おおよそ遠地点付近に連結されている。
 このリングの近地点は星の大気上層近くに至っており、燃料元素やメタン・アンモニアほか各種原材料がスクープ採掘される。
 また、恒星周囲を取り巻く岩石・金属質の微小惑星による輪から、地場消費程度の鉱産資源も入手でき、これもまた、このリング上を移動する搬器にて揚収されている。

 このほか、都市のエネルギー源としてこのケーブル内の超伝導流体、および加速システムが恒星磁場の変動を受ける(自転軸と磁極が偏差してるため発生する)ことによって生じる起電力も利用されており、エネルギー・物質事情に限って言えば、この都市は辺境に珍しく、割合に潤沢であると言える。
 →例えば、この都市の防衛用砲台「サンタンジェロ(4基あり、四大天使の名を冠される)」はこの電力を利用した自由電子レーザー砲である。
 エネルギー事情に限らず、たとえ太陽系になれない準恒星系とはいえ、物質密度が高いだけでも深宇宙の孤立アステロイドなどに比べれば楽園であるとも言える。
 →キャステロ人は割に水や空気、エネルギー、その他もろもろの扱いが雑だ、というのは純深宇宙民の強い忌避感を惹起するビヘイビアである。

 しかし、一般的な生活資源に不足はないが、輸出に耐えるような突出したものはなく、何より系外小惑星帯の特産たるべきテルモナイトは入植の最初からほぼ産出しなかった。
 すなわち、ここの入植目的は直接的な採鉱ではなく、まがりなりにも惑星系を持つことによる、深宇宙にしては豊かな物質的資源を生かした星域全土の開発・行政・通商の支援拠点としてであり、その辺りがレバーナの内に在ってレバーナでは無い、など他の系外民に言われる所以ともなっている。しかし、逆に言えば食料や燃料元素などの多くはこの都市から連邦各所に供給されており、名実ともの首都であることもまた、確かである。

 ただ、いずれにしろキャステロ、及びレバーナ全域には大した工業的加工技術はなく、あくまでこのキャステロを中心とした経済圏は、自国内の生存のためのものとしてのみ、循環成立している。


■テュケー :

 キャステロ・シティがその周囲を公転する準恒星。
 T型褐色矮星。質量は木星の13.5倍(重水素燃焼限界ぎりぎり)。かなり古く、暗い。
 命名は褐色矮星つながりで、かつて地球時代に想像された太陽系の見えない伴星の名前から。
 同じネタ由来で<ネメシス>とか<ニビル>とかも候補にあったが、これらがどちらかというと「災厄をもたらす客星」的ニュアンスが濃かったので、そういう色がなく、むしろ好運の女神という神格を持つ<テュケー>が採用された。
(もっとも、現地住民、特に低軌道で間近に作業する者達からは、その赤黒く沈む色合いと見上げる大きさから、<酒焼け親爺><呑んだくれ><不機嫌><宿六>などとさんざんな呼び方をされている。中には、吸収線の関係でぼんやりとマゼンダを帯びることを捉え<二日酔いの女神>などと呼ぶものまであるような有様である。)

 キャステロは、この星の周回軌道、星の表面よりおよそ5万kmほどのところにある。
(ちなみに、星の半径が8万kmくらい/木星がざっくり7万km)
 星の自転速度は著しく早く(目視ではっきり分かるほど)2時間にも満たない(木星では10時間程度)。
 キャステロから肉眼で見ると大きなお盆ぐらい。模様とかが分かるが、圧するというほどでもない。
 あと、とにかく暗い。一応、赤外域をメインに輻射はあるが、到底太陽の近傍というレベルではなく、生暖かい、という感じである。(表面温度で千K°もない)

 凝集時のガス雲が低質量だったため、降着円盤も小さく、恒星近くを取り巻く小惑星帯ぐらいしか生じなかった。
 この小惑星帯の構成としは主として炭素質、もしくは岩石、金属質で、水などの揮発成分は殆ど無いが、構成岩塊群の密度では土星の輪なみに高く、資源採取には極めて便宜である。
 視覚的にも、矮星を取り巻くリング状に見える。

 このほか、T型の性状としてリチウムが豊富(質量が小さいので重水素しか燃えないため、比較凝縮される)。
 リチウム6による核融合反応は、①:融合開始条件が比較的に低い(重水素反応よりは高いが、それでもかなり軽い)、②:反応後、高速中性子を発生しない(遮蔽が厄介で漏出すると放射能被害が出る)。③:得られるエネルギーが大きい、などの利点があり、これは小型で高出力、かつメンテナンスに容易といった利便を持つ炉を造るのに好適な条件である。
 この利点は大都市・重工業用や大型船用の炉よりも小型船、小規模コロニーでの用途に最適であり、レバーナではキャステロのリチウムを前提にこの種の炉が広く用いられている。
 褐色矮星であっても比較的若い星はまだ高温かつ活動が活発で(リチウムの比較濃度が十分高まっていないというのもある)、いかに恒星としては低温度とはいえ近傍で活動するには難がある。中には突発的なフレアやX線バーストを発する例も間々あり、危険である。しかし、テュケーは、この点でも著しく安定的で、事前調査においても、かなりの長期間この種の激変活動のないことが確認できたことが選定上のアドバンテージとなった。


■キャステロ・シティの立地 :

 恒星系外開発において、まず産物となるような鉱産資源があることは大前提(他に、通商上の中継点等もあり得るが、それはまた後の話なので、開発入植ベースで言う)だが、その時拠点となる場所に何より必要となるのは、
 ① 交通の便が良いこと。② 燃料ほかの物質資源の調達が容易であること。になる。
 ①については鉱産資源自体へもアクセスしやすいことが望ましいが、拠点としての機能を重視すればこれはある程度なら距離があっても良い。どのみち、小惑星からの採掘は資源を採り尽せば次に移動してしまうし、対象の大きさからも、それ自体に拠点を設けるというのは稀である。多くは、採鉱船を寄せるか、移動可能なプラントを設置、場合によっては小惑星ごと採取に便利な場所まで曳いてくることすらある。
 なので、この場合の交通の便とは資源の集積しやすさや出荷の便宜、または、文明世界からの貨物の受け入れの便宜のことになる。
 この観点からは、実は惑星や恒星など、ある程度以上の質量を持った天体の近傍はあまり望ましくない。
 この世界の超光速航法の実施には重力源から十分に離れている(質量にもよるが、惑星で1AU、恒星で20AU程度)ことが必要なため、なまじこれらの星に拠っているとせっかくの超光速から降りて通常空間を何時間何日も移動していく羽目になる。
 星系外アステロイド開発の重大なメリットの一つが行程の大部分を超光速で行える(密度は遥かに低いのだが、それゆえ星系内アステロイドの開発より有利があるほどである)ことからすると、拠点世界が重力井戸の中にあっては台無しである。
 しかし、そこで②の条件が出てくる。
 先にも述べたが、系外アステロイドの密度はひどく低い。系内のそれでも大抵は数百万kmに1個程度だが、系外ともなると一部の異常な例外を除けば大体が光秒単位になる。
 これら低密な分布、そして、小規模で組成が割りと単純な天体という状況でなにがまず不足するかというと、エネルギー源だ。
 冷え切った闇の世界の中、外部からの供給なぞ望めないから、この世界の通例として核融合炉に頼る事になるのだが、この燃料がまず問題になる。
 水素ヘリウムの類の軽元素は宇宙普遍の存在であり、系内であればガスジャイアントなどから比較的容易に採取できる。
 しかし、この深宇宙ではそもそも質量を持った物質がまとまって存在しているという事すら、先にも行ったように光秒に1個くらいなのだ。
 そして、鉱産資源豊かな小惑星は大抵金属質もしくは岩石質の密度の高いもので、氷の存在すら十分でない(岩石中に含有される事は在る)。よって、飲み水ですら苦労するぐらいなのに、その中でさらに核融合に適した同素体ともなると意味のある量はまず現地調達できない。
 そこで、燃料の供給源となるのが最寄の拠点世界なのだ。
 じつは、深宇宙には地球時代の人類が想像していた以上の密度で、浮遊惑星などが存在していた。
 恒星としてはあまりに小さく、極めて暗い褐色矮星や、そもそも恒星になれなかった浮遊ガスジャイアントなどである。
 これらは深宇宙における核融合燃料源として好適であり、かつ、ある程度の資源小惑星なども付帯する事が多かったから、文明世界に輸出するほどではなくても、現地利用するなら不足はない。
 それに、ガス巨星や準恒星とはいえ、まともな太陽のそれに比すれば遥かに質量が小さいから、超光速航法の阻害範囲も比例して小さく、遠路文明世界から運ぶよりずっとCPが良い。
 故に、こういった系外天体の周囲に開発拠点が設けられる事は多かった。
 この観点から言えば、前段で述べたテュケー準恒星系の惑星学的諸要素は極めて好適であると言えるのである。

 マクロ的な、星域全体をにらんでの立地理由は、以上のとおりである。
 しかし……その中でもミクロ的な、キャステロの恒星系内での立地については、また別の理由がある。
 この事例において資源採取の便宜としては、たしかに主星近傍が望ましいことになる。
 しかし、条件①にある如く、自恒星系での消費というより近傍への供給を考えたとき、重力井を嫌ってジャンプ不能圏ぎりぎりのところに拠点を置く、という方法もあったのだ。
 つまり、生産拠点としての都市と、流通拠点としての都市の価値は必ずしも等価にならないが故の選択肢である。
 航路の都合や、バックアップすべき資源採取地帯の分布などの兼ね合いもないではないし、燃料採取および現地消費(主として精錬など何らかの産業が立地する場合)の便宜を最優先にして天体近傍に立地する場合もある。
 しかしそれでも、キャステロの位置は、大重力源の近傍も近傍、周回軌道である。まともな太陽ほどではないとはいえ、それでも5AUほどの阻害半径がある。
 最初期には連合条約肝煎りの開発拠点と目されたので産業化の目もあったのかもしれないが、それにしても将来の話で、それだけでは極端とも言える。

 実は、この立地には、連合条約ならではの政策的理由がある。
 前述したとおりキャステロは連合条約の周辺開発の拠点と目されていた。
 大規模な投資がなされ、地域政庁すら設置される予定であった(アレイダがNF化した暁には星系政府が置かれる計画すらあったという)。
 そして、連合条約の政治行政的拠点と見た場合、上記2点以外にも重要なポイントがある。
 それは、通常の開発拠点としてのそれとは真逆に、重力井戸の底に置かれるべきである、というものであった。
 一種、連合条約という政体独特のビヘイビアとして、例えば、超テクノロジーの一般化への忌避というものがある。
 社会的に影響大となりかねないような技術革新は体制の厳重な管理下におき、時には封印すらする。 
 それは必ずしも合理的判断に限らず、個々の事象に対し説明や判断を経ることなく、わけもなく抑圧的抑制的なスタンスを取る、という傾向すらある。
 一つには過去の様々な対立や戦争の経験にもよるのだが、むしろ体制の、そしてその体制下の人々の自然な意識として、そういった保守性が強く出るのである。

 上記、政庁所在地の立地条件もその類であった。
 その拠点近傍まで超光速航行が可能という事は、一つには奇襲攻撃が可能でもある、という事である。
 ある程度アプローチの過程があり、対応の余地も在るジャンプはともかく、いきなりフォールドアウトされたら。
 タッチダウン精度の問題はあるが、理論上フォールドは数千光年の彼方からも可能なのだ。
 これが、並みの恒星系で20AU、キャステロでも5AUの従深が確保できるのであれば、話はだいぶ違う。通常空間航法は普通に物理法則に支配されるのだ。 
 何千年もの間にいくつかの戦争やテロを経て、この方針はもはや理由に触れられる事もなく自明の事となった。
 現に、NF57星系を見渡しても分かるだろうが、一部の例外を除いて重要な星区の首府は必ずのごとく太陽系の、惑星上に置かれている。
 地球型惑星はまだしも閉鎖環境ドームが必要な世界でも、軌道都市などではなく、極力、地表面に置かれているし、ましてや超光速の便宜をもってしても航路ゲート周辺にはないのだ。
 これは、生産より通商に重きを置く星区でも、行政中枢という意味ではほぼほぼその例に漏れない(宇宙港や航路管制ステーションなどに機能分与しているケースはあるが、それでも首府は必ずのごとく重力井の底である)。
 そもそも、なぜ連合条約の統治単位が<太陽系>に執着するのか、という話でもあるのだ。

 その中での、万やむを得ない例外が系外小惑星帯国家ではあるのだが……こと、連合条約の拠点を意識してデザインされたキャステロにおいては、ほかの立地条件もあいまってその色彩が強く反映されてしまったのであった。 


■フラフープ :

 オービタルリング類似の軌道往還索道システムのこと。
 見た目からの俗称。
 実際には軌道往還を名乗るにはかなり能力は限定的で、どちらかというと軌道上への物資揚収を主眼にしたものである。
 そういった意味でははるかに設置も維持コスト安いマスドライバーなどのほうが優秀で、あまり見かける事はない。

 例外的に存在するのは、一部のガス惑星近傍である。
 人類世界普遍的に、水素ヘリウム同素体はエネルギー源として重要であるが、この多くがガス巨星大気からの揚収によって確保される。
 これら惑星は固体の地表というものがないと言ってよいため、惑星側に施設が造りにくい。
 一番簡易的には、大気上層を掠めるような軌道で回収体を投入するのであるが、あまり効率的とは言いがたい。
 少し進むと、大気上層と亜宇宙もしくは低軌道を往還できるプラント船(多くは熱水素気球で浮かび、何らかのサブシステムで軌道へとあがる。マイラボ飛行船の例などを参照のこと)である。
 更に進化した形態だと、低軌道から長大なエンヴェロープを下ろし、スクープ採掘を行う例もある。
 ただ、いずれにしろ惑星環境によって可否は分かれる。
 大気擾乱の激しい惑星(例えば、ホットジュピターなど)だと大気上層以下へ進入、あるいはエンヴェロープを下ろすのはかなり困難になる。
 また、この種の星は大抵自転速度が大きいので静止軌道がかなり低く、そうなると重力勾配の上り下り自体はあまり軽減されなくなる。
 また、垂下したエンヴェロープにはかなりの潮汐力がかかるので、比較的質量の小さい星でないと向かない、などの諸問題も生じる。
 そういった中で、更にレアな方法論がこの<フラフープ>である。
 軌道上のステーションを遠地点とするケーブルを周回軌道に乗せ、近地点を惑星大気上層に下ろす。
 ケーブル内部には作用流体、もしくはウェイトがあり、おおくは電磁加速で循環して軌道速度を出し、ケーブルシースを支持するものである。
 構造強度の問題は、同じ揚程で言えば垂直型より大幅に緩和されるが、一般に低軌道と地表を結ぶだけのそれより軌道を周回するこちらのほうがかなり長くなるので、ケースバイケースとしか言えない。
  
この種の設置型軌道往還システムがいまいち洗練されていないのも連合条約の特徴といえる。
 先の首府の話でも触れたが、特に友人惑星地表へのこの手のシステムは倦厭される傾向が強い。
 確かに倒壊などは恐ろしいが、安全対策次第と言えるし、危険を言えばシャトルだって似たようなものだ。
 しかし、視覚的に強く訴求することが連合条約市民の無意識にそぐわず、一番必要性が高いはずの高度文明化惑星でこの手のものを見る事はまずない。
(例外的に、部分オービタルリングはカタパルトの延長との理解からか、散見されなくもない。つまり、技術的・安全性の問題より、意識上の差障りである。)


■レバーナの食事情

□キャステロ・チーズ
 キャステロ・チーズとは実は、乳製品でもなんでもなくて、メタン=アンモニア分解型の嫌気性細菌から造った蛋白質キューブである。
 一般的には無味、もしくは塩で味付けしてある。見た目と味はフレッシュチーズっぽくなくもないが、食感はパルメザンみたいな脆固い感じ。セミハードタイプ。ほのかなアンモニア臭は熟成チーズを思わせなくも無いが、もっと癖はなく、日常食としても苦にならない感じである(初めて食べるものなら、好き嫌いは出るだろうが)。
 そのまま主食的に、行動食に、砕いて半流動食にしてパウチ詰めに、調理材料になどと広く使われる。
 (位置づけはインドネシアのテンペとかそんなところだろうか)
 ただ、食い飽き難いとはいえ、味に変化を求めるのが人間の常という奴で、イオウとか、何かの無害な金属塩(言えば食塩だってそうだし)とかで変わった味付けをしたバリエーションも山ほどある。
 中に、これは地元でもややゲテモノ扱いだが、カビや細菌で発酵させた例もある。
 閉鎖環境下でのその手はバイオハザードを警戒して嫌われがちであるが、幾度かのバイオメシテロ事件を経てもアングラでやる奴が後を絶たず、遂に免許制で合法化された経緯がある。
 そして、それでも手前味噌やら一家の秘伝で自製する者は多いのである。

□うま味調味料
 キャステロに天然動植物由来のスパイスなどはほぼないが、アミノ酸系うまみ調味料はわりと豊富にある。
 チェンバー内でメタン=アンモニア大気を放電加工して作られる。
 多用する習慣があるので、レバーナの飯は何食っても同じ味で、舌がバカになる、というのが外来者の一般的評価である。
 まあ、何食っても、って基本はみんな、キャステロ・チーズ由来なのだが。


■ <ユピテル2>

 元・グレイバールの辺境巡察艦。
 名は巡洋艦にも似るが、艦隊戦にも耐え得るそれとは根本的に異なり、遥かに小型で武装も軽い。
 複数の小艇と小隊規模の海兵隊を搭載でき、それらを一定期間維持できる居住性や補給資材の運搬能力・航続性能、海賊相手くらいなら十分対抗できる戦闘力と機動力を有する、一種万能艦であるが、逆に言えば艦隊駆逐艦などには正面からは抗し得ない程度の戦力と、高い維持コストなど、器用貧乏な面も色濃い。
 単独、もしくは少数での辺境作戦用や特殊作戦母艦として企図されたものであるが、その目的の割には贅沢に過ぎ、結局、ネームシップ以外は建造されなかった。
 3975年、ネトヘス領域への示威行動に投入され、逆に私武装勢力に奪取されてしまうという顛末もあって、グレイバール的にはほぼ無かったこと扱いされている不遇艦である。


*****
<7/23追加分>

■ レバーナ百景 #1 :筑豊、端島、夕張……そしてレバーナ

 ああ、ありゃ、複合型娯楽施設だったところさ。
 信じられるか? このレバーナに、この消し炭の星々(シンダーズ)に、かつては0Gクラックのアリーナや<海水浴が楽しめる>って触れ込みの環境体験施設、果ては<美術館>まであったんだぜ?
 美術館? データバンクとかじゃなくて?
 『フロンティアの人々にも<本物の芸術>に触れる機会を』とか言って、UTの補助が出たらしい。
 まぁ、収納品にまでは回らなくて、大方が地元の素人展覧会状態だったらしいが。
 それでも……その頃にはここの人間にも、そういう余技を楽しむ余裕があった、ってことだな。
 それも今は昔、とっくに維持保守はされてないし、むしろ引っ剥がせるものは全部転用してる。
 収蔵品とかは?
 食えないし、実用にもならんだろ? 売るにしても運び出してペイするほどのもんかよ。
 で、終いにゃ周辺の掃宙も滞る中、デブリがぶち当たって半壊したまんま……さ。

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<当初アップ分>

■第0景: 舟、辺土に来たる

 32nd U.T.D.C
 NF57星系における連合条約の拠点である。
 そして、その首座たるカート・エッジ太陽系の外縁部。
 空漠たる闇の中に、巨大な、しかしその身の半分ほどにも明かりのないまま浮かぶ、一基のステーションがあった。
 いや、よくよくに見れば一つではない。
 闇に紛れるように、いくつもの同型ステーションが、しかしこれらはごくわずかな標識灯だけを瞬かせ、静かに蹲っていた。
 連合条約直轄の、、超長距離投射型フォールドポートのタッチダウンポイント。その管制ステーション群。
 はるか千光年の彼方、この手段を利用する以外には決して届かぬ彼方からの船便の、いわば港である。

 かつて、大戦以前。
 この港には、遥か彼方の地球から、引きも切らずに巨大な移民船や輸送船が来着し、NF57、58、そしてアレイダへと進発していった。
 それも、今は昔。およそ300年近く、ほぼ便というべきものが絶えて久しい。
 強いて言えば連合条約の通信公船(大方は無人であり、ごくごく小さい)が年に1,2回ほとタッチダウンする程度か。
 いや、確かに、いくつかの例外はあった。例えば、ほんの3年ほどの昔、この地に来着した船が運んできた近地球圏の貴族を名乗る人物。そして、その者を巡る騒動のうちに、近傍の有力先進星系NF292より大艦隊が侵攻してきたことさえあった。
 だが、それは例外、事変の類である。激動の一年の後にはかの男は己が死へと行き着き、侵攻艦隊も撤退した。
 そして、再びこの港は静穏の中に戻った。そのはず、だったのだが……。

 突然、まだ灯火のあるステーションの眼前で、空間が割れた。
 フォールドアウト反応だ。
 それも、大きい。到底、通信便などではあり得ない。
 タッチダウンが収まって表れたのは、超大型のコンテナ船であった。
 連合条約植民省型標準カーゴ、1km級。かつての全盛期であればこれでも小型船級といえるが、現在のNF57の水準としては十分に大型船である。たとい1隻といえど……

 だが、ステーションの展望窓より、まさにその光景を見ている一人の男は、こう小さく呟いただけだった。
 銀髪痩身、顔立ちは異様なまでに整っているがどこか少し、疲れたような印象がある。
「また、か……」

 そう、また。
 ほんのしばらくの前、突然大規模な船団がまさにこのポートに来着し、星系全体に衝撃が走った。
 かつての事件の再来か、と。だが、そうではなかった。
 移民船団だというのだ。大戦直後の強制移民が尽きて以来、絶えて無かったものである。確かに、かつて、ここNF57はフロンティアではあった。だが、なぜ、今になって?
 その疑問に答えはなく、地元UTDCからの説明すらもなく、ただ、それからも一方的に移民船は送り込まれてきた。 
 ぽつりぽつりと、五月雨式かつ少数ながら、かつてのような輸送船、植民船が来着するようになったのだ。
 しかし、その積み荷はかつてのそれと違った。
 いや、同じでは、ある。だが、その担う意味は全くに異なっていた。

 男がその手て中空に何か操作すると、目の前にディスプレイウインドウが出現した。
「船内状況。貨物室」
 声に応じて表示が動く。そしてそこにあったのは……
 ぎっしりと詰まった無数の棺、であった。
「だんだん酷くなる。最初の頃は曲がりなりにも移民船だったのに、もはや貨物扱いだ」
 ディスプレイ内の<棺>をよくよく見ればそのそれぞれにパイロットランプを瞬かせる機器が張り付いている。
 コールドスリープカプセルだ。
 確かに輸送効率は抜群だが、利用者の体調への影響などがあり、普通、よほどでなければ採られるべき手段ではない。
 よほどの必要性があるのか、さなくば
 雑、なのか。
「これでも、<彼ら>のためになっているというのか」
 男は船内映像を、棺を、いや、その中の<ヒト>を見つめながら、さらに呟きを続ける。
「『補陀落渡海』は、来る方だから違うか。『うつろ舟』……いや、乗る者に着目すれば『ヒルコガミ』かな」
 どうにも意味不明の単語を口にする彼の向こうでは、カーゴがその船首を巡らしている。
 やがて、ある方向に舳先を定めると、船は通常機関を発動して進みだした。
 進む先は星系内航路の入り口。
 アレンス、アラコスと経由して、さらにその先へ。
「『エビスガミ』に、なれればいいが……な」
 その言が消えるか否かのタイミングで、船が航路に突入した。
 最終目的地は……最果ての辺境、アレイダ。

*****

■クレギオン宇宙における恒星間空間

 人類が太陽系外に出る以前、ダークマターなどという意味ありげな表現があったが、宇宙の事実はもっと散文的であった。
 要は、質量があまりに小さく、核融合の灯が点るか点らないか程度の星や、何らかの理由で恒星系から遊離した小惑星が想定以上に存在したのである。
 これらを一括して系外小惑星、そしてその比較的濃密なエリア(光秒あたり1個程度)を系外小惑星<帯>と呼称するのだ。


■系外小惑星

 何より、物質というものに乏しい。星間物質なぞ粒米1原子のレベルだし、最も誓い岩屑ともなれば基本的に数光秒の世界である。
 つまりは<湯水のような>どころか、質量を持つものすべてが希少であり、カウンターマスですら無駄にできない。
 仮に、拠って棲めるようなある程度の大きさの岩塊があったとしても、採掘に適するような金属質小惑星なら逆に軽元素は少なく、水やバイオマスは光年を経て運んでくるか、運良くアイステロイドでも引き当てるしかない。
 しかもアイステロイド産は特に表層部では宇宙線による励起でトリチウム汚染されていたりする例もある。


■レバーナ入植

 テルモナイトラッシュ。
 系外小惑星帯が開発された最大の要因。
 ただ、きわめて希少ゆえ資源量は限られ、植民地として安定するにはこの採取が尽きるまでに産業構造を転換することが肝になる。
 セオリーとしては、航路の整備による搬出コストの削減および需要先の確保と、希土類などの比較的採算性のある資源採取および精錬などである。
 しかし、レバーナはまさにそのタイミングで大戦不況に遭遇し、転換に失敗した。
 そのタイミングこそが、ほぼ同時期に入植されたはずのニブノスとの運命の分かれ目であった。


■半世紀前のゴールドラッシュ(アレイダブックの記述による)

 小惑星帯での金ほか重金属資源の産出性状は、地球型惑星状のそれとまったく違う。
 惑星地殻部においてこそ重元素の含有量は少ないが、コア部分を含めればその割合はずっと跳ね上がる。
 むしろ溶融凝縮の過程を経たそれは、時にまるごと金塊の小惑星すらあり得ないわけではない(鉱脈ではなく、金塊。風化による凝縮なんか比較にならない)。
 逆に言えば、それほどでもなければ最低でも光秒単位の希薄さの中で岩塊を探し、さらには光年単位の宇宙を輸送する甲斐がない。
 何せこの時代、金に通貨の裏付けなどの特別な信用的価値はほとんどなく(先物などの投資的価値はある)、装飾や工業の原材料として比較的希少である、というアドバンテージしかない。
 そして、先に述べたように存在は希薄だが、一旦発見しさえすれば取得は容易である。
 つまり、一攫千金を目指すハンターがひとしきり溢れかえるが、浚えてしまえばそれまでで、しかも精錬加工などの付帯産業が発達する余地はさほどない。
 それでも、ごく短期的には税収などが潤うから、それをいかに収益構造に再投資できるか、が決め手になるが……レバーナのそれはあまりにも空花で、そんな暇もなかった。
 一時の隆盛は逆にその後の空虚を際立たせただけ。言えば、一攫千金を夢見てこの地にて破れ、出て行くことすら適わくなった者たちが、またも残っただけ、であった。


■ テルモナイト:

 人類の利用する2種類の超光速航法のうち、より高性能になる、フォールド航法の実施に必須の稀少物質。
 高次元空間への導入のために必要ともいわれるが、もともと人類の開発になる技術でもないため詳細不明。

 物質としても、こちらも原理原因は不明ながら、恒星系内(系内小惑星帯なども含む)での産出は稀。
 主たる産地は系外アステロイドになる。故に、人類がこの物質を知ったのも恒星間時代より後になる。
 これも一説には、深い重力井戸がその存在を不安定化するというものもあるが、例外的産出(NF57で言えばシュパーナ星区NP280、アラコス星区NP259)もあるので仮説の域を出ていない。
 また、これら例外の方はかなり集積して産出し、資源としてはこちらのほうが遥かに有用である。系外アステロイドでは対照的に、ほぼすべての小惑星上で一律に検出されるが、そのかわりに著しく純度は低く、延々と砕いた岩や表砂を選別抽出するような採掘形態になる。

 ただ、科学的にはともかく、社会学的に言えば、その産出性状こそがこの宇宙における系外アステロイド植民というものを決定付けたのは確かである。
 一般的に言って、非鉄金属であろうが希土類だろうが系内資源で十分に賄える。(この宇宙の一般的FTL航法、ジャンプドライブの性質上、深宇宙探査が比較的し易いとは言え)わざわざ光年光秒の空漠にまで分け入る必要はないのだ。
 しかし、テルモナイトという希少な戦略物資は系外において、マクロ的には先述のような普遍的分布をなし、さらにミクロ的には広く薄く産出する。
 故に、深宇宙に長期にわたって腰を据えて採取する必要があったし、為にベースとするための居留地が設置されねばならなかったのだ。
(拠点アステロイドの周囲に牽引されてきた岩塊が集積され、採取作業が行われているというのはよくある光景であった。)
 なお、テルモナイトはあまりにも希少資源であるため、割合に早く枯渇する。そのこともあってテルモナイトを求めフロンティアは常に前進し続け、結果、遥か遥か遠くの文明及ばぬ岩礁にまで人が住んでいるのであるが、少なくとも計画的開発においてはテルモナイトを採り終わった岩塊から相対的に採算性が劣る資源を抽出する、というのが定例の産業シフトになっている。しかし、航路もない深宇宙からの搬出では生半な資源ではペイしないため、テルモナイトを浚え尽くす