その瞬間であった。
フィールドが落ち窪んで変化する。
ごごご、と音を立てて雑魚が消え失せた。
不意に生まれた刹那の空白。
早鐘を打つ胸。張り詰め震える肩。治まる気配のない昂り。
初めて穢れを祓った実感。いや。来たる強敵への畏れ。
入り混じる情動をなだめて支度にかかる。
大砲の充填や次弾の霊力付与を急がなければ。
喉の渇きを覚える暇もなく。跳ぶ影に目を奪われた。
地の底より現れ出たのは慟哭の声を響かせるがしゃどくろであった。
場を揺らしめて余燼を払う巨大な、あまりに巨大なしゃれこうべ。
その骨格から生み出された分身である骸骨の刀士が戦列を成す。
未だ飛び散る火の粉を呑むように、どこか禍々しい炎が翻る。
中身の無い眼窩が次々と揺れて動き
ぼうぼうと鈍い輝きを放つ刃を構え
すさまじい強風と共に振り下ろして
戦陣を嘗める発火術を吹き消した、
かつて東川区を苦しめた太刀使い。
「だが戦いは変わらないとも」
精一杯の虚勢を口にしていた。捉えかけた何かを掴むために。
仲間と視線を交錯させる。頼もしく映る八人の首肯。
そこに。心の強さを見た。
活劇談 ≪勇心勃々≫ 第一幕
(シナリオ 『裏世界合同訓練』 六頁より)
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