三千界のアバター

≪アルテラ・サーガ≫王剣戦争 黄の章

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■プロローグ■



 第一魔導師団がサンドレアに出兵する少し前の事。

「第一魔導師団を潰したい?」
 帝都魔導研究所の所長、サフィルに招かれたクリスは、その理由を訊ねた。
「考えてもみて欲しいねぇ。
 魔導師は貴重な人材。元より戦いなどという野蛮な行為に直接介入するなど愚かにもほどがある!
 しかし、しかしですねぇ……イスラ様は実戦における魔法の有用性を証明し続けてしまっている。
 これは実に良くないねぇ」
 魔法とは“理”へ至るためのものであり、知識人である魔法使いたちはそれを解き明かし、理の内に生きる人々を導く義務がある。
 それがサフィルの主張だった。
 この魔導研究所は彼が所長となる以前に、「人々を豊かに導くための魔法技術」――すなわち今日の魔導技術を研究・試行する目的で創設されたものだ。
「魔法の軍事利用、平和への力としての有効活用? それはまだいい。
 魔法使いは“戦士”ではない。『自らの足で立たずして、何が民の守護者か』だと?
 ご立派な精神だが、それは実情にそぐわないねぇ」
「おや、君はかつてイスラが担ぎ込んだ少女を助けたのではなかったかい?」
「ものの“ついで”ですねぇ。あの人は冷徹を装っているようで、一度心を許した身内には甘い。
 少女に親身になって無事を案じていたのも、本当だねぇ。おかげで信用を得ることができた」
 くく、とサフィルが下卑た笑い声を漏らした。
「我々が強い必要はない。“強い力を持つもの”を操る力を持てばいいのですよねぇ」
「戦場に魔導師が出ることを避けるため、魔法使いでない者にも使える魔導武器を研究しているのはそのためかい。
 それで、その行き着く先は“戦力の自動化”というわけだ。
 ――かつての鋼の時代の時のように」
 クリスは鋼の魔女を生きたというエルフの老人、ロマンシスとの邂逅を経て、自分が何者であるかを知った。
 彼は当時に比べて劣る、現代の魔法使いたちを憂えていた。
 “禁忌”に踏み込む度胸もない臆病者、だとも。
「一緒にしないで欲しいねぇ。
 完全自律型のゴーレムのようなものは、術式を掌握されればいとも容易く奪われる。
 そんな危険な真似をするつもりはないねぇ」
 既に彼の中で、帝都に導入するための“試験警備隊”の構想は出来上がり、あとはシステムを構築するだけ、という段階らしい。
 ゆくゆくは、それを現在の正規師団にとって代わるものとする目論見があるのだろう。
「これが完成すれば、貴重な人命が戦場で失われることがなくなる。
 第一魔導師団の存在は、その妨げとなるねぇ。
 既に、元老院への根回しは済んでいる。全ては輝ける未来への尊い犠牲、というわけだねぇ」
「君が戦場に出る危険性を少しでも減らしたいだけだろう、本音は。
 それで、自分への今回の“依頼”に繋がるわけだ」
 サフィルが気色の悪い笑みを浮かべた。
 
「君には反帝国連合に下り、彼らの仲間として行動してもらいたい。
 彼らに恩義もあるようだし、ちょうどいいんじゃないかねぇ」

 反帝国連合に協力を申し出るに十分な理由はある。
 サフィルが“戦争屋”とのパイプを持ち、密かに試作武器を闇市場に流して、その試験結果を回収していることも既に知っている。
「ただ、はっきり言おう。反帝国連合が帝国に勝利する未来はない」
「そんなことは分かってる。
 ただ、彼らは力に敏感なんだねぇ。どうせ頭の足りない連中だ、ワタシとしては第一魔導師団の最強神話を崩壊させ、同時に帝国にとっての害獣も駆除できる。
 これほど素晴らしいこと、あると思うかねぇ?」
 この男は下種だ。
 だが、クリスは、
「……分かった。できる限りのことは、あちらでやってみよう」
 と、応じた。
「だが、勘違いしないでくれ。自分はただ、見極めたいだけだよ。
 君たちを、この時代を必死で生きている者たちをね」
「ほぅ」
 席を立ち、クリスは踵を返した。

「自分は誰の敵にも、味方にもなるつもりはない。
 世界の味方として、見定める――人の意志というものを」

 そのためであれば、“悪”にもなってやろう。


■目次■


プロローグ・目次

■戦争編

★帝国軍混成部隊&傭兵団
<1>戦闘開始【1】
<2>屍兵戦1【2】
<3>屍兵戦2【1】
<4>オディス【2】
<5>古代獣 ゴリアト【2】
<6>古代獣 アダマスティア【2】
<7>真紅のゴーレム ~道標のもとに~【1】
<8>真紅のゴーレム ~氷我の目覚め~【1】
<9>特別製屍兵戦【2】
<10>ロマンシス ~焼進~【2】
<11>ロマンシス ~非殺~【1】

★クィリデ義勇軍
<1>進む壁
<2>魔獣討伐隊
<3>群
<4>白日の引潮と水辺の歌姫
<5>義勇軍『天叢雲』 ~進軍~
<6>二人でひとつのフリューゲル
<7>薔薇と桜は
<8>銀鏡に浮く
<9>モナカ
<10>逆境を乗り越えて
<11>そのためのてのひら


■王剣編

★ルート・赤
摩擦の紳士
求めるもの
邂逅
因縁の決着

★ルート・黒
最強、襲来
最強の意地
最強の贋者
最強を超える
最強との決別

★ルート・青
阻む者
蒼の絆
魔導給仕隊

再会

★ルート・黄
真意
魔研
潜入
陽動
突破
禁忌
捕縛

★ルート・白
静寂の、楽園
“光拳”、推参
超えろ、限界を
立ち上がる、何度でも
唄うもの、謳われるもの
王剣、到着

エピローグ1
エピローグ2
エピローグ3

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