三千界のアバター

ワンダーランド

終わらない夜のプレリュード

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終わらない夜のプレリュード
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■プロローグ 終わらない夜のプレリュード■


 ――ワンダーランド、寂れた小さな田舎町。

「いやだ、助けてくれ……。俺は、バケモノになんかなりたくない……!」
「恐れることはありません。夜はあなたを、真実の安らぎへと誘ってくれるのですから」
「や、やめ……ッ!」

 教会とは本来、神が迷える人々に救いと許しを与えるはずの場所。
しかし、三蔵法師の手中にある今のワンダーランドで行われている事は、救世とは名ばかりの「強制支配」だった。
今日もまた、薄い月明かりの差し込む教会内で、三蔵法師の白き手が一人の町人へと差し向けられる。
「――三蔵様の仰せのままに」
「オラ! 悪いことは言わないから、大人しくしな!」
「離せっ、離してくれぇ……」 
どれだけ町人がもがいても、その両腕は沙悟浄と猪八戒によって拘束されているので逃げられない。
「さあ、あなたも夜の住人となりなさい。共に永遠の安息を――」
「う、うわあぁッ」
三蔵法師が首筋をなぞるようにつと触れるだけで、町人は悲鳴を上げながら苦しみ喘いだ。悟浄と八戒が抑えていなければ、きっと暴れて床をのた打ち回っているだろう。
「ふふ……」
そして、三蔵法師が満足気に声を上げて笑った次の瞬間には、町人はその原型を留めない異形の姿――ジャバウォックへと変化してしまったのである。

 今この教会内にいるのは、正気をなくしたジャバウォックの信者たちか、三蔵法師に従うしか術を持たない非力な町人のみだった。
しかも、彼女が持つ芭蕉扇の風は悪しき感情を増幅させ、夜を無限に拡げ続けてしまう。膨らみあがった負の感情はもう、ワンダーランドの住人誰一人として止めることは叶わなかった。
 礼拝堂でかしづく人々を眺めながら、三蔵法師が満足気に説法を始めていると、
「三蔵様」
その背中に控えめに声をかけたのは悟浄だった。
「どうしました、悟浄?」
「本当に、悟空を呼び戻さなくて良いのでしょうか?」
悟空の名を聞いた途端、三蔵法師の表情に幾分翳りが浮かんだが、それは一瞬だった。
「……あの子もいずれ、わたしの理想とする世界を理解する筈です。この世界が真の安寧を得る時は、目前なのですから」
悟浄に振り返って微笑む三蔵法師の瞳には、迷いがない。
凍てつく美貌と畏怖を纏った三蔵法師――それは、この世界を覆い尽くさんとする夜そのもの。
 
 しかし当然ながら、「三蔵法師の世界」のおぞましさに気がついているのは、悟空だけではなかった。
既に穴門 由紀乃を始めとした特異者達の多くが、ワンダーランドに集結している。
三蔵法師の理想が勝つか、特異者達の希望が彼女を阻止するのか。
終わらない夜の幕引きを賭けた戦いが今、始まろうとしていた。

■目次■

1ページ プロローグ・目次

2ページ 【1】第1章 チェシャーヴィルの共闘 ~蔓延る夜~ 1
3ページ 【1】2
4ページ 【1】3
5ページ 【1】4
6ページ 【1】第二章 チェシャーヴィルの共闘 ~桃太郎~ 1
7ページ 【1】2

8ページ 【2】第三章 神羅の森 ~森の内部~ 1
9ページ 【2】2
10ページ 【2】3
11ページ 【2】第四章 神羅の森 ~悟空を探して~ 1
12ページ 【2】2
13ページ 【2】3
14ページ 【2】4
15ページ 【2】5

16ページ 【3】第五章 夜誘う御手~強敵二人~ 1
17ページ 【3】2
18ページ 【3】第六章 夜誘う御手~三蔵法師との邂逅~ 1
19ページ 【3】2
20ページ 【3】3
21ページ 【3】第七章 夜誘う御手~三蔵法師との激闘~ 1
22ページ 【3】2
23ページ 【3】3

24ページ エピローグ

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