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銀の島チキチキ

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銀の島チキチキ
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開会


『さあ、みなさんお待たせしました。第2回パンタシア杯の開催です!』
 実況席のサーヴュ・メイリが宣言すると、銀の島の上空にドンドンと花火が上がりました。ようせいさんたち、お祭り騒ぎは大好きです。
『今回は、4つのレースが行われます。第1レースは、チキチキチキンレース。断崖にむかって乗り物に乗って走り、ギリギリでストップするというなんともクレイジーなレースです。続く第2レースは、チキチキ大障害レース。コースのあちこちに設置された罠を、いかに華麗に回避してより遠くへ進むかのレースです。第3レースは、全長三十ようせいさんという謎の距離をいかに早く駆け抜けるかの、チキチキスピードレースです。第4レースは、限られた5ようせいさん時間の間に、どこまで遠くへ進めるかのチキチキタイムレースです。そろそろ、第1レースのスタートの時間が近づいてきました』


第1レース


『では、選手たちを御紹介しましょう。買いたてのピカピカのフレイムバギーの上で大きく手を振るのは、世良 潤也選手です。いつもとは違い、やる気満々です。それでは、インタビューの友麻さん、各選手の意気込みをお願いします』
『はい、こちら、スタート地点の友麻真央です。さっそく、世良選手に聞いてみたいと思います』
 そうサーヴュ・メイリに答えると、真央がとこまかと世良潤也に駆け寄っていきました。
『俺の度胸を見せてやるぜ、ヒャッハー!』
 そう叫ぶなり、世良潤也がフレイムバギーについている火炎放射器から炎を空にむかって放ちました。やる気がないどころか、危ない人です。
『はい、ありがとうございました。早く海に落ちて消火されるといいですね♪』

『続いては葛城 吹雪選手です。いつもの段暴スタイルですが、元からほぼ二頭身なので、ここパンタシアでも違和感が仕事していません。きっちりと二ブロック分です。さあ、こちらは、愛用のスクーターに乗って挑むようです』
『はーい、段ボールさんに聞いてみたいと思います。まだ彼氏いないから、近づいても大丈夫だと思います。しくしくしく……。あのー、えーと、意気込み、お願いしまっす!』
『今日も飛ぶにはいい日だ……』
『もはや、濡れ段ボールとなって海に溶ける気満々です。放送席、お返しします』

『はーい、ありがとうございました。次はと……。なんだか大所帯ですが、ウォークス・マーグヌム一家……どこの組の人たちでしょうか? 何やら、今日を一大イベントとするために参加しているようです』
 スタート地点では、オクトパスポッドを改造してウォークス・マーグヌムと弥久 佳宵が乗っていました。
『なんだか、凄い装備ですねえ。わけが分かりません……』
 ウォークスたちが乗っているオクトパスポッドを見つめて、真央が唸りました。
 パンタシアですから、オクトパスポッドもほとんどウォークスたちと同じぐらいの大きさなのです。その三つの頭の上には、G・B・Pで串刺しにして固定したドレッシングホームが載せてあります。ウォークスと弥久佳宵たちは、その屋根の上に立っていました。実に危ないバランスです。
 しかも、ウォークスはウェディングドレスを着て古代王の冠を被っています。対する弥久佳宵は、白いタキシード姿でサーヴァントデバイス・バイザーを被っていました。これでは、性別が逆です、いや、衣装が逆です。
 見た目、不気味な等身大ウエディングケーキのコスプレと言えなくもないわけですが……。先頃結婚した二人は、この姿で遅ればせの新婚旅行に旅立つつもりのようです。いったい、どこまで本気なのでしょうか。
「華やかですね」
「ああ、みんなが、オレたちの門出を祝福してくれるんだ。この姿で島を一周して、みんなの記憶に残ることにしよう」
「はい、楽しみです」
 弥久佳宵とウォークスが、のほほんとそんな会話を交わしています。なんだか、話だけを聞くと、第4レースにエントリーしたつもりのようなのですが。
 サーヴァントとして、弥久佳宵のサーヴァントデバイス・バイザーに憑依した日長 終日が、まだバレていないなと内心ほくそ笑みました。思わずバイザーにニッコリマークが浮き出てしまいます。何を隠そう、G・B・Pの方も、太郎・マーグヌムがサーヴァントとして憑依した物なのでした。せっかくの晴れ舞台ですから、同行しつつも新郎新婦より目立たないように身を隠しているのです。
 ウォークスたちがレースを勘違いしているのは、どうやら、事前に日長終日が申込書をすり替えていたせいのようです。
 結婚しても相変わらずの距離感なウォークスと弥久佳宵も、このチキンレースによる緊張感を経れば、吊り橋効果でもっと親密になれるかもしれません。そうすれば、二人はわたしが育てたと日長終日も堂々と声を大にして言えるというものです。そのために、太郎をも巻き込んで、綿密な計画を練ったのでした。
『ええと、意気込みは……』
『幸せになろうな、佳宵』
『はい! 二人で楽しい結婚生活を送りましょう!』
 真央のインタビューに二人が答えたとたん、花火が打ち上がり、ハトが飛び交いました。なぜかブレイズまでも飛び出してきましたが、飛べないのですぐに墜落しました。日長終日と太郎の仕業です。
「リア充は、殲滅するであります……」
「どうどうどう。レース前とレース中は、落ち着いてくださいね。レース前とレース中は……」
 そんな派手な演出の裏で、リア充に反応して近接戦闘散弾銃を取り出す葛城吹雪を押し止める真央でした。なんだか、世良潤也も、思いっきり消毒したそうに火炎放射器に手をかけています。

『ええと、波乱の予感しかしませんが。次の選手を御紹介しましょう。今井 亜莉沙選手です。こちらは、サイドカー付きバイクに乗っての参加です』
『目指すはコースの最後ギリギリ! 前回は完走できなかったから、今度はきっちり完走を目指すわよ!』
 真央にマイクをむけられた今井亜莉沙が、元気に答えました。
『そういえば、前回のレースでは、第4ようせいさん時間でリタイアしていますね。今回は頑張ってください』

『続いては、ルイーザ・キャロル選手の登場です。愛車は、犬車のようですね』
 犬が牽く荷車のような物なのですが、みんな二頭身ですから寸法がなんともいいかげんです。
『意気込みはどうでしょうか?』
『まあそう慌てず、落ち着いて……。紅茶でも、淹れましょう』
 犬車の上に座布団を敷いてきちんと正座しながら、ルイーザが真央に言いました。小さな茶托の上には、ホライゾンティーとアップルタルトが載せられています。
 なんとも落ち着いていますが、なんだか落ち着きすぎではないのでしょうか。
『大丈夫ですよ。すべては、犬さんに任せていますので。そうですよね、犬さん』
 ルイーザの呼びかけに、犬車を牽く犬が、ワンと答えました。しかし、微妙なブレーキが必要なチキンランで、犬まかせで大丈夫なのでしょうか……。

『続いては、痴気痴気マシンに乗る朝桐 亜季選手と北 信景選手です。えっ? ホライゾンスクーター用サイドカーを押す北選手は、選手じゃない? エンジン? 友麻さん、そこのところ、詳しく』
『あっ、はい、インタビューします』
 無茶振りするなと、真央が、とにかく、北信景にマイクをむけてみます。
『ぶぉんぶぉぉん!』
「あっ、こう来ましたか……」
 確かにエンジンですねと、真央が納得します。理解はしません。無理です。
『エンジンの調子はどうでしょうか?』
 真央が、朝桐亜季の方にマイクをむけました。
『ぶろろろろ、ぶろろろろ、ぶろろろろー!』
『私は星になるぜー……と、エンジンが叫んでるねえ。私は、風になるよお。目指せ、チキンクイーン☆彡』
 平然と、朝桐亜季が答えました。もう、北車でいいじゃんという痴気痴気マシンの後部には、ウルフパックが作ってくれた「佛恥義理」と書かれた布が海神の銛につけられ、幟として立てられていました。

『さて、第1レース、最後の選手はテレサ・ファルシエ選手です。宅配カステーラバイクに乗っての参戦です』
 銀狐の付け耳をしたテレサは、荷台に山と積まれたカステーラのチェックに忙しいようでした。


 
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