三千界のアバター

神多品学園都市

輝かしき青春の日々

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輝かしき青春の日々
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■神多品の平和を護る者たち

(うーん、いくらシャドウを倒すためとはいえ、学校抜け出したのはまずかったかなー)
 楯無高校指定のダッフルコートに身を包み、商店街を歩くアクア・フィーリスがここに来るまでの事を思い返し、苦笑を浮かべた。今は多くの生徒が学校に居る時間帯であり、外を歩いている生徒はどうしても目立つ。
(しかも不良たちには仲間みたいに思われたし。……もしかして、この外見のせい?)
 ガラスに映った自分の姿――緑と黒の髪に、赤茶と黒の瞳――が原因なのかとアクアは頭を抱える。
(違うから! わたしはシャドウに襲われる人が出ないように、パトロールしてるだけだから!)
 心の中で叫んだアクアが、次の瞬間周りの異変に気付く。人の気配がスッ、と途絶え、代わりに邪悪な気配が数体、アクアを取り囲むように現れた。全身黒ずくめ、よりもさらに黒い姿をしたシャドウが、今にもアクアに襲いかからんと機を伺っていた。
「……よかった、抜け出してきたのが無駄にならなくて済みそうだね」
 対するアクアもダッフルコートを脱ぎ捨て、喚び出した黒い刃の大剣を構える。
「さーて、何秒で終わらせよっか?」
 告げたアクアの言葉が戦闘開始の合図となった。同じく両手持ちの剣を手にしたシャドウが駆け寄り、横薙ぎを浴びせる。
「よっ!」
 それをアクアは難なく防ぎ、体勢を崩したシャドウを返しの刃で真っ二つに切り飛ばす。開始数秒で一体を屠られたシャドウだが、それに動じることなく弓を番え、放つ。
(少しくらいかすっても、押し切る!)
 矢の雨の中にアクアが突っ込む。何本かは四肢を掠めるがそれでアクアの動きが鈍ることは無い。強靭な身体と手持ちの武器だけで、アクアは一体、また一体とシャドウを排除していく。
 だがシャドウもやられっぱなしのままでは終わらず、一体のシャドウがアクアに接近を果たすと拳の一振りでアクアの武器を弾き飛ばす。
「へぇ、ちょっとはやるじゃない」
 それでもアクアの顔に動揺は見られず、むしろどこか楽しむようにシャドウとのクロスレンジでの戦いを繰り広げる。確実な打撃でシャドウの足を鈍らせ、やがて防御を固めたシャドウに構わず、アクアは振り下ろす動きの拳を叩きつける。頭上に掲げていた腕、そして頭が小柄なアクアの背丈よりも沈むほどの威力、しかしこれで終わりではない。
「せいやぁ!」
 飛び上がらんばかりに振り上げた拳がシャドウの頭を捉える。鰐が噛み付くかのような攻撃を受けてただではいられず、シャドウは脱力するように倒れながら消滅していった。
「残りはまとめて……いくよっ!」
 その声に喚ばれるように、黒い稲妻が天空から落ち、アクアの身体に纏わる。シャドウがワンテンポ遅れて行動を開始するが、時既に遅し。次の瞬間には突き出されたアクアの拳から放たれた黒雷が全てを吹き飛ばしていた。
「ふー、排除おしまい、っと。だいたい一分くらいかな?」
 邪悪な気配が消え、元の神多品商店街の雰囲気が戻ったのを確認して、どこかスッキリとした表情のアクアがパトロールを再開する。

「! 見つけたよ春香、ここからすぐ近くだ」
 神多品公園にシャドウの出現を察知したハルキ・ヴィラジが隣の谷村 春香に呼びかけ、背にしていた建物から駆け出す。春香もハルキに遅れることなく付いていく。
(これだけの数のシャドウ……鈿女さんに何かあったのかな。気になるけど……)
 今は出てきたシャドウを倒すことに専念する、そう思いを切り替えた春香の目に、こちらに背を向け立ち去ろうとする数体のシャドウが映った。
「行かせない! あたしがキミたちの相手よ!」
 そう口にした春香の全身が発光し始める。超能力の高まりによって生じる現象はシャドウの注意を向けるに十分であり、一斉に振り向いたシャドウが春香たちへ駆け出す。
(まずは狙い通りね!)
 自身の作戦が成功したのを感じ、春香は次の行動に移る。出現させた光刃に超能力を限界まで注ぎ込み、シャドウの集団に向けて振るえば、軌跡がそのまま刃となって飛んでいく。光刃はシャドウの一体を切り裂いて消滅させ、また他のシャドウにも回避を強制する。
「春香は僕が護る!」
 その間にアポカリプスの力を体内に降臨させ、影のオーラを纏ったハルキが春香を庇う位置に立ち、両手を横に広げる。一瞬シャドウの動きが止まるが、ハルキが来ないのを確認するや否や攻撃を開始する。
「君たちの攻撃は……見える!」
 だが、シャドウの攻撃はことごとくハルキの盾に防がれ、逆に槍の反撃を受ける結果となった。正面から左右から襲いかかるシャドウに、ハルキは見事に対応している。
「ハルキ、シャドウを一箇所に集めてほしいの」
「分かった、任せて!」
 春香からの要請を受け、ハルキが召現した槍に力を込め、地面に突き立てる。すると離れた場所の地面が突然爆発しシャドウを巻き込む。爆発は二度、三度と続きその内側に居たシャドウの動きを止める結果となった。
「今だ!」
「いっけー!!」
 好機を逃さず、春香は再び光刃を振るい、飛び荒ぶ刃は一体のみならず複数のシャドウを消滅させる。僅かに残ったシャドウもその後間もなく、ハルキの攻撃によって排除された。
「……終わった、ね。春香、怪我はない?」
「うん、大丈夫。ありがと、ハルキ」
 互いの無事を確認し、二人が身体の力を抜く。
「これだけシャドウが増えるのは、やっぱり異変の前触れ……なのかな」
「どうなのかな。他の人が調べてくれているみたい。……何もなければいいな」
「そうだね。……あっ、壊した地面、元に戻しておかないと」
「あたしも手伝うよ、ハルキ」
 事件のこれ以上の拡大を気にしつつ、二人は戦闘の後始末に取り掛かる。

(……さて、情報によればこの辺りのはずだが……)
 愛馬を操り、神多品演習場にやって来たアイン・ファイユーブが辺りに注意を向ける。
(見当たらないな……隠れているのか?)
 探すべく愛馬の手綱を引こうとした矢先、地面を揺らす振動が愛馬を通じて伝わる。
(! ……まさか、いや、これは確かに……)
 信じがたい思いを抱きながら、しかしアインの目は確かに、自分と同じ騎乗したシャドウがこちらに向かってくるのを捉えていた。
(……そうか、それもまた『願い』というわけか)
 自分も騎乗、相手も騎乗。そして自分はリージョン・ユニバースの生徒であり、シャドウの排除にやって来たのなら、するべきことは一つ。
「ボクはアイン。キミに、決闘を申し込もう」
 目の前の『騎士』にそう宣言し、アインが自らの武器――先端に棘付き鉄球の付いた棍、モーニングスター――を召現させる。対する『騎士』も同様の武器――こちらはウォーハンマー――を構えた。
(表情が読めない……が、それはジョストであれば同じこと)
 アインが深く息を吐き、体内にアポカリプスの力を巡らせていく。相手の動きを目で追うのではなく、気配で追う。行動に移る時の揺らぎを感じ取れるようにする。
(相手の攻撃より後に動き、先に一撃を当てる……!)
 あまりに早く動いては、相手にカウンターを合わせられる。もちろん遅すぎては攻撃を受ける。よって勝利するためには、相手が攻撃する行動を取った瞬間に行動を起こし、相手の行動が完了する前に攻撃を当てる――アインが頭の中で勝利の方程式を導き出す。

 ――『騎士』が馬を走らせ、手にしたウォーハンマーをアインの頭上へ振り下ろす――。
 ――アインが馬を走らせ、手にしたモーニングスターを『騎士』の頭上へ振り下ろす――。

 馬を止め、召現した武器を仕舞い、その武器を握っていた手を見つめるアイン。
 硬いものと柔らかいものを叩き潰した感触、そして自分は決闘に勝利し、生き残ったのだという感覚。
「……さあ、戦いは終わった。お茶にするとしよう」
 ことさらにそう口にして、アインがティータイムを開くための場所へと馬を巡らせる。
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