三千界のアバター

ワンダーランド

いたずらウサギとチョコレート

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いたずらウサギとチョコレート
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第一章 キャンディとチョコレートの行方

 夜の闇と木立に包み込まれた森の中は、月明かりさえ差し込まない漆黒の闇。
暗がりにぼんやりと浮かび上がるのは、【斬鎖双剣ヴァイス・シュヴァルツ】の煌く刀身と、ジャバウォックの鋭い眼光のみだ。
 剣の柄をぎゅっと握り締めて駆ける黒山 羊は、西の森中を移動していた。
羊の軽い足音から数秒遅れて、茂みをかき分ける獣の騒音が追いかけてきている。
 神経を研ぎ澄まして、戦いやすい開けた場所へとジャバウォックを誘い込む羊。
「……!」
 だが、行く手の茂みから、同時に二体のジャバウォックが飛び出してきた。
当然、後ろからも敵は迫っている状況。後退は出来ない。
羊は【先の先】で敵の跳躍を身を屈めて交し、ジャバウォックの牙を回避した。
「やあっ!」
そして、次の瞬間すかさず身を起こし、伸縮自在の二対の刃を操ってジャバウォックの顔面に叩きこむ。
「グ……アァッ」
刃の直撃を受けた一体は、赤黒い血を噴出しながらその場に崩れ落ちた。
しかし、戦いはここからが本番だ。
羊の真正面には、体勢を低くして羊の隙を狙っている一体のジャバウォックが残っている。
「ガウッ…」
「破っ」
羊は、踊るようなステップでジャバウォックの斬激を【受け流し】、【見切り一閃】のカウンターでジャバウォックの腹部を切り裂く。
「グアアァ」
ジャバウォックは、断末魔の呻き声と共に地面へ沈んでいった。
二体のジャバウォックを仕留める事に成功したのもつかの間、今度は羊の後を追ってきたジャバウォックも合流する。
(五体……? ううん、左右にもいるみたいだね)
 いくら優れた剣術を操る羊でも、多勢に無勢は不利な状況だ。
「こちらですわ!」
そこへ応援に駆けつけたのは、兎の【アニマルローブ】を身に纏った松永 焔子
彼女の【巻き込まれ体質】もあってか、羊を取り囲んでいたジャバウォックの注意が、一瞬だけ焔子の方へと向けられた。
「焔子ちゃん――そっちの敵はお願い!」
「ええ、お任せを……このパイが欲しければ、こちらへおいでなさい!」
焔子は、ジャバウォックの好物【イールのパイ】を持ち、羊を取り囲むジャバウォック数体を羊から引き離した。
「待って、きみたちの相手はこっちだよ。さぁ、ぼくと踊ろうよ! なんてね☆」
散り散りに分散したジャバウォック――まして、数も少数となれば羊の敵ではない。
(背中を向けると襲いかかってくるんだっけ? だったら……)
羊は、背後を取ろうと狙うジャバウォックに対してはくるりと身を翻し、【サマーソルトキック】をお見舞いしていった。
「ギャウッ!?」
 宙をくるりと回転する羊の姿は、蝶のように可憐だ。それなのに、その脚力から繰り出される一撃は鋭い。
小柄な体から繰り出される容赦ない追撃に、ジャバウォック達が逃げ腰になっているのが分かる程だ。
「ぼくのダンスはまだまだ、始まったばかりだからね☆」
 雲の隙間から零れる月明かりが羊の笑顔を照らしだすと、そこは本物のダンスホールのように眩く見えた。
――戦場である事など、忘れてしまうほどに。

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