三千界のアバター

贈り物を、君に

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◆◆ 1. 悩ましいプレゼント ◆◆
 

 いくつもの店が並び、多くの人達で賑わっている。
 シリル花雪は、人だかりの出来た一角を覗いてみようと向かう。
 しかし人が多くシリルの身長では店の中を見ることも出来なかった為、花雪はシリルの脇に手を入れて持ち上げ『高い高い』をしてやる。彼なりに気を利かせたつもりであったが、おかげで道行く人々から注目される羽目になってしまったシリルの顔は、心なしか桃色に染まっている。
 そこはどうやら、チョコレートの専門店のようだった。
 
「あら、貴方もしかして……シリルさん、だったかしら」

 その姿を見て声をかけたのは宵街 美夜だった。
 その顔には覚えがあった。忘れるはずもない、命を助けてもらった、恩人の一人である。
 
「美夜さん……どうして、ここに?」

「それはこちらのセリフだわ。――もう、お身体は大丈夫?」

「はい。 あの時はありがとうございました。花雪さん、この方は以前僕を助けて下さった方で……美夜さん、ええと、彼もノラさんと同じく教会に協力している方で」

 持ち上げられているせいで見下ろす形になって申し訳なく感じ、降ろしてもらえるように頼むと地面に足先をつけた。

ノラさんはお元気かしら? とってもお会いしたいわ。どちらにいらっしゃるか、ご存知ないかしら」

「……今朝は教会にいた」

「それなら、会いに行かなくてはね」
 
 花雪の言葉に美夜が踵を返した時だった。
 

「あ!」

「ん?」

「まぁ」


 まるで申し合わせたかのように、その場で鉢合わせをしたのは……佐倉 杏樹と共に店を見ていた六合 春虎、そしてウィンドウショッピングを楽しんでいたドロテア・リドホルムだ。
 
 一部は以前、クリスマスマーケットの広場で、アラヤ響とノラがいた屋台を訪れ賑やかに過ごした面々でもある。特異者同士、どこかで顔を合わせる機会がないわけでもないので、それなりに面識はあるかもしれない。
 シリルは彼らが響とも面識があることを知って、事情を説明し助言を求めることにした。すると、美夜がノラへ、杏樹と春虎が響へのプレゼントを買い物ついでに探してくれるという事になった。
 買い物は彼らに任せ、シリルたちは折角なので、買うだけではなくチョコレートを作ることにした。
 
「それなら、チョコレート制作キットを持っているわ。良かったら、一緒に作りましょう?」
 
「ありがとうございます! 皆さんも、よろしくお願いします」

 シリルはドロテアの申し出をありがたく受けて、協力を名乗り出てくれた彼らに深々と頭を下げた。
 
「いいのよ、あちこち見て回るの楽しそうだし。ね、六合さん」

「ああ、面白そうだしな。んじゃ俺ら行くわ。杏樹、行こうぜ」

 早速、人混みの中へ向かう二人と美夜を見送り、三人は顔を見合わせた。

「私達も足りない物を買って、学園の調理室へ行きましょうか」

 ドロテアの提案で、チョコに使う具材とラッピングセットを買い、学園へと向かう。
 
「持とう」

 花雪がドロテアの手から荷物をするりと奪う。
 
「そんな、悪いわ」

「……いい。これくらい。シリルも」

 貸せ、と二人の荷物を引き受けると先へと歩き出す。顔を見合わせると、二人は花雪の後を追うようにして歩き出した。


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