三千界のアバター

年の瀬の戦い・虎牢関!

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年の瀬の戦い・虎牢関!
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序章

 くくく、とほくそ笑む男の姿がある。
 彼がいる場所は、虎牢関と呼ばれる砦の向こうにある小さな城。
 彼が今までに得た財力を駆使して、捨て置かれていた屋敷を改造して作り上げた自慢の居城だ。
 そこから遠眼鏡で、虎牢関で始まった戦闘を見守っていた。
「動いた動いた。馬鹿どもめ」
 彼の名は張威。
 未来の諸葛孔明と自称する、軍略・策謀を得意とする男だ。
 張威の軍と激突しているのは仙石・浅井の連合軍。どうやら裏で暗躍している張威の存在に気付き、捕らえに来たようだ。
「思っていたよりも来るのが早かったが、まあいい。この俺の覇道の礎にしてくれるわ」
 今、仙石・浅井連合軍の一部が戦場から離れた。
 張威の思惑通り。
 だがここで一気に畳み掛けるのはまだ得策ではない。戦はまだ始まったばかり。敵軍も力をたっぷりと持て余している。迂闊に攻勢に出れば手痛い反撃を喰らいかねない。
 次なる手は、こちらの主力にして、やがて英雄となる男たちを前に出し、敵軍の士気をくじきに掛かる。
「伝令、前線部隊に伝えろ。作戦通りに、攻撃開始だ、とな」
 命じられ、控えていた兵の一人が身軽に居城から出た。
「すでに詰みまでの手順は読み切った。あいつらに選べるのは……敗北の方法だけだ」
 どこかで読んだ大活劇の決め台詞を、さも自分の台詞のように言ってみる。
 ただそれだけで気分は高揚し、あたかも英雄になったような気分になる。
「ただ、あいつらは腕っぷしこそ最強だが、頭が足らんからな……常に戦況に気を配り、俺の英知を常に回転させ続けなければならんのが欠点だ」
 もっとも、だからこそ彼らを選んだのだが、と張威は思う。
 ああいう馬鹿のほうが、色々と御しやすい。頭が回る下僕も欲しい所だが、それはのちのち勧誘するとしよう。

 正直な話、張威は仙石家も浅井家も大して脅威と思っていない。
 この千国には、上げればきりがないほど、知勇を兼ね備えた英傑たちがいる。それに比べれば仙石家も浅井家も、単なる使いっぱしり、或いは負け犬の連中に過ぎない。
 もしかするとその中には、やがて英雄として名を残すであろう大器の持ち主がいるかもしれないが、そのような未来の英雄が数人いた所で、優れた策略の前には単なる操り人形にすぎない。

 そう。戦とは将棋。つまり人間の力ではなく、それを十二分に発揮させる知略の力が支配する。
 いかに飛車や角行のように強い力を持っていても、ほんの少しの工夫で簡単に取ることができる。
 たとえ歩兵や桂馬のようにそれほど優秀ではない者であっても、使い方次第で鉄壁にも鋭利な剣にもなる。
 奴らは金ヶ崎で見事な戦をしたらしいが、張威に言わせれば情けない戦だ。圧倒的な兵力差なのに英雄を一人も討ち取ることができずに撤退するなど、後世の笑い話ではないか。

 ならば見せてやろう。本当の戦というものを。世界を支配しうる頭脳というものを。

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