三千界のアバター

嘘と悪の救済

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嘘と悪の救済
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プロローグ ハーメルン

「おっかし~♪ おっかし~♪ おっかし~♪ おっかし~♪」
 御永音 燈は、陽気に口ずさみながら、低空飛行で街中を駆け回る。
 時折、【チョコレート制作キット】によって作られたチョコをばらまきながら。
 燈に【誘惑】された子供達は、楽しそうに燈の後を付けてきている。
 子供達だけではない、大人達にも【空猫ビール】を渡すと、たちまち大人達もついてくる。
 気がつけばハーメルンの笛吹きにように、行列が出来ていた。
 
 ハーメルンの行列は、他人様の大きな屋敷であろうとも
 数の暴力で自然と屋敷内へ突入し、屋敷内の人々をも仲間にしていく。
 だが、この行列に参加しているのは街人達だけではなかった。
「「おっかし~♪ おっかし~♪」」
 楽しそうにアードレア・クルセイドやワッフルも行列に参加していた。
 ふと、ワッフルは後ろから袖を引っ張られるのを感じると、驚いた表情で背後を見た。

 そこには、フィルムカメラを持った六合 春虎の姿があった。
「なあ、これって、本当に人助けの為なのか?」
 行列に付き合ってはいるものの、予想以上に派手に振る舞うワッフル達に、春虎は不安と呆れ混じりの表情を浮かべていた。
 ワッフルは「あったりまえじゃない!」と大きく頷く。

「大事になればなるほど、あのバカは元気になるんだから!」
「本当かよ……」
 春虎は怪訝そうにワッフルからアードレアへと視線を移す。
 相変わらずアードレアは、怪しい舞を踊っている。
 
 【魅惑の舞】を舞うアードレアだったが、ふとある男の子に目を付ける。
「……ぼうや、こっちにおいで♪」
 アードレアは離れた若い男の子に声を掛けると、自ら手を繋ぎにいく。
 若い男の子はあまりにも突然の事に顔を赤くする。アードレアは遠慮無くその手を、自身の体へと密着させた。
 若い男の子はアードレアの【誘惑】により、次第に言われるがままに手を伸ばしていく。
「遠慮しなくていいのよ? 私も素敵な想い出が欲しいのです♪」
 その時だった、突然、どこからか湧き出た水がアードレアの手足を縛った。

「なーにをやっておるのじゃ!」
 アードレアの前方に、【アクアフルクシオ】を放ったサキス・クレアシオンが立って居た。
 アードレアは眉を顰め、すこし不服そうにサキスを見る。
「これは、ユミさんのために仕方なく!」
「その割には、楽しんでおったようじゃが?」
「そ、そんな、この機会にあんなことこんなことを考えてなんて──」
「ええいっ、よく聞け!」
 必死に弁解しようとするも、落とし穴を掘りそうなアードレアの言葉を遮って、サキスは声をあげた。
「お前達の所行もそこまでじゃ! 大人しく縄に入るのじゃ!!」
 同時に、ワッフル達の目の前に、私服姿の町人達がずらりとならぶ。
 街が編成した自警団の大群だった。

「げっ!」
 囲まれて絶体絶命にワッフルは、苦そうな表情を浮かべた。
「やるじゃない……でも」
 にやり顔をサキスへと向けると、再び前に歩き始めた。
 燈達もそれに続く。大人数の誘惑された人々を連れて。
 辺りには、燈がばらまく【コズミックッキー】が散乱していく。
 ゆっくりと、徐々に増えていく大量のクッキー、行進する街人達の波にあっという間に自警団やサキスは為す術もなく、巻き込まれていく。
「あわてるでない、一旦この場を離れ――」
 サキスは体制を整えようと【空中戦闘】で空へ飛び上がろうとしたときだった。
 背後にそれは居た。

「秘技っ! スカートめくりっ!」
「!」
 サキスの給仕服とローブの合わせたスカート、フリルがめくられる。
「あ~……そのパンチラ戴き~っと」
 サキスは完全に不意を突かれた。
 【アニマルローブ】でパンダの格好をした春虎が、【フィルムカメラ】を構え、シャッターチャンスを捕らえる。
 スカートの裏をレンズが捕らえた瞬間、シャッターを押した途端、
 【危機回避】で何かを感じた春虎は、慌ててよけの構えをとった。
 すんでのところ、春虎の横を水が線となり、通り過ぎる。
「危ねっ!?」
「む、避けられてしまったか」
 サキスがうつむき加減につぶやく。
 何か先ほどまでと様子が違うサキスに春虎はいち早く気付いた。

「そのカメラ……渡してもらうのじゃ」
 いつもと変わらない表情を浮かべるサキスの声から、すこしの苛立ちをその場の誰もが感じられた。
「そ、そうはいかないぜ!」
「そうです! 折角いい所だったのに邪魔してくれた事、後悔させます!」
 いつの間にか、アクアフルクシオに解放されたのか、アードレアも春虎の隣に並ぶ。

「これも全てユミさんを救うため、仕方ないのですから、邪魔はさせません!!」
「さあ、ハーメルン再開よ!」
 燈もアードレアに同意し、再び詩を唄い始める。
「さあ、前進!!」

 サキスを退け、スカートめくりを始めるワッフルの横から、すかさずシャッターチャンスを捕らえる春虎はふとつぶやくのだった。
「早く着てくれ、ユミ……評判が地に落ちる前に俺を助けて……」
 
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