三千界のアバター

冒険家の受難

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冒険家の受難
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 1 ダイオウイカは食糧である。

「んじゃ、ぱっぱと倒しちゃおうか! ね、詩織」
「はい。ポルタの方々が困っているのを放ってはおけませんから。それにしても……」
 九鬼 有栖と一緒にダイオウイカの立てる水飛沫を受けながら、港に立った川端 詩織は今にも上陸してきそうなその巨体を仰ぎ見た。陽光を受ける半透明の白い体は生のエネルギーに満ちていて、何とも――
「このイカ、大きくて……ツヤツヤしてて……とても……」
 彼女の内心を引き継ぐように、隣に並んだエンジュ・レーヴェンハイムが明言する。
「おいしそうです!」
 ――そう。それは何ともおいしそうだった。真に新鮮と呼べるイカが、目の前で手ぐすね引いて食べられるのを待っている。
「やっぱり、そうですよね」
 我が意を得たりと詩織は微笑み、改めてダイオウイカに目を向ける。エンジュ達の話を聞き、後方で冒険家ジュリーは眉を寄せた。同感できないというより、発想自体に驚いているような感じだ。
「おいしそう……?」
「おー! こりゃ見事なイカだ!」
 その彼の横で、エンジュのパートナーの緋夜 朱零は歓声を上げる。それから「おい、ジュリー」と興奮した様子でイカを指した。
「こんな大物仕留めりゃ、きっと冒険家の日記のネタにでもなるんじゃねぇ!?」
「確かに、前に見たクラーケンよりもずっと大きいし……ん?」
 空に向いて尖るイカの頭部らしき場所を見上げながら、ジュリーは自分の言葉に小さな違和感を持って首を傾げた。
(僕は何であれが『ダイオウイカ』だって思ったんだろう?)
 ダイオウイカ、と呼ばれる魔獣はアルテラに存在しない。いるのは、以前にリザードマン達と共にポルタを襲った『クラーケン』と呼ばれるイカ――否、クラーケンだ。だが、確かに彼はどこかでダイオウイカという言葉を聞き、それを当然のように眼前の生物と結び付けていたのだ。
(そういえば、あの戦いの時もリザードマンをトカゲとか呼んでた子がいたし……どこかでダイオウイカの話でも聞いたのかな? 依頼してきた中の誰かが言ってたとか……)
 とはいえ、呼び方が違うだけでそう大差無い種類のものではあるのだろう。そう結論づけ、ジュリーは朱零との会話に戻る。
「ただ……」
 
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