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【光と闇の合流点 第0話】双子

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【光と闇の合流点 第0話】双子
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夢の話1


「選ばれなかった名前聞かせろだぁ?」
 ライオネル・バンダービルトさんはしかめっ面で答えました。
「生憎だが、本名も知らんヤツに選ばれなかった名前もヘッタクレもないだろうよ。
 この名前も適当に付けた偽名だから理由も特にねぇ、他所を当たんな」
「えーっ!? その名前、偽名だったの!? すごーい、もっと他の人に聞いてみよっと!」
「悪かった、だが事実だからどうしようもねぇんだよ――って、オイ」
 逆に好奇心を疼かせてしまったようです。
 どうにも調子が狂います。ライオネルさんは「しょうがねぇから付き合ってやるか」という感じで、イヴェットの珍道中に付き合うのでした。


ケース1:
 イヴェットの突撃インタビューを受けたキョウ・イアハートさんは、自身の境遇を語りました。
「夕季、お前さんは選ばれなかった『名』がある、といったな。
 俺はその逆でな。夕季が俺と同じ時代の特異者か知らんが、俺は戦争孤児でな。
 戦争のおかげで親ってもんと縁がない。だから最初の『姓』を知らんのさ。
 その後、孤児院で育てられた。うちの故郷じゃ姓には親の名を取るって決まりがあってな。有り得た姓がシスターの名から取った『アイシャ』だった。ただ、その姓を名乗る前にイアハート家に引き取られたって話さ。こっちはそのまま姓を取ったんだ。俺は……アイシャでも良かったんだがな」


ケース2:
「え、お名前? マリアベル・エーテルワイズだけれど……ん、そうではないのか。
 あー……僕には、そういった事を尋ねられる相手が居なかったから。地球の戸籍上の名前と今名乗っているものとが違う、と言うのは今回聞きたい事とはまた別だろうし。
 折角話しかけて来てくれたのに、力になれなくてごめんね。でも連れになら、そういったエピソードは有るかもしれない。よかったら彼女達にも聞いてあげてほしいな」
 そう言って、マリアベル・エーテルワイズさんはセーラメーヴェ・フラッグリリーさんとパロマ・グレイバールローズさんを紹介しました。
「選ばれなかった名前です? ありますよー!
 自分はですねー、コルリスの軍人だったんです! 見えないかもですけど!
 気づいたら王国軍第四兵団にいました。って言うのも両親も軍属だったみたいで、ウェンディール方面に行ったまま……最終的にはこのブロードソードだけがシニストに返ってきたんですって!
 だから、おんなじ兵団の人が育ててくれました。ウェンディールの事を忘れないようにウェンディって名前をつけようと思ってたそうなんです。
 でも遺品の整理をしてたら名前の候補が出てきたので、そこから今の名前選んだって言ってましたー!」
「あたしゃ見てのとーりゴダムの産まれでさ。しかも農園。手伝いなんかしやしなかったがね!
 で、勿論跡取り息子ってのが望まれる訳だ。だがまー男が産まれない、産まれてもすぐ死んじまったらしい。
 今度こそ男だと勢い込んでフレデリコって付けようと話してたとこに空気読まず産まれたのがあたしって訳さ。
 なんでまあ、平和とか支配とか意味するらしい? フレデリコって名前から平和だけ残して今の名前にしたんだと」


ケース3:
「子どもの頃に、そんな夢を見たことがあるわ」
 ドロテア・リドホルムさんは、昔見た夢を語りました。
「私は元々、『アレックス』という名前を貰う予定だったらしいのよ。遠い世界の、同名の女性からとられたものよ。強くて心の暖かい、素敵な方だとか。
 けど、実際に付けられたのは今の名前。他の誰かじゃない、誰でもない。私だけを指すものに決まったわ。
 今の名前も気に入っているのよ。『ドリー』、『ドロシー』、それに『テア』……大好きな人たちが、色々な愛称をつけてくれるの。とても嬉しいことよ」


ケース4:
 古城 偲さん御一行は、夢の中で地球のことを思い出しました。
「母と祖母で、『光』にするか『偲』にするかで喧嘩したらしい」
 桜餅を食べ、水筒の緑茶を飲みながら偲さんは言います。
「今となっては偲で良かったんじゃないかな。人の死に方に興味を持つ奴になっちゃったから。
 光だったら、もっと前向きにキラキラしてたかもね」
 と笑いました。
 イクリマ・オーさんは瓶ビールを飲みながらチーズをもぐもぐしていました。
「コジョーがキラキラしたらコンビ解散なー。くはは。
 俺の実家は、男が生まれたら全員イクリマと名付ける掟だから例外はなーい。女に生まれてたら、かわいー名前貰ってたと思うさー」
 イクリマはアルテラの実家を思い出しました。女に生まれていたら、親の期待に苦しまずに済んだか。姉に優しくされたか。
「俺だってさー生まれたくて長男になった訳じゃー……」
 絡み酒です。偲は管を巻くイクリマに適当に相槌を打ってあげました。
 ナイナ・シャシュカさんはテイクアウトのカフェオレを飲んでいました。
「世界が違うと常識が違うのね」
 ナイナさんはイクリマの絡みがピンと来なくて首を傾げました。
「名前ねぇ。極光帝国だとぉ、個体番号がメジャーなのよねぇ。私本当はSOL59-726なんだけどぉ。前のマスターが可愛い物好きでぇ、カワイイ名前を貰ったのよぉ。今の名前が自分に似合っていれば、それが一番よぉ。合って無ければ変えればいいわぁ。イクリマちゃんが女の子になったら私が名前つけてあげるぅ!」
 ナイナさんは、機嫌よく桜餅とチーズを貰ってもぐもぐしています。
 偲さんは、ナイナさんの名前を誉めました。
「うん、ナイナはその名前、似合ってるよ!」
 後日、目を覚ました3人は、いま見ていた光景が夢だと知ったそうです。

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